行列の対角化可能性と同値な条件とは:証明、判定法

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、行列の対角化可能性の同値条件、判定法を紹介し、証明していきたいと思います。

 

対角化可能性の同値条件

\(A\)を\(N\)次の正方行列としましょう。

\(A\)が対角化可能であるとは、ある可逆行列\(P\)、対角行列\(D\)によって\(P^{-1}AP =D\)と表せることでした。これは\(A\)が対角行列に相似であるとも言い換えられます。

\(A\)の互いに異なる固有値を\(\lambda_1,\dots,\lambda_k\)、対応する固有空間を\(E(\lambda_1),\dots,E(\lambda_k)\)と表します。

今回示したいのは、次のことです。

次の命題は同値である。

  1. \(A\)は対角化可能である
  2. \(A\)は\(N\)個の線形独立な固有ベクトルを持つ
  3. \(N = \dim(E_1)+\cdots+\dim (E_N)\)
  4. 直和\(\mathbb{C}^N = E(\lambda_1)\dot{+} \cdots \dot{+} E(\lambda_k)\)が成り立つ
  5. \(A\)のすべての固有値の代数的重複度と幾何学的重複度(固有空間の次元)が一致する

(行列でなく、線形変換についても同様の主張が成り立つ)

 

早速確かめてみましょう。

1から2。\(P^{-1}AP=D\)となったとしましょう。\(D\)の対角成分を\(d_1,\dots,d_N\)、標準基底(第\(i\)成分のみ1、他が0のベクトル)を\(e_1,\dots,e_N\)、\(P\)の列ベクトルを\(p_1,\dots,p_N\)とします。\(AP=PD\)によって\(e_i\)を写すと、\(PDe_i = P d_i e_i = d_i Pe_i\)なので、\(APe_i = d_i Pe_i\)となり、\(Pe_1,\dots,Pe_N\)は\(A\)の固有ベクトルです。\(e_1,\dots,e_N\)は線形独立で、\(P\)は可逆なので、積によって線形独立なベクトルの本数は変わらず\(Pe_1,\dots,Pe_N\)も線形独立。よって、\(N\)個の線形独立な固有ベクトルを持つと言えました。

2から1。線形独立な固有ベクトルを\(p_1,\dots,p_N\)、それを列ベクトルとして並べた行列を\(P=(p_1,\dots,p_N)\)としましょう。対応する固有値を\(d_1,\dots,d_N\)と置き、\(D\)を\(d_1,\dots,d_N\)を順に対角成分に持つ対角行列とします。このとき、\(Ap_i = d_i p_i\)より\(AP = (d_1p_1,\dots,d_N p_N)\)です。一方、\(D\)は対角行列なので、\(PD = (d_1p_1,\dots,d_Np_N)\)です。よって、\(AP= PD\)。\(P\)はすべての列ベクトルが線形独立なので可逆行列であり、\(P^{-1}\)をかければ\(P^{-1}AP = D\)が得られました。

2から3。\(N\)個の固有ベクトル\(p_1,\dots,p_N\)は、それぞれがいずれかの固有空間\(E(\lambda_i)\)に属します。固有ベクトルが線形独立なので、それが属している個数分の次元が\(E(\lambda_i)\)の次元です。その合計が\(N\)なので、\(N= \dim(E_1)+\cdots+\dim (E_N)\)が言えました。

3から2。各固有空間には、\(\dim (E_i) \)個の固有ベクトルからなる基底が存在します。それらの基底をすべて合わせると、仮定より合計で\(N\)個であり、かつすべて\(A\)の固有ベクトルです。2が言えました。

2から4。仮定の固有ベクトルは、\(\mathbb{C}^N\)の基底です。よって、\(\mathbb{C}^N\)のベクトルをそれらの線形結合でただ一通りに表せるので、直和の定義から\(\mathbb{C}^N = E(\lambda_1)\dot{+} \cdots \dot{+} E(\lambda_k)\)です。

4から2。直和の定義より、\(\mathbb{C}^N\)の任意のベクトルは、\(E(\lambda_1),\dots,E(\lambda_k)\)の要素の線形結合でただ一通りに表せます。つまり、\(E(\lambda_1),\dots,E(\lambda_k)\)それぞれの基底をあわせたものが\(\mathbb{C}^N\)の基底であり、それらは\(N\)個です。それぞれは固有空間の基底なので、\(A\)の固有ベクトルです。

3から5。対偶によって示します。ある固有値\(\lambda_i\)の代数的重複度と幾何学的重複度が一致しないとしましょう。すべての固有値の代数的重複度を足し合わせると、\(N\)に一致します(重複込みで固有値は\(N\)個)。仮定より、幾何学的重複度の和は\(N\)に一致しません。よって、3の否定が言えました。

5から3。すべての固有値の代数的重複度の和は、\(N\)です。仮定より、幾何学的重複度の和も\(N\)に等しいです。したがって、\(N = \dim(E_1)+\cdots+\dim (E_N)\)が言えました。

 

対角化可能性の判定手順

与えられた行列が対角化可能かどうか、判定するには次のような手順を踏むことになるでしょう。

  1. 対称行列、正規行列は、対角化可能です。それは一般論として知られています。
  2. 行列\(A\)が一般の行列の場合、今回の条件を使って判定することになります。
  3. 特殊なケースとして、行列の固有値がすべて異なるならば、対角化可能です
  4. 一致する固有値がある場合、その固有値の代数的重複度(特性方程式の解として何重解か)と幾何学的重複度(固有空間の次元)を調べることになります。
    1. すべての固有値についてそれらが一致する場合、対角化可能です。
    2. それらが一致しない固有値がある場合、対角化不可能です。(このケースでは、ジョルダン標準形と呼ばれる上三角行列への変形を考えることとなるでしょう)

対角化そのものの手順は、見つけられた線形独立な固有ベクトルを並べて\(P\)とすれば良いだけです。固有空間、重複度をを求めるには、「固有空間の求め方、代数的・幾何学的重複度とは」を参考にしてみてください。

 

以上、行列の対角化可能性とその同値な条件の証明、判定法を紹介してきました。

鍵となるのは、線形独立な固有ベクトルを十分に見つけられるかどうかです。それによって、対角化可能かどうかが変わってきます。

固有空間や重複度による言い換えは、慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、具体的に計算しているうちに理解できるはずです。もし一般的な判定条件の意味がよくわからなければ、実際に具体的な行列の対角化を試みて、固有ベクトル・固有空間がどうなっているか調べてみてはいかがでしょうか。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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