三角関数は多項式関数で表せないことの証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、三角関数は多項式関数で表せないことの証明を紹介します。

 

三角関数、例えばサイン\(\sin x\)を、1次関数や2次関数、多項式関数でより簡単に表すことはできないでしょうか?

結論から言えば、それはできません。だからこそ、多項式関数だけでなく三角関数を学ぶわけです。

 

では、できないのはなぜなのかを証明しましょう。

\(\sin x = a_nx^n +a_{n-1}x^{n-1}+\cdots + a_1x+a_0\)と\(n\)次の多項式で表せたとしましょう(背理法)。

代数学の基本定理

\(n\)次の多項式(\(n \geq 1\))

\[ \begin{aligned}P(z)=a_n z^{n}+a_{n-1}z^{n-1}+\cdots+a_1z+a_0\end{aligned} \]

は、複素数\(\mathbb{C}\)の範囲で必ず\(n\)個の解(根)を持つ

によると、\(\sin x\)は多くても\(n\)個の異なる解を持つことになります。

しかし、\(k\)をどんな整数としても、\(\sin (k \pi)=0\)なので、\(x= k\pi\)は解です。例えば\(k=1,\dots,n,n+1\)として選べば、異なる解が\(n+1\)個存在することになります。これは代数学の基本定理が正しいことに矛盾します。よって、サイン\(\sin x\)は多項式関数として表せません。

画像引用:WolframAlpha

無限個の(有限個でない)解を持つような関数は、多項式関数では絶対に表現できないわけですね。

 

コサイン\(\cos x\)についても同様です。コサインが多項式関数で表せたとすると、\(\cos(k\pi + \frac{\pi}{2})=0\)となることに矛盾するので。

\(\tan x\)では、少し議論が異なります。\(\tan x\)が多項式関数\(P(x)\)で表せたとしましょう。\(\lim_{x \nearrow \frac{\pi}{4}}\tan x =\infty\)です。多項式関数は連続関数なので、\(\lim_{x \to \frac{\pi}{4}}= P(\frac{\pi}{4})<\infty\)です。よって極限が一致せず、矛盾が起こりました。

 

以上、三角関数は多項式関数で表せないことの証明を紹介してきました。三角関数は有限個のべき乗関数

\[\sin x = a_nx^n +a_{n-1}x^{n-1}+\cdots + a_1x+a_0\]

では表現できませんが、無限個のべき乗関数(多項式関数の極限)として

\[ \begin{aligned}\sin x&=x- \frac{x^3}{3!}+ \frac{x^5}{5!}- \cdots \\ &= \sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{(2k+1)!}x^{2k+1}\end{aligned} \]

と表せます。これはテイラー展開と呼ばれるものです。

そもそも「多項式そのもの」で三角関数が表現できたらテイラー展開は不要ですが、それが不可能であるという今回の話を知っておくと導入に良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

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