比の応用:化学反応式の係数の意味

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

小学校算数で学ぶ比の考え方の応用として、化学反応式の係数の意味を紹介します。

 



化学反応式の係数の意味

窒素\(\mathrm{N}_2\)と水素\(\mathrm{H}_2\)を組み合わせて、アンモニア\(\mathrm{NH}_3\)を生成する化学反応について考えましょう。

アンモニアは肥料の原料として重要で、その工業的な生産方法はハーバー・ボッシュ法として知られています。

その化学反応式は、次のように表せます。

\[\mathrm{N}_2 +3 \mathrm{H}_2 \to 2 \mathrm{NH}_3\]

ラフに言えば、「1つ分の窒素と3つ分の水素が反応し、2つ分のアンモニア」ができるということです。

分子式\(\mathrm{N}_2\)\(\mathrm{H}_2\)\(\mathrm{NH}_3\)
物質量(mol)\(1\)\(3\)\(2\)
質量(g)\(1\times 28\)\(3 \times 2\)\(2\times 17\)
標準状態での体積(L)\(1 \times 22.4\)\(3 \times 22.4\)\(2 \times 22.4\)

固体、気体、液体といった物質は、すべて小さな大量の粒子:分子原子からできています。物質量とはその粒子の個数を表すもので、非常にたくさんの粒子をまとめて1mol = \(6.02×10^{23}\)個としています。

化学反応式の係数は、反応する各物質の物質量の比を表しています。この場合は、\(1:3:2\)ですね。

これは比なので、状況が変化しても利用することができます。例えば、6molの水素が使われたとき、アンモニアは何mol生成されたか、という問題を考えましょう。\(1:3:2 = 2:6:4\)なので、アンモニアは4mol生成されるわけです。

 

直観的にわかりやすいのは、質量の比率でしょうか。

\(1 \times 28\)gの窒素と\(3 \times 2\)gの水素が反応すると、\(2 \times 17\)gのアンモニアができあがります。\(28, 2 ,17\)は窒素、水素、アンモニアのひとまとまり(1mol)あたりの重さ(モル質量)です。

大量生産によって、\(56\)kgの窒素を完全に反応させたとき、使われる水素と生成されるアンモニアの量を求めてみましょう。比としては、\(1:3:2 =2000 : 6000: 4000\)です。したがって、窒素水素アンモニアの順に、\(2000 \times 28\)、\(6000 \times 2\)、\(4000 \times 17\)gです。単位をキログラムにすれば、水素とアンモニアの質量は\(6 \times 2 =12\)kg、\(4 \times 17= 68\)kgですね。

 

1molあたりの質量は、物質の種類によって異なります。しかし、気体の体積は、(温度と圧力が等しければ)物質によって変わらずに一定です(アボガドロの法則)。

温度0℃、1気圧のときは1molの物質の体積は22.4Lであることが知られています。

つまり、体積の比は常に\(1:3:2\)となります。窒素が5L完全に反応するとき、水素は15L消費され、アンモニアは10L生成されるわけですね。

 

もうひとつ、化学反応式の例を紹介しましょう。

家庭で使われている都市ガスの主成分、メタン\(\mathrm{CH}_4\)の燃焼反応についてです。酸素\(\mathrm{O}_2\)と反応し、二酸化炭素\(\mathrm{CO}_2\)と水\(\mathrm{H}_2 \mathrm{O}\)(とエネルギー)を生成します。

化学反応式は、次の通りです。

\[\mathrm{CH}_4 +2\mathrm{O}_2 \to \mathrm{CO}_2+ 2\mathrm{H}_2 \mathrm{O}\]

この式も、さきほどと同様に比の考え方を使って解釈できます。

分子式\(\mathrm{CH}_4\)\(\mathrm{O}_2\)\( \mathrm{CO}_2\)\(\mathrm{H}_2 \mathrm{O}\)
物質量(mol)\(1\)\(2\)\(1\)\(2\)
質量(g)\(1\times 16\)\(2 \times 32\)\(1\times 44\)\(2\times 18\)

 

物質量の比は、メタン、酸素、二酸化炭素、水の順で、\(1:2:1:2\)ですね。

8gのメタンを完全に燃焼させたとき、各物質の質量について考えましょう。比として、\(1:2:1:2 = \frac{1}{2}:1 :\frac{1}{2} : 1\)です。質量は右辺の関係となります。したがって、酸素は\(32\)g、二酸化炭素は\(22\)g、水は\(18\)gと求められました。

 

以上、小学校算数で学ぶ比の考え方の応用として、化学反応式の係数の意味を紹介してきました。

化学反応の結果が、きれいな整数の比になるという事実は驚きです。幾何学以外での比の応用の例として、化学反応を知っておくと良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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