点に次元がないとは:線形空間として原点の次元が0であることの証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中学校で学ぶ幾何学、ユークリッド幾何学では、「点」は位置を示す未定義語であり、次元を持たないものとして説明されます。

今回は、次元を持たないことの説明として、部分線形空間として原点の次元が0であることを紹介します。

 

幾何学の舞台となる平面\(\mathbb{R}^2\)は、2次元の線形空間です。そして平面における(原点を通る)直線は、その1次元の部分空間として捉えられます。

1点(原点)\(W= \{(0,0)\}\)について考えましょう。\(W \)は\(\mathbb{R}^2\)の部分集合です。

そして、\(W \)は\(\mathbb{R}^2\)の線形部分空間でもあります。\(W\)の任意の要素の和は、\(x +y = (0,0)+(0,0)= (0,0) \in W\)ですし、スカラー倍は\(\lambda x= \lambda(0,0) = (0,0) \in W\)となるので。

 

さらに、\(W\)の次元は0(基底を持たない)となります。

仮に1個以上の基底\(e_1,\dots, e_n\)を持ったとしましょう。基底は\(W\)の要素でなければならないので、\(e_1 =\cdots =e_n=(0,0)\)です。したがって、\(e_1+\cdots+e_n =(0,0)\)が成り立つので、自明でない線形関係があり、\(e_1,\dots ,e_n\)が線形独立であることに矛盾します。よって、基底を持たないこと、次元が0であること\(\dim W=0\)が示せました。

基底を持たないことは、\(W\)の基底は空集合\(\varnothing\)であるとも表現できます。これは基底の個数を次元と呼ぶことにマッチしていますね。

\(W\)において\((0,0)\)は基底でないことに注意しましょう。\(1(0,0)=(0,0)\)が成り立つので、\((0,0)\)単体でも線形独立ではありません。点は1次元ではないのです。

 

以上、点が次元を持たないことの説明として、部分線形空間として点の次元が0であることを紹介してきました。

次元とは空間的な広がりを表す線形独立なベクトルの個数ですが、一点(原点)は広がりを持つことができません。原点同士を足そうが、定数倍しようが原点であり、広がらないわけですね。それが点は次元を持たないことの意味というわけでした。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

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