どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、グリーン関数について、常微分方程式の場合を簡単に紹介します。
グリーン関数とは
グリーン関数は、非同次の微分方程式の解を積分を使って表すために用いられる2変数関数\(G(x,y)\)です。非同次項を\(f\)として、\(u(x) = \int_a^b G(x,y) f(y)dy \)と表せます。
偏微分方程式、多次元の場合にもグリーン関数を考えることはできますが、今回は常微分方程式、1次元の場合を考えましょう。
\[ \begin{aligned}\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du}{dx}(x)) + \{q(x)+ \lambda r(x)\}u(x) =0\end{aligned} \]
\[ u(a)=u(b)=0 \]
の固有値の議論では、
\[\begin{aligned} u(x) = \int_a^b G(x,y)\lambda r(y)u(y) dy \end{aligned}\]
\[G(x,y)=G(y,x)\]
という条件を満たす関数\(G(x,y)\)を利用しました。これがグリーン関数です。
もう少し一般化すると、次のような枠組みです。1次元の区間\([a,b]\)において、
\[ \begin{aligned}\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du}{dx}(x)) + q(x)u(x) =f(x)\end{aligned} \]
\[u(a)=u(b)=0\]
という微分方程式を考えます。これは2階で非同次の線形微分方程式の境界値問題と呼ばれるものです。ただし\(p,q,f\)は連続関数で、\(p(x)>0\)とします。(ここでは単純化してディリクレ境界条件を考えましたが、もう少し一般的な形の境界値を考えることができます。)
ここで同次方程式\( \begin{aligned}\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du}{dx}(x)) + q(x)u(x) =0\end{aligned} \)の解\(u_1,u_2\)で
- \(u_1(a)=0\)、\(p(a)\frac{du_1}{dx}(a)=1\)
- \(u_2(b)=0\)、\(p(b)\frac{du_2}{dx}(b)=1\)
- \(u_1,u_2\)は線形独立
を満たすものが存在したとしましょう。
このとき、方程式の解は
\[\begin{aligned} u(x) = \int_a^b G(x,y) f(y)dy \end{aligned}\]
と表せて、
\[G(x,y)=G(y,x)\]
を満たす\(G(x,y)\)が構成できます。これがグリーン関数(Green’s function)です。
グリーン関数の導出
グリーン関数を、ある程度の議論を前提として、ラフに導出してみましょう。
グリーン関数は
\[ G(x,y)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) && (a\leq x \leq y) \\-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) && (y<x \leq b) \end{array} \right. \]
と定義できます。ただし、
\[K:=p(x)[\frac{du_1}{dx}(x)u_2(x)-u_1(x)\frac{du_2}{dx}(x)]\]
です。\(u_1,u_2\)が同次方程式の解で線形独立であるとき、\(K\)は定数で、かつ\(K \neq 0\)となることが知られています(グリーンの公式、ラグランジュの恒等式)。
こうして定義した\(G(x,y)\)がさきほど示した条件を満たすことを確認してみましょう。
対称性
\(x=y\)のときは\(G(x,y)=G(y,x)\)は当然成り立つので、\(x \neq y\)のときを考えます。
\(x<y\)のとき、\(x \leq y\)でもあるので、
\[ G(x,y)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) && (a\leq x \leq y) \\-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) && (y<x \leq b) \end{array} \right. \\ = -\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) \]
\[ G(y,x)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) && (a\leq y \leq x) \\-\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) && (x<y \leq b) \end{array} \right. \\ =-\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y)\]
となり、両者は一致します。
\(y<x\)のときも、
\[ G(x,y)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) && (a\leq x \leq y) \\-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) && (y<x \leq b) \end{array} \right. \\ = -\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) \]
