どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、等角写像とは何か、その性質について、\(z^2\)を例に紹介します。
複素関数\(f\)が点\(z=z_0\)で等角写像(conformal mapping)であるとは、\(z_0\)で交差する2つの曲線\(C_1,C_2\)のなす角度を\(\theta\)(\(0\leq \theta \leq \pi\))とすると、曲線の像\(f(C_1),f(C_2)\)のなす角度も\(\theta\)と保たれることです。
(詳しく言うと、曲線\(C_1,C_2\)のなす角とは、接ベクトル\(\frac{dC_1}{dt},\frac{dC_2}{dt}\)のなす角のこと。)
角度が等しくなる写像で、等角写像ですね。写像は関数の別名のようなもので、曲線を写すという幾何学的な要素が強いので、写像という語が使われています。
等角写像は、正則関数が多くの点で持っている性質です。
正則関数\(f\)について、\(z_0\)が\(f\)の臨界点でない(\(f^{\prime}(z_0)\neq 0\))ならば、\(f\)は\(z=z_0\)で等角写像となることが知られています。
また、複素関数が等角写像であることは、正則かつ全単射であることと同値であることが知られています。
証明については、「Advanced Engineering Mathematics」や「複素解析 」を参照してください。
今回は、\(f(z)=z^2\)という関数を使って、等角写像の性質を調べてみましょう。
曲線\(C_1,C_2\)のなす角度と言いますが、最も簡単な曲線としては直交する直線が考えられます。
\(x=1\)という直線、\(y=i\)という直線は、直交しています。これらは\(f\)によってどのような曲線に写るのでしょうか。
\(C_1(t)=1+it\)、\(C_2(t)=t+i\)とパラメータ表示しましょう。それらの像は、\(f(C_1(t))= (1+it)^2 =1-t^2 +2ti\)、\(f(C_2(t))= (t+i)^2 =t^2-1 +2ti\)です。実部、虚部を\(u,v\)とすると、\((1-t^2,2t),(t^2-1,2t)\)という曲線になります。これはよく見る放物線\((t,t^2)\)を回転させた曲線です。
網目のように直交する直線をいくつか写すと、次のような図ができあがります。手書きの図は歪みがありますが、こうすると直交した線が直交した線に写っていることがわかりやすいですね。等角写像の説明によく使われる図です。
一般論として、臨界点でない点では、正則関数は等角写像となるのでした。
\(f(z)=z^2\)は正則で、\(f^{\prime}(z)=2z\)なので、\(z=0\)において臨界点を持ちます。そして、\(z=0\)において等角写像ではありません。
\(C_1(t)=it\)、\(C_2(t)=t\)という原点を通る直線を考えます。すると、その像は\(f(C_1(t))=-t^2\)、\(f(C_2(t))=t^2\)です。曲線は接するのみで、交わりません。\(t=0\)では、速度ベクトルがそれぞれ0になり、角度が0です。よって、等角写像でないことがわかりました。
直交座標ではなく、極座標を使って性質を調べるのも便利です。
\(z=re^{i \theta}\)とすると、\(f(z)= r^2 e^{i 2\theta}\)です。つまり、大きさは二乗され、角度は二倍されます。
特に、\(D= \{z \mid x >0,y>0\}\)という第一象限を考えると、それは上半平面\(\mathbb{H}\)に写ります\(f(D)=\{z \mid y>0\}\)。\(f(z)=z^2\)は、\(D\)から\(\mathbb{H}\)への全単射となっています。
逆関数は\(f^{-1}(z)= \sqrt{z}\)ですね。ただし、これは平方根の主値です。
参考:複素関数の主値、多価関数・一価関数とは:平方根、ルートを例に
以上、等角写像とは何か、その性質について、\(z^2\)を例に紹介します。
角度を保ちつつ、全単射に領域を変形させている写像なので、複雑な領域における調和関数(複素ポテンシャル)の問題を、円盤のような単純な領域に落とし込むために使えます。
複素関数を幾何学的に捉えるきっかけとして、今回のような例を通して、具体的に何が起こっているのか観察してみると良いでしょうか。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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