どうも、木村(@kimu3_slime)です。
僕が「趣味の大学数学」でおすすめする、大学数学の教科書・参考書・入門書を紹介していきます! 大学時代にお世話になった本紹介ともいう。
解析学多め。随時更新中。
読む順序について:大学数学のロードマップ ~ 分野一覧と学ぶ順序
目次
読み物
教科書をいきなり読む前に、一般向けの本で興味のありそうなことを探してみましょう。
志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫 (シュプリンガー数学クラブ)
丸善出版
売り上げランキング: 395,356
数学の学び方、本の読み方を教えてくれた本。数学の知識なしに読めるますし、数学専門以外のあらゆる人に手にとってほしい一冊。
参考:数学を志す人のための本「志学数学」に教えてもらった、本をじっくり考えながら読む楽しさ – 文脈をつなぐ
エヌティティ出版 (2013-12-05)
売り上げランキング: 191,277
コンピュータの父であり数学者:アラン・チューリングについて学べる本。このサイトもコンピュータがなければないもので、世界を変えた人物のひとりと言えます。数学を専門としない一般の人に、まず知っていただきたい数学者のひとりです。
参考:生き物の模様は数式で決まる? チューリング・パターンとは、「数の計算からあらゆるものの計算へ」コンピュータの基礎・チューリングマシンとはなにか? – 文脈をつなぐ
数学のスーパースターたち―ウラムの自伝的回想 (1979年)
東京図書
売り上げランキング: 1,442,216
原子爆弾を生み出したマンハッタン計画。その内情を伝える回想録です。戦時下でありながら、研究所は科学者にとって魅力的な環境。チューリングと並ぶコンピュータの父:フォン・ノイマンも登場します。
科学者にとっていかに好奇心がモチベーションとなるか、また科学研究の結果をどう社会は負うべきなのか考えさせられる本です。
参考:戦争に飲み込まれた科学者の好奇心 マンハッタン計画と原子爆弾 – 文脈をつなぐ
多変数複素関数論に大きな業績を残した日本の数学者:岡潔(おかきよし)の思想を紹介した本。数学について「理知的に」わかるだけでなく、「情的に」わかる感覚など、数学をしながら体験する感覚を掘り下げていきます。
参考:「数学する人生」数学者・岡潔が詠った日本の情緒 – 文脈をつなぐ
日本図書センター
売り上げランキング: 245,617
数学における発見はいかになされるか〈第1〉帰納と類比 (1959年)
丸善
売り上げランキング: 523,462
「いかにして問題をとくか」は、NHK「クローズアップ現代」にてビジネスに応用できる数学本として取り上げられた、書店でもよく並んでいる本です。よくある参考書のように問題の解き方を紹介するのではなく、解き方を思いつく方法が紹介されています。
僕が好きなのは、同じくポリアの「数学における発見はいかになされるか」です。数学や科学における仮説の作り方、推論の方法を考えたもの。論理学よりもより一般に、科学全般に使える考え方を提供してくれます。
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 104,934
数の誕生から微積分まで、中学生レベルでもわかるように書かれた本。志賀先生の本はとにかくわかりやすく一般向けに数学の世界を紹介してくれるので、本書に限らずおすすめ。
アルゴリズムの由来となったアラビアの数学者アル=フワリズミから、現代的な代数学まで、代数学まわりの数学がどう発展してきたかがまとまっている歴史書です。
大学数学の雑誌として定評のある数学セミナー編集部による、大学数学のガイド本。数学にはどんな分野があるか、どのように講義やセミナーに向かって勉強すべきかなど、これから数学科に進む大学生向けの内容。つまり、これから趣味で大学数学を始めたい人にとってピッタリだと思う。
ウェブで読めるもの
ノートを使った数学書の読み方、セミナーの準備の仕方についての文章。数学書を理解するためには、時間はかかりますが書きながら考えることが必要で、そのための具体的な方法や注意すべきことがわかりやすく書かれています。
