どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、ノルム空間の有限次元部分空間が閉集合であることの証明を紹介します。
導入
関数空間など無限次元の空間では、部分空間が閉集合であるとは限らず、閉部分空間かどうかを気にすることがあります。
しかし、たとえ全体が無限次元のノルム空間であっても、有限次元の部分空間は必ず閉集合となります。
すなわち、\(X\)をノルム空間、\(A\)をその有限次元の部分空間とすると、\(A\)は閉集合、閉部分空間です。
証明
\(A\)が閉集合であること、\((a_n)\)を\(A\)の点列とし、\(X\)においてそれが収束する\(a_n \to a , a\in X\)ならば、\(a \in A\)となることを示します。
\(A\)は有限次元の線形空間なので、その次元に等しい\(\mathbb{R}^N\)に同型です。また、有限次元の線形空間においてはすべてのノルムが同値であり、\(\mathbb{R}^N\)は完備なので、\(A\)は(ノルム空間として)完備です。
一般に収束する点列はコーシー列なので、\((a_n)\)は\(A\)のコーシー列です。したがって、\(A\)の完備性から\((a_n)\)は\(A\)において収束します\(a_n \to b , b \in A\)。極限の一意性から\(b=a \in A\)です。よって、\(A\)が閉集合であると示せました。
以上、ノルム空間の有限次元部分空間が閉集合であることの証明を紹介してきました。
有限次元の線形空間が同型、ノルムが同値となることを利用する議論は、有限ランク作用素と似ていますね。全体が無限次元の空間であっても、有限次元の部分空間は良い性質を持つことを利用していきましょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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