ルジャンドルの微分方程式、多項式とは:べき級数法による求め方

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、ルジャンドルの微分方程式とは何か、それをべき級数による方法で解いてみます。

 

ルジャンドルの微分方程式(Legendre’s equation)とは、

\[ \begin{aligned}(1-x^2)y^{\prime \prime}-2x y^\prime +n(n+1)y =0\end{aligned} \]

と表される微分方程式です。これは変数係数の2階線形微分方程式に分類されますね。\(n\)はパラメーター(定数)です。その解は、ルジャンドル関数(Legendre’s function)と呼ばれます。

ルジャンドルの微分方程式は、球座標におけるラプラス方程式やシュレディンガー方程式の解を求める中で表れるなど、広く応用に登場します。

 

ルジャンドルの微分方程式をべき級数法で解いてみましょう。

\[ \begin{aligned}y(x)= \sum_{k=0}^\infty a_k x^k\end{aligned} \]

と置くと、その微分は

\[ \begin{aligned}y^\prime (x) =\sum_{k=1}^\infty ka_k x^{k-1}\\ =  \sum_{k=0}^\infty (k+1)a_{k+1} x^{k}\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y^{\prime \prime}(x) =\sum_{k=2}^\infty k(k-1)a_k x^{k-2}\\ =  \sum_{k=0}^\infty (k+2)(k+1)a_{k+2} x^{k}\end{aligned} \]

となります。これを方程式に代入して整理すれば、

\[ \begin{aligned}\sum_{k=0}^\infty (k+2)(k+1)a_{k+2} x^{k} – x^2\sum_{k=2}^\infty k(k-1)a_k x^{k-2}\\  -2x\sum_{k=1}^\infty ka_k x^{k-1} +n(n+1) \sum_{k=0}^\infty a_k x^k \\ =\sum_{k=0}^\infty (k+2)(k+1)a_{k+2} x^{k} – \sum_{k=2}^\infty k(k-1)a_k x^{k} \\-2\sum_{k=1}^\infty ka_k x^{k} +n(n+1) \sum_{k=0}^\infty a_k x^k\\=0\end{aligned} \]

これが\(x\)についての恒等式になるので、同じ次数の項の左辺の係数はすべて0になります。\(x^0,x^1\)と\(x^2\)以降の係数の比較から、

\[ \begin{aligned} 2\cdot 1 \cdot a_{2}  +n(n+1)a_0=0\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}3\cdot 2 a_{3}+(-2\cdot 1 +n(n+1 ))a_1=0\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}(k+2)(k+1)a_{k+2}\\+(-k(k-1)-2k +n(n+1))a_k =0\end{aligned} \]

が得られます。3番目の式を整理すれば、

\[ \begin{aligned}a_{k+2} = -\frac{(n-k)(n+k+1)}{(k+2)(k+1)}a_k\end{aligned} \]

という漸化式(再帰公式)となりました。\(n\)を自然数とするとき、\(k=n\)となれば\(a_{k+2}\)は0となるので、一定以降の項の偶数次・奇数次の係数は消えますね。

 

漸化式を解いてみましょう。実験的に最初の項を計算すると、

\[ \begin{aligned}a_2 = -\frac{1}{2}n(n+1)a_0\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}a_3 =  – \frac{1}{3!}(n-1)(n+2)a_1\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}a_4 = -\frac{(n-2)(n+3)}{4\cdot 3} a_2 \\ =\frac{(n-2)n(n+1)(n+3)}{4!} a_0 \end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}a_5 = -\frac{(n-3)(n+4)}{5 \cdot 4}a_3\\ = \frac{(n-3)(n-1)(n+2)(n+4)}{5!}a_1\end{aligned} \]

となります。偶数次の項については、

\[ \begin{aligned}a_{2k} =(-1)^k \frac{(n-2k+2)\cdots(n+2k-1)}{(2k)!}a_0\end{aligned} \]

となり、奇数次は

\[ \begin{aligned}a_{2k+1} =(-1)^k \frac{(n-2k+1)\cdots(n+2k)}{(2k+1)!}a_1\end{aligned} \]

