確率変数の平均・分散の平行移動、定数倍に関する性質の証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、確率変数の平均(期待値)・分散の平行移動、定数倍に関する性質

\[E(cX+a) =cE(X)+a\]

\[V(cX+a)= c^2 V(X) \]

の証明を紹介します。

ここで、\(a,c\)は実数です。\(X+a\)は確率変数の平行移動(定数関数を加えること)、\(cX\)は定数倍を意味しています。確率変数同士の和は考えていないことに注意。

\[(X+a)(\omega):= X(\omega)+a\]

\[(cX)(\omega):= c\cdot X(\omega)\]

平行移動をすると、平均はその分だけ動き、分散は変わりません。定数倍をすると、平均は\(c\)倍され、分散は\(c^2\)倍されます。これらの様子を図的に考えると、確かに成り立ちそうな性質です。

 

期待値の平行移動、定数倍

離散確率変数のとき

離散確率変数\(X\)と連続関数\(g\)を組み合わせた\(g(X)\)の期待値は、\(f\)を\(X\)の確率質量関数として

\[E(g(X))= \sum_k g(x_k) f(x_k)\]

でした。

\(g(X) = cX+a\)にこれを当てはめれば、

\[\begin{aligned}  E(cX+a) &= \sum_k (cx_k+a)f(x_k)\\&= c\sum_k x_k f(x_k)+a \sum_k f(x_k) \\&=cE(X)+a\end{aligned}\]

となることがわかりました。

ここで和\(\sum\)の線形性、確率質量関数の定義から\(\sum_k f(x_k)=1\)(確率の合計は1)を用いたことに注意しましょう。

 

連続確率変数のとき

連続確率変数\(X\)と連続関数\(g\)を組み合わせた\(g(X)\)の期待値は、\(f\)を\(X\)の確率密度関数として

\[E(g(X))= \int_{-\infty}^\infty g(x) f(x)dx\]

でした。

\(g(X) = cX+a\)にこれを当てはめれば、

\[\begin{aligned}  E(cX+a) &= \int_{-\infty }^\infty (cx+a)f(x)dx \\ &= c\int_{-\infty}^\infty xf(x)dx +a\int_{-\infty}^\infty f(x)dx\\&=cE(X)+a \end{aligned}\]

となります。さきほど同様、積分の線形性、確率密度関数の定義から\(\int_{-\infty}^\infty f(x)dx =1\)(確率の合計は1)に注意しましょう。

 

分散の平行移動、定数倍

離散確率変数のとき

分散には、

\[\begin{aligned} V(X) &:= \sum_k (x_k-E(X))^2 f(x_k)\\&=E(X^2)-(E(X))^2 \end{aligned}\]

という関係式があります。

 

まず、\((cX+a)^2\)の期待値を計算すると、

\[\begin{aligned} &E((cX+a)^2)\\&= \sum_k (c^2 x_k^2 +2acx_k +a^2)f(x_k) \\&= c^2\sum_k x_k^2 f(x_k) +2ac \sum_k x_k f(x_k) +a^2 \sum_k f(x_k) \\&= c^2 E(X^2)+2acE(X)+a^2\end{aligned}\]

です。したがって、

\[\begin{aligned} &V(cX+a)\\&= E((cX+a)^2)-(E(cX+a))^2\\&= c^2 E(X^2)+2acE(X)+a^2 \\&\quad -(c^2(E(X))^2 +2acE(X)+a^2) \\ &=c^2 (E(X^2)-(E(X))^2)\\ &= c^2 V(X)\end{aligned}\]

となることがわかりました。

 

連続確率変数のとき

連続確率変数についても、分散には

\[\begin{aligned} V(X) &:= \int_{-\infty}^\infty (x-E(X))^2 f(x)dx\\&=E(X^2)-(E(X))^2 \end{aligned}\]

という関係があります。

 

\((cX+a)^2\)の期待値は、

\[\begin{aligned} &E((cX+a)^2) \\&= \int_{-\infty}^\infty (c^2x^2+2acx+a^2)f(x)dx \\&=c^2 \int_{-\infty}^\infty x^2f(x)dx+2ac\int_{-\infty}^\infty xf(x)dx \\&\quad+a^2\int_{-\infty}^\infty f(x)dx \\ &= c^2 E(X^2)+2acE(X)+a^2\end{aligned}\]

です。したがって、

\[\begin{aligned} &V(cX+a)\\&=E((cX+a)^2)-(E(cX+a))^2 \\&=c^2 E(X^2)+2acE(X)+a^2\\&\quad -(c^2 (E(X))^2+2acE(X)+a^2)\\&=c^2(E(X^2)-(E(X))^2)\\&=c^2 V(X) \end{aligned}\]

となることがわかりました。

 

ちなみに、標準偏差\(\mathrm{std}(X) =\sqrt{V(X)}\)については、

\[\begin{aligned}  \mathrm{std}(cX+a) &= \sqrt{V(cX+a)} \\&= \sqrt{c^2 V(X)} \\&= |c|\mathrm{std}(X)\end{aligned}\]

が成り立ちますね。確率変数を正の定数\(c\)倍すると、標準偏差はそのまま\(c\)倍されます。

 

以上、確率変数の平均(期待値)・分散の平行移動、定数倍に関する性質の証明を紹介してきました。

これは正規分布の平均、分散を標準正規分布から計算する方法として応用できるものです。期待値はそのまま定数倍されますが、分散では定数倍の2乗となることに注意して使いましょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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