直線が「無限個の点の集まり」とは?

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中学校で学ぶ幾何学、ユークリッド幾何学では、直線は未定義用語(議論の出発点)のひとつです。

しばしば、直線は「無限個の点の集まり」と説明されます。それがどういうことなのか、解説していきましょう。

 

直線は、数の集まり(集合)と同一視して表現することができます。

例えば、実数直線\(\mathbb{R}\)の一部分、長さ1の線分\(I:=[0,1]=\{x \mid 0 \leq x \leq 1\}\)について考えましょう。

この線分は、0以上1以下の点(数)\(x\)の集まりとして定義されています。

線分の構成パーツとしては、例えば0や1という端点が要素として含まれていて、そのことを\(0, 1 \in I\)と表現します。

端点の中点\(\frac{1}{2}\)は、\( 0 \leq \frac{1}{2} \leq 1\)を満たすので、線分に属する点\(\frac{1}{2} \in I\)です。

 

さて、この線分は無限個の点からできていることを示しましょう。

集合の要素の数が無限個とは、有限個ではないことです(定義)。

有限個でないことを示すには、仮に有限個であるとすると、矛盾を導くことを示せば良いです(背理法)。

では、線分\(I\)の要素が有限個であったとしましょう。その個数を\(n\)とします。

このとき、線分に属する\(n+1\)個の点を見つけることができます。\(1, \frac{1}{2},\dots, \frac{1}{n+1}\)です。これらはすべて\(0 \leq x \leq 1\)を満たすので、すべて線分\(I\)を構成する点です。

したがって、\(n\)個の要素を持つ集合に\(n+1\)個の要素があることが導かれ、矛盾です。よって、線分\(I\)は無限個の要素を持つことが示せました。

感覚的に言えば、どんなに短く見える線分でも、\(\frac{1}{n}\)の形の点や、2つの点の間にも必ず点があることを考えると、いくらでも多くの点が含まれていると確認できる、という話です。その状況を、無限個の点の集まり、と表現しているわけです。

 

長さ1の線分ですら、無限個の点が含まれています。数直線全体は、長さ無限の直線と言えますが、それも無限個の点を含んでいます。面積が1の正方形でも、同様に無限個の点を含んでいます。

点の個数(要素の個数)と長さは、一般には別物なので注意しましょう。今回示したのは、長さが有限であっても、線分は無限個の点を含んでいるということです。

長さが0の(大きさがない)線分は点と呼ばれ、それは一点集合のことです。一点は、当然ですが無限個の要素を持つわけではありません。

 

以上、直線が「無限個の点の集まり」とはどういうことか、解説してきました。

実は長さ1の線分でも、自然数全体(可算無限)よりも多くの要素が含まれていること(非可算無限)が知られています。

つまり、散り散りの点を無限個集めただけでは、線分と同じ意味での無限(濃度)になりません。紛らわしいかもしれませんが、線分は少なくとも無限個の点を含んでいますが、バラバラの無限個の点を集めれば線分になるわけではないのです。

集合の要素の個数の「無限」の意味については、濃度の話を知ると良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 



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