\[ G(y,x)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) && (a\leq y \leq x) \\-\frac{1}{K}u_1(x)u_2(y) && (x<y \leq b) \end{array} \right. \\ =-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(x) \]
となり一致します。
境界条件
\[\begin{aligned} u(x) = \int_a^b G(x,y) f(y)dy \end{aligned}\]
が境界条件\(u(a)=u(b)\)を満たすこと、特に\(G(a,y)=G(b,y)=0\)を示しましょう。
\(u_1,u_2\)は境界条件\(u_1(a)=0,u_2(b)=0\)を満たすことから
\[ G(a,y)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(a)u_2(y) && (a\leq a \leq y) \\-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(a) && (y<a \leq b) \end{array} \right. \\ = -\frac{1}{K}u_1(a)u_2(y)\\ =0\]
\[ G(b,y)= \left\{ \begin{array}{lr} -\frac{1}{K}u_1(b)u_2(y) && (a\leq b \leq y) \\-\frac{1}{K}u_1(y)u_2(b) && (y<b \leq b) \end{array} \right.\\= -\frac{1}{K}u_1(y)u_2(b) \\ =0\]
となるので、境界条件を満たします。
方程式を満たすこと
\[\begin{aligned} u(x) = \int_a^b G(x,y) f(y)dy \end{aligned}\]
が方程式を満たすことを示しましょう。
積分の部分を分解すると、
\[\begin{aligned} & \int_a^b G(x,y) f(y)dy \\ &= -\frac{1}{K}[u_2(x)\int_a^x u_1(y)f(y)dy+ u_1(x)\int_x^b u_2(y)f(y)dy ]\end{aligned}\]
となります。これを微分すると、積の微分法則と微積分学の基本定理から、
\[\begin{aligned} &\frac{du}{dx}(x)\\& = -\frac{1}{K}[\frac{du_2}{dx}(x)\int_a^x u_1(y)f(y)dy+u_2(x)u_1(x)f(x) \\&\quad +\frac{du_1}{dx}(x)\int_x^b u_2(y)f(y)dy-u_2(x)u_1(x)f(x) ]\\ &= -\frac{1}{K}[\frac{du_2}{dx}(x)\int_a^x u_1(y)f(y)dy+\frac{du_1}{dx}(x)\int_x^b u_2(y)f(y)dy] \end{aligned}\]
となります。\(p\)をかけて微分すると、\(u_1,u_2\)が同次方程式の解であったことからキャンセルが起こり、
\[\begin{aligned} &\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du}{dx}(x)) +q(x)u(x)\\ &= -\frac{1}{K}[\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du_2}{dx}(x))\int_a^x u_1(y)f(y)dy\\&\quad+p(x)\frac{du_2}{dx}(x)u_1(x)f(x)\\ &\quad+\frac{d}{dx}(p(x) \frac{du_1}{dx}(x))\int_x^b u_2(y)f(y)dy\\&\quad-p(x)\frac{du_2}{dx}(x)u_2(x)f(x) ] \\&\quad -\frac{q(x)}{K} [u_2(x)\int_a^x u_1(y)f(y)dy+ u_1(x)\int_x^b u_2(y)f(y)dy ]\\&= -\frac{1}{K}[p(x)\frac{du_2}{dx}(x)u_1(x)-p(x)\frac{du_1}{dx}(x)u_2(x)]f(x)\\ &=f(x)\end{aligned}\]
が成り立つことが示せました。
今回は解の形\(u(x) = \int_a^b G(x,y) f(y)dy \)を「先に知った」上で解となることを示しましたが、この形を導出することもできます。境界条件を考慮しない方程式の一般解は定数変化法で求められ、その係数を境界条件に合わせて求めればグリーン関数の形に至ります。
以上、グリーン関数について、常微分方程式の場合を簡単にを紹介してきました。
方程式の解を「核となる関数との積分(畳み込み)」として表示するグリーン関数、または基本解の方法は、偏微分方程式、ラプラス方程式の場合にも通用するものです。その簡単なケースとして、まずは常微分方程式の場合を知っておくと良いでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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