となります。よって、解は

\[ \begin{aligned}y(x)= a_0 y_E(x)+a_1y_O(x)\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y_E(x) = \sum_{k=0} ^\infty (-1)^k \frac{(n-2k+2)\cdots(n+2k-1)}{(2k)!}x^{2k}\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y_O(x) = \sum_{k=0} ^\infty (-1)^k \frac{(n-2k+1)\cdots(n+2k)}{(2k+1)!}x^{2k+1}\end{aligned} \]

と表せます。

\(n\)が一般の実数のときは収束半径は\(1\)で、\(|x|<1\)で収束します(レシオテスト)。一般に、ルジャンドル関数は特殊関数(非初等関数)に分類されます。

 

ただし、\(n\)が自然数のときは、解の一方は無限級数ではなく多項式になるので、すべての\(x\)について収束します。

簡単のため、\(n\)が自然数、初期条件を\(y(1)=1\)とするときの多項式解\(y_n(x)\)を求めましょう。これらの解は、ルジャンドル多項式(Legendre’s polynomial)と呼ばれています。

初期条件は、最高次の係数を\(a_n = \frac{(2n)!} {2^n (n!)^2}\)と選ぶことに対応しています。このとき、ルジャンドルの多項式の表示式を導いてみましょう。さきほど得た漸化式を逆に解けば、

\[ \begin{aligned} a_{n-2} &= -\frac{n(n-1)}{2(2n-1)}a_n \\ &= -\frac{n(n-1)}{2(2n-1)} \frac{2n(2n-1)(2n-2)!} {2^n n(n-1)(n-2)! n(n-1)!}\\ &=-\frac{(2n-2)!}{2^n(n-1)!(n-2)!} \end{aligned} \]

となります。同様にして、

\[ \begin{aligned} a_{n-4} &= -\frac{(n-2)(n-3)}{4(2n-3)}a_{n-2} \\ &=\frac{(n-2)(n-3)}{4(2n-3)}\frac{(2n-2)(2n-3)(2n-4)!}{2^n(n-1)(n-2)!(n-2)(n-3)(n-4)!} \\ &=\frac{(2n-4!)}{2^n 2! (n-2)!(n-4)!} \end{aligned} \]

です。一般には、

\[ \begin{aligned}a_{n-2\ell} = (-1)^\ell \frac{(2n-2\ell)!}{2^n \ell! (n-\ell)!(n- 2\ell)!}\end{aligned} \]

となります。したがって、ルジャンドル多項式は

\[ \begin{aligned}y_n(x) = \sum_{\ell =0}^\infty (-1)^\ell \frac{(2n-2\ell)!}{2^n \ell! (n-\ell)!(n- 2\ell)!} x^{n-2\ell}\end{aligned} \]

です。\(\ell \)は\(n- 2\ell \geq 0\)を満たす範囲、つまり\(\lfloor{\frac{n}{2}}\rfloor\)で止まり、多項式になっています。具体的に求めてみると、

\[ \begin{aligned}y_0(x)= 1\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y_1 (x)=x\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y_2(x) =\frac{1}{2} (3x^2-1)\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}y_3(x)= \frac{1}{2}(5x^3-3x)\end{aligned} \]

となります。

ルジャンドル多項式は、積分による内積(\(L^2\)内積)について直交した多項式になっており、一般の関数の展開に応用することができます(フーリエ・ルジャンドル級数)。

参考:直交多項式とは:ルジャンドル多項式、微分方程式を例に

 

以上、ルジャンドルの微分方程式、多項式とは何か、そのべき級数による解の求め方を紹介してきました。

一般のルジャンドルの微分方程式の解は、べき級数で表す以上のことはできませんでしたが(特殊関数)、\(n\)が自然数のとき、多項式解を持つことがわかりました。

定数係数の方程式のように解くのは簡単ではありませんでしたが、べき級数解法の威力を感じられたのではないかと思います。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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