数学科の大学院生に向けた、やや厳し目の文章。かなり有名なので、数学科の人ならこの文章を知らない人はいないのではないでしょうか。「何も見ないで発表できるようにする」スタイルは僕も身につけましたが、これは数学以外のあらゆる分野で役立つスキルです。
タイトルでわかるように、フランクに数学の研究方法のひとつを紹介した文章。50近くトピックがあり、コラム集として読むのも面白い。
映画
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(字幕版)
売り上げランキング: 5,745
チューリングがドイツ軍の暗号をチームで解読していくドラマが描かれた映画。幼い頃の同性の友人・クリストファーに寄せる思いを、マシンによって再現しようとしたのではないか。人間の心とコンピュータの誕生がつながっていると感じられる話。
ゲーム理論・ナッシュ均衡や経済学で有名なジョン・ナッシュをテーマにした人物の半生を描く映画。若くして才能を評価された彼は、軍事組織で暗号解読の仕事をするが、やがて精神的にい追い詰められ……。夫婦の関係性を描いた物語。
小川洋子による日本の小説を映画化した作品。主人公の女性が家政婦として派遣された先は、80分しか記憶が持たない(元)数学者のおじいさんだった。人付き合いが苦手なおじいさんだったが、数学を通じて時代に打ち解けてゆき……。数学に魅せられていくのが体感できる温かい話。
基礎数学
論理学
読み、書き、考えることに、論理学は自然と生きてきます。野矢さんの論理学の本は、入門の読み物として読みやすくおすすめ。
丸善出版
売り上げランキング: 837,505
大学数学を初めて学ぶとき、例えば微分積分学や線形代数学を学ぶとき、どちらであっても自分で証明を理解する力が求められます。特に、全称命題や存在命題といった命題を記号使って記述する能力は最低限必要で、この本はそのトレーニングとしてピッタリです。
僕は高校生の時に大学数学の本を読もうとしてつまづきましたが、それはまさに、この本でいう「お作法」を知らなかったからと言えます。それは、数学の内容の面だけでなく、言葉としての難しさ。
例えば2章は「言葉の重要性」であり、(数学の本でありながら)新しい言葉の取得が大切だと述べられています。
もちろん具体例も豊富で、理工系の基礎数学の用語が多く解説されています。近似やアルゴリズム、証明の重要性など、数学の本では通常扱われない話題もカバーしていて、教養的です。
「数学ができる」人向けではなく、むしろもう一度学びたい人向けの本とされています。これから大学数学に踏み込む人向けに僕が講義をするとしたら、この本をベースにしたいです。(この本で理工系の数学に広く触れたあとに、集合論をおすすめするでしょう)
より論理学方面へ特化した類似の本として、「数学は言葉」も面白いです。
数学の教科書ではあまり見られないが重要なトピックである、真理値を使った命題計算など、数学で使う論理の基礎についてきちんと書かれた本です。厳密でありながら丁寧な説明であり、論理のトレーニングとしておすすめしたい1冊。
集合論・位相空間論
僕が大学数学を好きになったきっかけの1冊。定義や記号の意味が、始めてこの分野にふれる人にでもわかるよう、長文で詳しく解説されている。この本をきっかけに、数学の証明というものが理解できて、結果として線形代数や微積分学のような教養数学も理解できるようになった。大学数学の第一歩としておすすめ。
「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史
技術評論社
売り上げランキング: 66,565
集合・位相空間論の教科書ではないけれども、副読本としておすすめの一冊。数学的な証明もあるが、そこはわからなくても読み物として読める。なぜ集合論・位相空間論という分野が生まれ、大事にされているのか、歴史的な数学者たち(フーリエやリーマン)の研究を辿りながら理解できる。2018年の新しい本で、僕の学生時代にこの本があったら、絶対読んでいた。松坂「集合・位相入門」とセットで読みましょう。
売り上げランキング: 111,520
高校レベルから大学数学に入門するのにピッタリの本。教科書というよりは読み物に近い。集合論のきほんに力を入れつつ、代数、幾何、解析と大学数学の各分野の概観を紹介していく。数学科に進む高校生や大学1年生向け。
教養数学
微積分学
サイエンス社
