どうも、木村(@kimu3_slime)です。
小学校や中学校の算数数学では、球の体積の求め方や、三平方の定理を学びます。これらは幾何学の問題以外に、何に使うのでしょうか。
今回は、球の体積計算、三平方の定理の応用として、金属結晶の充填率の求め方を紹介します。
金属結晶の充填率の求め方
金属は、ごく小さなスケールでは、結晶として規則正しく粒子が並んでいることが知られています(金属結晶)。
粒子の三次元的な並び方を表したものは、結晶格子と呼ばれています。
今回は、次のような結晶格子、面心立方格子(face-centered cubic)を考えましょう。
画像引用:化学の新研究
結晶格子の一部分、繰り返すパターンの最小単位を取り出したものは単位格子と呼ばれています。
面心立方格子は、立方体の形をした格子で、その角と面の中心に原子があるのでそう呼ばれているわけです。アルミニウム、銅、銀などが面心立方格子の例です。
面心立方格子の単位格子において、立方体の体積に対する原子の体積の占める割合、充填率を求めてみましょう。
原子は完全な球と仮定し、その半径を\(r\)とします。単位格子の一辺の長さ、格子定数を\(a\)とします。
立方体の体積は、\(a^3\)です。
原子の占める体積は、半分の球が6個、1/8の球が8個あります。ひとつの球の体積は、\(\frac{4}{3}\pi r^3\)です。したがって、合計の体積は\(\frac{4}{3}\pi r^3 (\frac{1}{2}\times 6 +\frac{1}{8}\times 8)=\frac{16}{3} \pi r^3\)となります。
これらの比を計算するには、\(a,r\)の関係がわかると良いです。そこで上に書いた図を見ましょう。原子の中心は面の中心にあり、したがって面の対角線上で接する作りになっています。対角線の長さは、半径の合計で、\(r+2r+r=4r\)です。よって、三平方の定理(ピタゴラスの定理)から、
\[a^2 +a^2 = (4r)^2\]
\[a= 2\sqrt{2} r\]
となります。\(a,r>0\)であることに注意。
よって、充填率は
\[\begin{aligned} 充填率 &= \frac{原子の占める体積}{単位格子の体積} \\&=\frac{\frac{16}{3}\pi r^3}{a^3}\\ &=\frac{\frac{16}{3}\pi r^3}{16\sqrt{2} r^3}\\&= \frac{\sqrt{2}}{6}\pi \\&\approx 74 \% \end{aligned}\]
と求めることができました。
これは格子定数\(a\)、原子半径\(r\)によらない値です。面心立方格子ならば、常に充填率が約74%になることがわかりますね。
以上、球の体積計算、三平方の定理の応用として、金属結晶の充填率の求め方を紹介してきました。
充填率や密度、重さの計算は、幾何学の良い応用問題になります。球の面積や三平方の定理の応用として、金属の結晶の話は面白いと思います。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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