どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、球面におけるラプラス方程式の解き方として、変数分離法を紹介します。
3次元空間におけるラプラス方程式は、
\[ \begin{aligned}\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial z^2}=0\end{aligned} \]
です。2回偏微分の和(ラプラシアン)を球面座標(3次元極座標)
\[ \begin{aligned}x=r\cos \theta \sin \phi \\y = r\sin \theta \sin \phi \\ z= r\cos \phi\end{aligned} \]
を使って表すと(\(\theta\)が\(x,y\)平面における角度であることに注意)、
\[ \begin{aligned}\frac{1}{r^2}(\frac{\partial}{\partial r}(r^2 \frac{\partial u}{\partial r}) +\frac{1}{\sin \phi}\frac{\partial}{\partial \phi} (\sin \phi \frac{\partial u}{\partial \phi}))=0\end{aligned} \]
となることが知られています。ここでは、半径\(R\)の球を考え、
\[ \begin{aligned}u(R,\phi)=f(\phi)\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\lim_{r\to \infty}u(r,\phi)=0\end{aligned} \]
という境界条件を考えましょう。球対称な境界条件を考えているので、解は\(\theta\)に依存しないものと仮定しています。
では、球面におけるラプラス方程式
\[ \begin{aligned}\frac{1}{r^2}(\frac{\partial}{\partial r}(r^2 \frac{\partial u}{\partial r}) +\frac{1}{\sin \phi}\frac{\partial}{\partial \phi} (\sin \phi \frac{\partial u}{\partial \phi}))=0\end{aligned} \]
を変数分離法によって解いていきましょう。
\(u(r,\phi)=G(r)H(\phi)\)と変数分離される解を考えます。\(r^2\)をかけて、方程式に代入すれば
\[ \begin{aligned}\frac{d}{d r}(r^2 \frac{d G}{d r} H(\phi)) =-\frac{1}{\sin \phi}\frac{d}{d \phi} (\sin \phi \frac{d H}{d \phi}G(r))\end{aligned} \]
です。\(u\)として0でない解(非自明解)を考えているので、両辺を\(GH \neq 0\)で割れば、
\[ \begin{aligned}\frac{1}{G}\frac{d}{d r}(r^2 \frac{d G}{d r} ) =-\frac{1}{H\sin \phi}\frac{d}{d \phi} (\sin \phi \frac{d H}{d \phi})\end{aligned} \]
となります。左辺は\(r\)のみの関数、右辺は\(\phi\)のみの関数なので、両辺は定数でなければなりません。その定数(分離定数)を\(\lambda\)と置くと、
\[ \begin{aligned}\frac{d}{d r}(r^2 \frac{d G}{d r} ) =\lambda G\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{1}{\sin \phi}\frac{d}{d \phi} (\sin \phi \frac{d H}{d \phi})+\lambda H=0\end{aligned} \]
という2つの常微分方程式が得られました。
まず、前者は
\[ \begin{aligned}r^2 G^{\prime \prime}+2rG^{\prime}-\lambda G=0\end{aligned} \]
と表せます。これはオイラー・コーシーの微分方程式です。この方程式が簡単な形で解けて、後の都合も良くなるように、\(\lambda = n(n+1)\)のときを考えましょう。すると、解として
\[ \begin{aligned}G_{1n}(r)=r^n\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}G_{2n}(r)=\frac{1}{r^{n+1}}\end{aligned} \]
が得られます。
もう一方の方程式
\[ \begin{aligned}\frac{1}{\sin \phi}\frac{d}{d \phi} (\sin \phi \frac{d H}{d \phi})+\lambda H=0\end{aligned} \]
を解くために、\(w= \cos \phi\)と変数変換します。すると、合成関数の微分から、
\[ \begin{aligned} & \frac{1}{\sin \phi}\frac{d}{d w} (\sin \phi \frac{dH}{dw}\frac{dw}{d\phi}) \frac{dw}{d\phi}+\lambda H \\&= \frac{-\sin \phi}{\sin \phi} \frac{d}{d w} (-(\sin \phi)^2 \frac{dH}{dw})+\lambda H\\&=\frac{d}{d w} ((1-(\cos \phi)^2) \frac{dH}{dw})+\lambda H \\ &= \frac{d}{d w} ((1-w^2 )\frac{dH}{dw})+\lambda H \\&=0 \end{aligned} \]
です。これはルジャンドルの微分方程式として知られ、その解はルジャンドル多項式\(P_n\)となります。
\[ \begin{aligned}H_n =P_n (w)= P_n(\cos \phi)\end{aligned} \]
よって、ラプラス方程式の解としては
\[ \begin{aligned}u_{1n}=A_n r^n P_n(\cos \phi)\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}u_{2n}=B_n \frac{1}{r^{n+1}} P_n(\cos \phi)\end{aligned} \]
が得られました。
これらの解を重ね合わせることで、境界条件を満たす解が構成できます。ですが、長くなるので別の記事にしようと思います。
例えば、\(A_n =1\)、\(r=1\)のとき、\(u_{1,0}+u_{1,1}=1+\cos \phi\)のグラフは次のようになります。
以上、球面におけるラプラス方程式の解き方として、変数分離法を紹介してきました。
この問題を解く中で、オイラー・コーシーの方程式やルジャンドルの微分方程式が登場しました。偏微分方程式を解くためにこうした常微分方程式の知識が必要となること、常微分方程式の内容が偏微分方程式に応用されていることを感じてもらえたら嬉しいです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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