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演習書だが、教科書としても使える。高校数学の参考書:チャート式に近いスタイル。まずは一般論に入る前に、この本で多変数の微積分の計算に慣れてみると良いだろう。
高校数学からスムーズに始められる微積分学の入門書。
次に紹介する杉浦「解析入門」などは、実数の定義から始めるいわゆるブルバキスタイルだが、ラング「解析入門」はそうではない。「数と関数」「グラフと曲線」といった数学の基礎から始めつつ、微分、三角関数…とスムーズに進んでいく。
非数学科生でも読みやすく、理工系数学の教養としてはこの本のレベルがちょうど良いと思う。
ベクトル解析や重積分はラング「続 解析入門」にて扱われている。
解析学を専門としたい人は抑えたい本。はじめて見たときは抽象的でとっつきがたいと思ったが、基礎を固めるためには疑問点が少なくとても役立った。
内容が非常に多くそのすべてを読みこなすのは大変だが、解析学に関してわからないことがあればこの本で辞書的に調べられるし、厳密で不透明なところがないのが良い。
陰関数とベクトル解析など、少し進んだ解析学のトピックを扱っている。多変数の解析学の厳密な証明を学びたい人向け。複素解析の部分も入門書としてまとまっている。
大学院入試の問題を解説しつつ、解析学の話が学べる本。著者のクセのある語りが面白い。解析学のおさらい・再理解に。
線形代数学
世界標準MIT教科書 ストラング:線形代数イントロダクション
売り上げランキング: 69,655
線形代数というと、どうも無味乾燥に行列式の計算をさせられる……そんな嫌なイメージが個人的にはあります。何の役に立つのだろうと。
この本は、ベクトルの話題から始まり、幾何的イメージを交えながら線形代数の理論が解説されてゆきます。応用について書かれた少ない線形代数の本は少ない印象がありますが、本書は物理学やコンピュータでの応用が詳しいです。
記号の操作ではなく、線形代数学的な考え方を身に着けたい理工系学生には、ぜひ最初に勧めたい一冊。ただし、600ページ近くあって重いので、紙かKindle版かは要検討。
高校卒業から読める線形代数の入門本。数学の教員採用試験に出る問題を紹介しつつ、その裏にある理論を紹介している。具体的な問題から入っていくので、線形代数の世界に入りやすいだろう。
行列、線形空間、固有値、対角化と線形代数の基本的なトピックについておさえた本。集合論の知識もおぎなってくれていて、かつ例も多いので、抽象的な話も理解しやすいと思う。
東京大学出版会
売り上げランキング: 269,349
はじまりが行列ではなく線形空間の一般論という、アドバンスドな線形代数学の本。双対空間やテンソル積など、普通の線形代数の教科書では扱わないが線形代数のトピックとして重要なものが学べる。
統計学
東京図書
売り上げランキング: 168,136
統計学を初めて学ぶ人、特に数学が得意ではない人向け。簡単な計算を通して統計的概念を学べるので、確実に理解が進みます。
統計学の入門としては、例えば東京大学出版会の『統計学入門』が有名です。そこで行われるような抽象的な定義に馴染む前のステップとして、この本から入るのは良いでしょう。
解析学
微分方程式論
常微分方程式論
朝倉書店
売り上げランキング: 397,356
物理に登場するような微分方程式の具体的な具体例から、線形微分方程式の解き方を扱ったスタンダードな微分方程式の教科書。解ける常微分方程式の話はこれでカバーできる。後半は力学系理論の話もあり、力学系理論入門としてもおすすめ。
偏微分方程式論
弦の振動や熱伝達といった自然現象から、偏微分方程式を導出していく。具体的な方程式の扱い方が学べる、好きな教科書のひとつ。「趣味の大学数学」も、この本のスタイルのようにやっていきたい。
Partial Differential Equations (Graduate Studies in Mathematics)
Amer Mathematical Society
売り上げランキング: 171,054
偏微分方程式の教科書といえば、エバンス(Evans)。というくらい定番の本。楕円形、放物型、双曲型と呼ばれる偏微分方程式の分類3種すべてのことがわかる。弱解、変分法など、関数解析を使った偏微分方程式論でもある。
