狭義単調増加(減少)関数が逆関数を持つことの証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、狭義単調増加(減少)関数が逆関数を持つことの証明を紹介します。

前提知識:写像の単射・全射・全単射の判定、証明の書き方

 

定義

まず定義を確認しましょう。

実数値関数\(f:I \to \mathbb{R}\)が狭義単調増加(strictly monotonically increasing)であるとは、任意の\(x_1,x_2 \in I\)に対し\(x_1 <x_2\)ならば\(f(x_1)< f(x_2)\)が成り立つことです。

例えば、\(I=[0,\infty), f(x)=x^2\)、\(I=\mathbb{R},f(x)=e^x\)、\(I=[-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}], f(x)= \sin x\)は狭義単調増加です。二乗関数やサインでは、定義域として単調な範囲を考えていることに注意しましょう。

そしてこれらの関数は、逆関数を持つことが知られています。それぞれ、\(\sqrt{x}, \log x, \mathrm{arcsin\,} x\)です。

参考:逆三角関数をなぜ学ぶか? その微分と積分計算への応用

狭義単調増加の十分条件のひとつは、微分が正であることです。\(f\)が微分可能で、\(I\)において\(f^{\prime}(x)>0\)ならば\(f\)は狭義単調増加であることが知られています。したがって、微分が正であることを示せば、そこで逆関数を持つと議論できるわけです。

 

主張と証明

今回証明したいのは、次のことです。

\(f:I \to \mathbb{R}\)を狭義単調増加な関数とする。

このとき、\(f\)は像\(f(I)\)への全単射である。したがって、そこにおける逆関数\(f^{-1}:f(I)\to I\)が存在する。

さらに、\(f^{-1}\)も狭義単調増加である。

証明してきましょう。

単射であることについて。\(x_1,x_2 \in I\)を\(x_1 \neq x_2\)を満たすものとします。すると、\(x_1 <x_2\)、\(x_1>x_2\)のいずれかが成り立ちます。したがって、\(f\)の狭義単調性から、\(f(x_1)<f(x_2)\)、\(f(x_1)> f(x_2)\)のいずれかが成り立ちます。いずれにせよ、\(f(x_1)\neq f(x_2)\)が成り立ち、単射であることがわかりました。

全射であることについて。\(f\)がどんな関数であっても、必ず\(f\)は像への全射になります。\(y \in f(I)\)とすると、像の定義から\(x\in I\)で\(f(x)=y\)を満たすものが存在します。したがって、\(f:I \to f(I)\)は全射です。

よって、\(f:I \to f(I)\)が全単射であることがわかりました。つまり、任意の\(y \in f(I)\)に対し、\(f(x)=y\)を満たす\(x\in I\)がただ一つ存在します。この対応により、\(f^{-1}:f(I)\to I\)を\(f^{-1}(y)=x\)と定義すれば、それが逆関数です。すなわち、任意の\(x\)に対し、\(f^{-1}(f(x))=x\)が成り立ちます。

\(f^{-1}\)の単調性について。\(y_1,y_2 \in f(I)\)を\(y_1 < y_2\)を満たすものとしましょう。このとき、\(f(y_1)= x_1,f(y_2) = x_2\)を満たす\(x_1,x_2 \in I\)が存在します(\(f\)の全射性)。それぞれの逆関数を取ると、\(f^{-1}(f(y_1))=y_1 =f^{-1}(x_1)\)、\(f^{-1}(f(y_2))=y_2 =f^{-1}(x_2)\)です。したがって、仮定より\(f^{-1}(x_1)< f^{-1}(x_2)\)が成り立ち、狭義単調増加であることが示せました。

 

注意点、関連知識

ここまでの議論は狭義単調増加でしたが、狭義単調減少としても、不等号の向きを変えて全く同じ議論ができます。

実数値関数\(f:I \to \mathbb{R}\)が狭義単調減少(strictly monotonically decreasing)であるとは、任意の\(x_1,x_2 \in I\)に対し\(x_1 <x_2\)ならば\(f(x_1)> f(x_2)\)が成り立つことです。

 

関数を「広義」単調増加(減少)と仮定すると、逆関数を持つとは限りません。広義単調増加(monotonically increasing)、非減少(non-increasing)とは、任意の\(x_1,x_2 \in I\)に対し\(x_1 \leq x_2\)ならば\(f(x_1) \leq  f(x_2)\)が成り立つことです。

\(f(x)=0\)のような定数関数は、広義単調増加ですが、逆関数を持ちません。値に\(0\)を取るようなインプットは唯一つに定まらないので。

 

今回は\(f\)が単調であるという条件のみを課しました。さらに、

  • \(f\)が連続ならば、逆関数も連続
  • \(f\)が微分可能で、\(f^{\prime}(x) \neq 0\)ならば、逆関数も微分可能で、\((f^{-1})^{\prime}(y)=\frac{1}{f^{\prime}(x)}\)

が成り立つことも知られています。詳しくは、杉浦「解析入門 Ⅰ」を参照してください。

 

以上、狭義単調増加(減少)関数が逆関数を持つことの証明を紹介してきました。

二乗関数、指数関数、三角関数には、それぞれルート、対数関数、逆三角関数といった逆関数が存在します。その議論には、関数の単調性が有効であることを知ってもらえたら嬉しいです。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

解析入門 Ⅰ(基礎数学2)

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