どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、一般フーリエ級数とは何か、フーリエ・ルジャンドル級数、フーリエ・ベッセル級数を例に紹介します。
一般フーリエ級数とは
そもそもフーリエ級数とは、\(f\)という一般的な関数を、三角関数系\(\{1,\cos nx, \sin nx\}\)によって
\[ \begin{aligned}f(x)= a_0 +\sum_{k=0}^\infty (a_n \cos nx +b_n\sin nx)\end{aligned} \]
と展開することでした。
このような展開ができるのは、三角関数が互いに(積分の内積について)直交しているからです。
そこで、三角関数に限らず直交する(完全な)関数系\((y_k)\)による展開を考えてみましょう。
\[ \begin{aligned}f(x)= \sum_{k=0} ^\infty a_k y_k\end{aligned} \]
これを一般フーリエ級数(generalized Fourier series)、直交級数展開(orthogonal expansion)と呼びます。ストゥルム・リウビル型微分方程式における直交した固有関数を用いるときは、固有関数展開(eigenfunction expansion)とも呼びます。
係数\(a_k\)はどのように定めたら良いでしょうか。関数系\((y_k)\)は、区間\([a,b]\)において重み\(r(x)\)つき内積について直交しているとします。\(f\)と\(y_n\)の重み付き内積を取ると、
\[ \begin{aligned} &\langle f,y_n\rangle \\&=\langle \sum_{k=0} ^\infty a_k y_k ,y_n \rangle \\ &= \sum_{k=0} ^\infty a_k \langle y_k ,y_n \rangle \\ &= a_n \langle y_n ,y_n \rangle \\ &= a_n\|y_n\| ^2 \end{aligned} \]
となるので、
\[ \begin{aligned}a_n = \frac{\langle f,y_n\rangle}{\|y_n\|^2}\end{aligned} \]
と定めれば良いわけです。
フーリエ・ルジャンドル級数
ルジャンドル多項式やベッセル関数といった関数系は、ストゥルム・リュウビル型微分方程式の理論により、直交していることが知られています。
ルジャンドル多項式\(P_k\)による級数展開
\[ \begin{aligned}f(x)=\sum_{k=0}^\infty a_k P_k (x)\end{aligned} \]
を、フーリエ・ルジャンドル級数(Fourier-Legendre series)と呼びます。
考えている区間は\([-1,1]\)で、重みは\(r(x)=1\)です。ノルムの大きさは
\[ \begin{aligned}\|P_k\|= \sqrt{\frac{2}{2k+1}} \end{aligned} \]
であると知られているので、係数は
\[ \begin{aligned}a_k = \frac{2k+1}{2} \int_{-1}^1 f(x)P_k(x)dx\end{aligned} \]
となります。
例として、\(f(x)= \sin \pi x\)を1次の項まで計算してみましょう。\(P_1(x)=1\)、\(P_2 (x)=x\)であり、
\[ \begin{aligned}a_0 = \frac{1}{2}\int_{-1}^1 \sin \pi x dx\\ =0\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}a_1 = \frac{3}{2}\int_{-1}^1 (\sin \pi x)x dx\\ =\frac{3}{2}([-\frac{1}{\pi} (\cos \pi x)x]_{-1}^1+\frac{1}{\pi} \int_{-1}^1 \cos \pi dx) \\ = \frac{3}{\pi}\end{aligned} \]
なので、
\[ \begin{aligned}a_0P_0(x)+ a_1P_1(x) =\frac{3}{\pi}x\end{aligned} \]
となりました。
ちょっとこれだとラフな近似ですね。3次まで計算すると、
\[ \begin{aligned}\frac{3}{\pi}x+\frac{7(\pi^2-15)}{2\pi ^3}(5x^3-3x)\end{aligned} \]
とそこそこ近づくようになりました。
フーリエ・ベッセル級数
第一種ベッセル関数\(J_n\)を使った展開
\[ \begin{aligned}f(x)=\sum_{k=1}^\infty a_k J_n(b_{n,k} x)\end{aligned} \]
は、フーリエ・ベッセル級数(Fourier-Bessel series)と呼ばれます。
ベッセル関数\((J_n(b_{n,k}x))_{k=1}^\infty\)は、区間\([0,R]\)において、重み\(r(x)=x\)について直交しています。\(b_{n,k}\)は、ベッセルの方程式をストゥルム・リウビル型微分方程式に変換するときに出てくる、固有値に依存して決まる係数です。
計算は省略しますが、
\[ \begin{aligned}a_k = \frac{2}{R^2 J_{n+1}^2 (b_{n,k}R)} \int_0^R f(x) J_n(k_{n,k} x)x dx\end{aligned} \]
となります。特に\(R=1, n=0\)ならば
\[ \begin{aligned}a_k =\frac{2}{J_{1}^2 (b_{0,k})} \int_0^0 f(x) J_0(k_{0,k} x)x dx\end{aligned} \]
です。
\(f(x)= 1-x^2\)のときは、3次までのフーリエ・ベッセル級数は数値的に
\[ \begin{aligned}1.1J_0(2.4 x)-0.14J_0(5.5 x)+0.045 J_0(8.7x)\end{aligned} \]
と表されることが知られています。
参照:Advanced Engineering Mathematics
\(f\)と\(J_0\)の形が似ていることもあってか、1次までの近似でもそこそこ近いように見えます。
以上、一般フーリエ級数とは何か、フーリエ・ルジャンドル級数、フーリエ・ベッセル級数を例に紹介してきました。
応用として、フーリエ・ルジャンドル級数は球座標におけるラプラス方程式、フーリエ・ベッセル級数は平面極座標における波動方程式を解く中で登場します。
具体的な計算は少しハードですが、三角級数に限らず、直交する関数系で関数を展開・近似するというアイデアはとても便利ですね。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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