どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、共役調和関数とは何か、定義と例を紹介します。
複素関数\(f\)の実部と虚部を\(f(z) =u(x,y)+i v(x,y)\)と分けて表すことにします。\(f\)が正則関数であることは、その実部と虚部がコーシー・リーマンの方程式
\[ \begin{aligned}\frac{\partial u}{\partial x } (x,y)=\frac{\partial v}{\partial y}(x,y)\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{\partial u}{\partial y } (x,y)= -\frac{\partial v}{\partial x}(x,y)\end{aligned} \]
を満たすことと同値です。偏微分することで、それらはラプラス方程式
\[ \begin{aligned}\Delta u =0\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\Delta v =0\end{aligned} \]
を満たします。ただし、\(\Delta u := u_{xx}+u_{yy}\)という2回偏微分の和です。
一般に、ラプラス方程式を満たす\(C^2\)級の関数を調和関数(harmonic function)と呼びます。例えば、正則関数の実部と虚部は常に調和関数となるわけです。
この話を逆の順序で考えましょう。\(u,v\)という2つの調和関数があったとして、それらがコーシー・リーマンの方程式を満たすとします。それらを使えば、\(f(z) :=u(x,y)+i v(x,y)\)は正則関数となります。
このように、コーシー・リーマンの方程式を満たす調和関数を、\(v\)は\(u\)の共役調和関数(harmonic conjugate function)と呼びます。調和共役関数とも。
名前に共役とつきますが、複素共役\(\overline{a+bi}= a-bi\)とは関係がないことに注意しましょう。ペアになっている調和関数、実数値関数です。
例として、\(u(x,y)=e^{x} \sin y\)としましょう。
\(u_{xx}= u\)、\(u_{yy}= -u\)なので、\(\Delta u = u-u=0\)で、調和関数となっています。その調和共役関数\(v\)を求めましょう。
\(u,v\)がコーシー・リーマンの方程式を満たすことから、
\[ \begin{aligned}u_{x}=v_y\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}u_{y}=-v_x\end{aligned} \]
です。つまり、
\[ \begin{aligned}v_y = e^{x}\sin y \end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}v_x = -e^{x}\cos y\end{aligned} \]
となります。ここで1番目の式を\(y\)について積分すると、
\[ \begin{aligned}v= -e^{x} \cos y+C(x)\end{aligned} \]
です。各\(x\)を決めて\(y\)について積分しているので、積分定数は\(x\)に依存することに注意しましょう。
これを2番目の式に戻せば、
\[ \begin{aligned}-e^{x}\cos y +\frac{dC}{dx}=-e^{x} \cos y\end{aligned} \]
なので、結果として\(C(x)=C_1\)と定数になります。よって、\(u\)の共役調和関数は
\[ \begin{aligned}v=-e^{x}\cos y +C_1\end{aligned} \]
となることがわかりました。
一般に、調和関数の共役調和関数は、実定数分のズレを除いて一意に定まります。
この\(u,v\)からは、
\[ \begin{aligned}f=e^{x}\sin y + i(-e^{x}\cos y +C_1) \\ =-ie^{x}(\cos y +i\sin y)+iC_1\\ =-ie^{x}e^{iy}+iC_1 \\ = -ie^{z}+iC_1\end{aligned} \]
という正則関数が定まります。
以上、共役調和関数とは何か、定義と例を紹介してきました。
端的に言えば、コーシー・リーマンの方程式を満たすような2つの調和関数のことです。
これらは複素ポテンシャルの議論、実平面の話を複素解析的に分析する方法の基礎となっています。複素共役と誤解せず、共役調和関数を扱えるようになると良いでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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