偶数+奇数はいつでも奇数? 読み解き方、よくある間違いと証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

ネット上では、大学生基本数学調査偶数と奇数の和に関する問題が、定期的に話題になっています。

偶数と奇数をたすと、答えはどうなるか。選択肢からひとつ選び、理由を文章で説明せよ。

  1. いつも必ず偶数になる
  2. いつも必ず奇数になる
  3. 奇数になることも偶数になることもある

今回は、この問題の読み解き方、よくある間違いと、証明を紹介しようと思います。

 



問題文を読み解く

まず、文章の意味を数学的に正しく読み解くことが大事です。

 

そのためには、偶数と奇数の一般的な定義を知っておく必要があります。特殊なケースを調べただけでは、「いつも~が成り立つ」とは言えないからです。

例えば、\(1,3,5\)が奇数で、\(2,4,6\)が偶数だと知っていたとしても、それを一般にどう表すかを知らなければ、この問題の回答を説明することはできないでしょう。例えば、次の回答は、計算式に誤りはありませんが、理由の説明としては不十分(誤り)です。

偶数と奇数の和はいつも必ず奇数になる。なぜなら、\(1+2=3\)、\(3+4=7\)……と結果が奇数になっているから。

\(1,2,3,4\)といった具体例について、偶数と奇数の和が奇数となることを示しただけです。他にも偶数や奇数は限りなくたくさん存在するので、「いつも~なる」とは言えていません。

整数は無限にあり、したがって偶数や奇数は無限にあります。具体的な数について、計算して書き下し尽くすことは不可能です。

 

この問題に対処するためには、偶数や奇数といった数を、文字を使って一般的に表す必要があります。

  • 整数\(x\)が偶数であるとは、ある整数\(k\)によって\(x=2k\)と表せること。
  • 整数\(x\)が奇数であるとは、ある整数\(k\)によって\(x=2k-1\)と表せること。

参考:偶数、奇数の見分け方(1の位)とその証明

この文字式を使った一般的な定義(の考え方)を知らなければ、理由をつけた説明することはできないでしょう。

「奇数になる気がするけど説明ができない」「理由を書いたけどあってる?」という感想が思い浮かぶのは、「偶数、奇数とは何か」という定義を知らない(自信持って説明できない)ことによるものでしょう。

 

よくある間違い

文字による定義を知っていてもなおある、よくある間違った回答が次の通り。

偶数と奇数の和はいつも必ず奇数になる。なぜなら、偶数は\(2k\)、奇数は\(2k-1\)なので、\(2k +(2k-1) =4k-1\)で、\(4k-1\)は奇数だから。

 

何が問題なのかわかるでしょうか?

これは偶数と奇数を表すために、同一の文字\(k\)を用いてしまっているのが問題です。\(2k, 2k-1\)は、具体的に\(k\)をあてはめてみると、\(4,3\),\(6,5\)など、連続する偶数と奇数を表しています。

もし問題文が「連続する奇数と偶数を足すとどうなるか」だったら、この説明は正解です。しかし、問われているのは「奇数と偶数をたすとどうなるか」です。

この文は暗黙に、「好き勝手に与えられた奇数\(x\)と、好き勝手に与えられた\(y\)をたすとどうなるか」を問うているのです。「好き勝手に与えられた」=「すべての」=「任意の」といった言い換えがされることがあります。

全称命題や存在命題といった論理学について、しっかりと中学高校の段階で明確に学ばないから、このような証明ができない人が多いのではないか、と僕は思っています(できないこと自体は悪いことではない)。

 

正しい証明のひとつ

では、正しい証明のひとつを紹介します。

偶数と奇数の和はいつも必ず奇数になる。任意に与えられた偶数と奇数を、それぞれ\(x,y\)と表す。

\(x\)は偶数なので、偶数の定義より、ある整数\(k\)を用いて\(x=2k\)と表せる。\(y\)は奇数なので、奇数の定義より、ある整数\(\ell\)を用いて\(y=2\ell-1\)と表せる。

したがって、その和を\(z:=x+y\)とすると、\(z=2k+2\ell-1 =2(k+\ell) -1\)となる。よって、ある整数\(m:=k+\ell\)によって\(z=2m-1\)と表せるので、奇数の定義より、\(z\)は奇数。以上によって、偶数と奇数の和がいつも必ず奇数になることが示せた。

普通の回答では、もう少し簡略化して書くと思いますが、意味を取りやすいように詳しく書きました。

問題文に示された一般的な数は、偶数、奇数、偶数と奇数の和であり、それをそれぞれ文字\(x,y,z\)で表しました。特定の数ではなく、不特定の一般的な数を扱うときは、それを一旦何かしらの文字で表すと、間違いなく議論しやすくなります。

「偶数は\(2n\)、奇数は\(2n+1\)だ」といったような思考は、問題文に示された偶数、奇数を不特定のものとして一旦文字で表さなかったことによって、生じうるものです。ショートカットは、きちんとした議論に慣れてからの方が良いと思います。

今回紹介した問題に似た問題として、「偶数と偶数の和はどうなるか」「奇数と奇数の和はどうなるか」「偶数の倍数はどうなるか」「奇数の倍数はどうなるか」といったものが考えられます。これらの回答の証明も、上の例を参考にぜひ書いてみてください。

 

以上、「偶数+奇数がいつでも奇数になるか」という問題の読み解き方、よくある誤解、証明を紹介してきました。

具体的な計算ができても、一般的な証明になるとどうやって手をつければ良いかわからなくなってしまう人は、少なくないと思います。

学校でも証明問題を適切に扱っているシーンは少ない印象がありますし、「すべての~」「ある~」といった言い回しをきちんと理解する人は少ないでしょう。

証明は数学をより深く楽しむための方法のひとつなので、今回のような例を通してぜひ考え方を身に着けてみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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