微分方程式のべき級数解法とは:指数関数、三角関数を例に

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、微分方程式のべき級数解法とは何か、指数関数、三角関数を例に紹介したいと思います。

 

べき級数解法とは

定数係数の線形微分方程式は解き方が確立されていますが、変数係数のものを考えると簡単に解けるとは限りません。そこで登場するのが、べき級数解法です。

微分方程式の解が、べき級数\(y(x)=\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k\)として表されたと仮定しましょう。この級数は(収束するならば)微分できて、\(\frac{dy}{dx} = \sum_{k=1}^\infty ka_k x ^{k-1}\)となります(項別微分)。これらを方程式に代入して、係数\(a_k\)を求めることができれば、解が求められるわけです。このような方法は、べき級数解法(power series method)と呼ばれます。

今回は、簡単な例でべき級数解法を試してみましょう。

 

指数関数

\[\frac{dy}{dx}=y  \\ y(0)=1\]

という微分方程式をべき級数解法で解いてみます。

まず、\(y(x)=\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k\)と置けば、\(\frac{dy}{dx} = \sum_{k=1}^\infty ka_k x ^{k-1}\)です。これらを代入すると、

\[\sum_{k=1}^\infty ka_k x ^{k-1}=\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k\]

です。左辺の番号付けを比較しやすいように変えれば、

\[\sum_{k=0}^\infty (k+1)a_{k+1} x ^{k}=\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k\]

となります。右辺と左辺で同じ次数の係数が一致しなければならないので、

\[ (k+1)a_{k+1} =a_k\]

が成り立ちます。また、初期条件\(y(0)=1\)から、\(a_0 =1\)です。

この漸化式は解くことができます。わかりにくかったら、\(k=0,1,2,\dots\)と実験してみると良いでしょう。\(a_0 =1\)、\(a_1 =\frac{1}{2} a_0=\frac{1}{2}\)、\(a_2 = \frac{1}{3}a_1 = \frac{1}{3!}\)です。つまり、\(a_k = \frac{1}{k!}\)が解となります。

よって、微分方程式の解は

\[y(x)=\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{k!}x ^k\]

とわかりました。この級数はすべての\(x\)について収束しますテイラー展開を知っていれば、これは指数関数\(y(x)=e^x\)そのものです。

\(\frac{dy}{dx}=y\)という微分方程式の解の形を知らなくても、べき級数として求めようとすれば、必然的に指数関数(のべき級数展開)が得られます。この微分方程式、級数展開をもって逆に指数関数を定義することもできます。

 

三角関数

もうひとつの例として、

\[\frac{d^2 y }{dx^2} =  – y\\ y(0)=1 ,\frac{dy}{dx}(0)=1\]

をべき級数解法で解いてみましょう。

\(y(x)=\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k\)と置くと、その2回微分は\(\frac{d^2y}{dx^2} = \sum_{k=2}^\infty k(k-1)a_k x ^{k-2}\)です。比較しやすいように番号付けを変えると、\(\sum _{k=0}^\infty (k+2)(k+1)a_{k+2}x^k\)となります。これを方程式に代入すれば

\[\sum _{k=0}^\infty (k+2)(k+1)a_{k+2}x^k =-\sum_{k=0}^\infty a_k x ^k \]

です。係数を比較すると、

\[a_{k+2}= -\frac{1}{(k+2)(k+1)}a_k\]

が得られます。また、初期条件から\(a_0 = 1,a_1 =1\)です。

これを解いてみましょう。予想として小さな\(k\)について計算してみると、

\[a_2 = -\frac{1}{2}a_0 =-\frac{1}{2}\]

\[a_3 = – \frac{1}{6!}a_1 = – \frac{1}{3!}\]

\[a_4 = – \frac{1}{4\cdot 3} a_2 = \frac{1}{4!}\]

\[a_5 = – \frac{1}{5\cdot 4} a_3 = \frac{1}{5!}\]

です。偶数次の項、奇数次の項それぞれで規則性がありますね。一般的には、

\[a_{2k} = (-1)^{k}\frac{1}{(2k)!}\]

\[a_{2k+1} = (-1)^{k}\frac{1}{(2k+1)!}\]

となります。したがって、微分方程式の解は

\[y(x)= \sum _{k=0} ^\infty (-1)^{k}\frac{1}{(2k)!}x^k + \sum_{k=0}^\infty (-1)^{k}\frac{1}{(2k+1)!}x^k\]

です。(この級数は絶対収束しているので、和の順序を変えられます)

これはコサイン、サインのテイラー展開を知っていれば、

\[y(x)= \cos x + \sin x\]

に一致しますね。

つまり、

\[\frac{d^2 y }{dx^2} =  – y\]

という微分方程式からは、必然的に三角関数が導かれます。逆に、この方程式を満たすべき級数をもって三角関数を定義することもできます。

同様に、

\[\frac{d^2 y }{dx^2} =   y\]

という方程式からは、双曲線関数を導くことができます(試してみてください)。

 

以上、微分方程式のべき級数解法とは何か、指数関数、三角関数を例に紹介してきました。

べき級数解法は、数列の方程式(漸化式)に問題を帰着させる方法です。漸化式を解くのはいつでも簡単であるとは限りませんが、通常の方法では解きづらいような方程式の解も見つけることができます。

まずはべき級数解法の簡単な例として、指数関数や三角関数が導かれる微分方程式を解いてみると、何が起こっているか理解しやすいでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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