共立出版
売り上げランキング: 125,464
非線形の偏微分方程式について、解の挙動を分析する方法が学びやすい本。熱方程式、ナビエ・ストークス方程式から導かれる渦度方程式を舞台に、特殊解・自己相似解の理論で解の動きを解き明かしていく。
「チューリング・パターン」など自然界のさまざまな場所で見られる現象を舞台にした数学、反応拡散方程式の教科書。一変数、多変数ともに、一般論と具体例が紹介されていて、多様な反応拡散方程式の世界がわかるだろう。
参考:生き物の模様は数式で決まる? チューリング・パターンとは
力学系理論
シュプリンガー・フェアラーク東京
売り上げランキング: 1,154,556
力学系理論の入門書としておすすめの一冊。僕は学部4年のときにゼミで英語版のこれを読みました。僕は主に常微分方程式の力学系に関する部分を読みましたが、離散力学系・記号力学系の話題も豊富です。
Hirsch・Smale・Devaney 力学系入門 ―微分方程式からカオスまで―
共立出版
売り上げランキング: 171,188
力学系理論の大家:ハーシュとスメールが、微分方程式、力学系、線形代数学の基礎的なところから力学系理論の話をしてくれる本。「非線形の力学系とカオス」より基礎的。線形力学系の話が詳しい。
Cambridge University Press
売り上げランキング: 176,702
偏微分方程式の力学系を考えると、関数空間を相空間とすると無限次元の力学系となる。そんな無限次元の力学系の入門書。ソボレフ空間などの関数解析的ツールを準備した上で、グローバルアトラクターの存在条件を考えます。
ルベーグ積分論
僕が数学を研究してみたいと思ったきっかけの1冊。見通しがよくルベーグ積分が組み立てられていくので、測度の話から優収束定理までストレートに理解できる。証明が詳しいので、数学が苦手な僕のような人でも理解しやすい。
古典的な名著。リーマン積分とルベーグ積分の関係、カントール集合など、基礎的なトピックに詳しい。
関数解析学
分厚いけれどもよくまとまった関数解析の教科書。線形代数学で扱う有限次元のケースと対比させて説明していくので、線形代数を理解した人なら自然と理解していける。線形作用素と関数空間の入門的トピックはすべて入っている。
さらに進んだトピックを学びたいなら、Brezis「Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations」が定番。
複素解析
一変数の複素関数、コーシーの積分定理あたりまで、厳密だがコンパクトにまとまっている。扱っている例がシンプルでわかりやすい。
日本評論社
売り上げランキング: 214,847
神保「複素関数入門」よりは発展的な内容の教科書。解析接続や等角写像といったトピックを学びたいならこちらの方が良い。
確率論
高校数学を導入に、近代確率論に入門していく本。ルベーグ積分の知識が少しはあったほうが良い。式変形が丁寧で、中心極限定理まで至る。後半は確率過程論であり、数理ファイナンス入門としても読める。
幾何学
多様体論
多様体の定義、接ベクトル空間、埋め込み、微分形式など、多様体に関する基礎的トピックが集まった本。杉浦「解析入門」が読めれば読める。
位相幾何学・トポロジー
微分幾何学
裳華房
売り上げランキング: 252,226
曲線、曲面の幾何学の入門書として最適。2次元、3次元のケースを図を交えつつ分析していくので、イメージしやすく面白い。
代数学
群、環、体、加群など、代数の基礎トピックが幅広く集まっている。自然数、実数の構成についてもこれでおさえられる。
はじめての数論 原著第3版 発見と証明の大航海‐ピタゴラスの定理から楕円曲線まで
丸善出版
売り上げランキング: 115,442
教科書というよりは一般向けの本。フェルマーの定理から楕円曲線まで、数学の内容だけでなくその応用(暗号理論など)まで、大学数学の知識がなくても読めるようになっています。
いろいろな本をパラパラと見比べた上で、気に入っった本をじっくり読み込むのが大学数学を理解して楽しむコツではないかと思います。ここで紹介した本が本選びの参考になれば幸いです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。