フーリエサイン・コサイン級数とディリクレ・ノイマン境界条件の関係

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、フーリエサイン・コサイン展開とディリクレ・ノイマン境界条件との関係を紹介します。

 



フーリエサイン・コサイン展開

周期\(2L\)の一般的な関数\(f\)のフーリエ級数展開

\[ \begin{aligned}f(x)=a_0 +\sum_{k=1}^\infty (a_k \cos \frac{k\pi x}{L}+b_k \sin \frac{k\pi x}{L})\end{aligned} \]

と表されます。係数\(a_k,b_k\)は\(f\)によって決まるものです。

\(f\)に何らかの条件がついて、\(a_k=0\)となるとき、

\[ \begin{aligned}f(x)= \sum_{k=1}^\infty b_k \sin \frac{k\pi x}{L}\end{aligned} \]

と表されるときは、フーリエサイン級数(Fourier sine series)、フーリエ正弦級数と呼ばれます。

また、\(b_k=0\)となるとき、

\[ \begin{aligned}f(x)=a_0 +\sum _{k=1}^\infty a_k \cos \frac{k\pi x}{L}\end{aligned} \]

と表されるときは、フーリエコサイン級数(Fourier cosine series)、フーリエ余弦級数と呼ばれます。

例えば、\(f\)が奇関数(\(f(-x)=-f(x)\))のときはフーリエサイン級数、\(f\)が偶関数(\(f(-x)=f(x)\))のときはフーリエコサイン級数となることが知られています。

 

ディリクレ・ノイマン境界条件との関係

フーリエサイン・コサイン級数は、偏微分方程式の初期値・境界値問題でも現れます。

 

例えば、1次元の熱方程式波動方程式のディリクレ境界条件を考えてみましょう。つまり、

\[ \begin{aligned}u(x,0)= f(x)\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}u(0,t)=u(L,t)=0\end{aligned} \]

という条件を与えます。

これは変数分離法\(u(x,t)=F(x)G(t)\)によって、

\[ \begin{aligned}F(x)=C_1 \cos \sqrt{\lambda} x +C_2 \sin \sqrt{\lambda} x\end{aligned} \]

という関数の問題に置き換えられます。ここで境界条件\(F(0)=0\)から、\(C_1=0\)となってコサインの項が消えます。

\(F(L)=0\)から、\(\sin \sqrt{\lambda} L=0 \)、\(\sqrt{\lambda}=k\pi\)となり、\(F_k(x)= b_k\sin \frac{k\pi x}{L} \)が得られます。これは(ディリクレ境界条件での)ラプラシアンの固有値問題と同様です。

参考:1次元ラプラシアンの固有値問題の解き方、固有関数とは

\(u(x,t)= \sum_{k=0}^\infty F_n (x)G_n(t)\)と表される解を考えましょう。ただし、\(G_n(0)=1\)となっています。すると、\(u(x,0)=f(x)\)から\(f(x)= \sum_{k=1}^\infty b_k \sin \frac{k\pi x}{L}\)というフーリエサイン展開が得られました。

 

同様に、ノイマン境界条件

\[ \begin{aligned}u(x,0)= f(x)\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}\frac{\partial u}{\partial x}(0,t)=\frac{\partial u}{\partial x}(L,t)=0\end{aligned} \]

という条件を与えます。すると、変数分離法により

\[ \begin{aligned}F(x)=C_1 \cos \sqrt{\lambda} x +C_2 \sin \sqrt{\lambda} x\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}F^{\prime}(x)=-C_1 \sqrt{\lambda} \sin \sqrt{\lambda} x +C_2 \sqrt{\lambda}\cos \sqrt{\lambda} x\end{aligned} \]

となります。境界条件\(F^{\prime}(0)=0\)から、\(C_2=0\)となって、今度はサインの項が消えます。

もう一方の境界条件\(F^{\prime }(L)=0\)から、\(\sin \sqrt{\lambda} L=0 \)、\(\sqrt{\lambda}=k\pi\)となり、\(F_k(x)= a_k\cos \frac{k\pi x}{L} \)が得られます。

\(u(x,t)= \sum_{k=0}^\infty F_n (x)G_n(t)\)、\(G_n(0)=1\)と表される解を考えましょう。ただし、すると、\(u(x,0)=f(x)\)から\(f(x)= a_0+\sum_{k=1}^\infty a_k \cos \frac{k\pi x}{L}\)というフーリエサイン展開が得られました。

 

以上、フーリエサイン・コサイン級数とディリクレ・ノイマン境界条件の関係を紹介してきました。

フーリエサイン・コサイン級数は奇関数や偶関数と関連して学ぶことが多い話ですが、偏微分方程式の境界値問題を解く中でも自然と登場することが伝えられたら嬉しいです。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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