不等式の推移律の証明:定義に戻って考える、存在命題の練習

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、不等式の定義と推移律の証明について紹介します。

 

未知の数\(x,y\)について、\(x <5\)であり\( 5 < y\)のとき、\(x,y\)の関係はどうなっているでしょうか? それは\(x < y\)ですね。この性質は推移律と呼ばれる不等式の性質です。

 

なぜ推移律が成り立つのか、不等式・不等号の定義に遡って考えていきましょう。

一般に、数\(a,b\)について、\(a < b\)が成り立つとは、\( b = a+p\)を満たす正の数\(p\)が存在することと定義します。

例えば、\(2 < 5\)が正しいのは、\(5 = 2+3\)と表せて、\(p=3\)は正の数だからです。\(5 <  1\)が正しくないのは、\(5\)にどんな正の数\(p\)を足しても\(1\)にならない \(1 \neq 5+p\)だからです。

不等式の定義では、0、正の数、負の数が前提となっています。正の数とは何かについて議論することもできますが、今回はそれが目的でないので直観的に進みます。

 

不等式の推移律(transitive property)とは、どんな数\(a,b,c\)についても、「\(a <b\)かつ\(b < c\)ならば、\(a<c\)が成り立つ」というものです。

これを不等式の定義にさかのぼって証明してみましょう。

示したいことは、\(a<c\)、つまり\(c = a+p\)を満たす正の数\(p\)が存在することです。

仮定\(a<b\)から、\(b  = a+p_1\)を満たす正の数\(p_1\)が存在します。また、\(b<c\)から、\(c = b + p_2\)を満たす正の数\(p_2\)が存在します。これらを組み合わせて、\(p= p_1 +p_2\)とすると、

\[\begin{aligned} c &= b+p_2 \\&=a+p_1+p_2 \\&= a+p \end{aligned}\]

と表せて、\(p\)は正の数同士の和なので正の数です。よって、\(a<c\)であることが示せました。

 

ちなみに、今回は等号を含まない不等式\(<\)について推移律を証明しましたが、等号を含む不等式\(\leq\)でも全く同様に証明できます。

 

以上、不等式の定義と推移律の証明について紹介してきました。

当たり前とされがちな内容ですが、定義に戻って考えること、「存在する」形式の証明の簡単な練習問題として、理解しておくと良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 



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