どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、常微分方程式の解き方として最も基本的な変数分離形について、その証明と注意点を紹介します。
変数分離形とは
\[ \begin{aligned}\frac{dx}{dt} = x\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{dx}{dt} = x-x^2\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{dx}{dt} = -x\end{aligned} \]
といった微分方程式は応用で登場しますが、簡単に解くことができることが知られています。
参考:人類は必ず食糧問題に直面する? マルサスの法則と微分方程式、生物の増え方を予測:ロジスティック方程式とは?、ニュートンの冷却法則とは:意味と解き方、空気抵抗があるときの落下運動、終端速度とは:運動方程式を解く
このように、
\[ \begin{aligned}\frac{dx}{dt} = f(x)g(t)\end{aligned} \]
と表せる微分方程式を一般に、変数分離形(separation of variables)と呼びます。関数\(x\)とその変数\(t\)が分かれた形です。
\(f(x) \neq 0\)のとき、両辺をそれで割ると
\[ \begin{aligned}\frac{1}{f(x(t))} \frac{dx}{dt} = g(t)\end{aligned} \]
となり、両辺を\(t\)について(不定)積分すれば
\[ \begin{aligned} \int\frac{1}{f(x(t))} \frac{dx}{dt} dt = \int g(t)dt +C\end{aligned} \]
となります。ここで左辺を、\(x\)を新たな変数として見ましょう。\(x=x(t)\)と置換すると、合成関数の積分(置換積分)の計算として、
\[ \begin{aligned}\int \frac{1}{f(x)} dx = \int \frac{1}{f(x(t))} \frac{dx}{dt} dt\end{aligned} \]
となります。つまり、
\[ \begin{aligned} \int\frac{1}{f(x)} dx = \int g(t)dt +C\end{aligned} \]
が得られました。
この議論は、\(\frac{1}{f(x)},g(t)\)が積分可能(例えば連続)ならば、正当化されますね。
形式的には、
\[ \begin{aligned} \frac{1}{f(x)}dx = g(t)dt\end{aligned} \]
と単に左辺に\(x\)を集め、右辺に\(t\)を集めて、それぞれの変数で積分すれば計算できることがわかります。
変数分離形の注意点
変数分離法によって得られる、積分定数:任意の定数\(C\)を使って表される解を、微分方程式の一般解(general solution)と呼びます。
特定の初期条件\(x(0)=x_0\)を満たす解を探すとき(初期値問題)、そもそも\(f(x(0)) \neq 0\)を満たすかもしれません。そのときは、変数分離法で計算して得られた解が、確かに解であると結論できます。
変数分離法では、\(f(x) \neq 0\)と仮定して解を得ていることに注意しましょう。
ここで、\(f(a)=0\)となる\(x=a\)があるケースを考えます。このとき、\(x(t)=a\)も\(\frac{dx}{dt} = f(x)g(t)\)を満たすことになります。もし微分方程式が解の一意性を満たすならば、\(x(0)=a\)を満たす解は\(x(t)=a\)のみと議論できます。他の解は、\(f(x(t))=0\)を満たさないわけです。
このように、\(f(x)=0\)を満たすような解を、暗黙解(implicit solution)と呼びます。例えば、\(f(x)=x-x^2\)ならば、\(x(t)=0\)、\(x(t)=1\)は暗黙解です。
暗黙解が一般解に含まれないケースもあります。
\[ \begin{aligned}\frac{dx}{dt}=\sqrt{x} \end{aligned} \]
を解いてみましょう。まず、\(x(t)=0\)という暗黙解があります。
\(x\neq 0\)のとき、変数分離法によって
\[ \begin{aligned} \int \frac{1}{\sqrt{x}} dx = \int dt+C\end{aligned} \]
なので、
\[ \begin{aligned}2 \sqrt{x } =t+C\end{aligned} \]
で、
\[ \begin{aligned}x(t) = \frac{1}{4}(t+C)^2\end{aligned} \]
が得られます。これはどのように\(C\)を選んでも、恒等的には0にならない\(x(t) \neq 0\)ので、暗黙解を表現できていません。このように、一般解として表せない解を特異解(singular solution)と呼びます。
多くのケースで解の一意性は保証され、暗黙解は一般解に含まれます。ただし、含まれないケースもあるので、変数分離法で解くときには、暗黙解があるかどうか、チェックしておくと良いでしょう。
以上、常微分方程式の変数分離形による解き方、証明と注意点を紹介してきました。
「変数が分かれていれば、積分によって微分方程式が解ける」という事実は、微分方程式の解法で最も基本的なものです。変数分離に見えない微分方程式でも、変数変換によって変数分離形に帰着できることもあります。
簡単な変数分離形の微分方程式を解けるようになりつつ、\(f(x)=0\)となるケースにも注意を払えるようになると良いですね。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
Pearson (2016-03-02T00:00:00.000Z)
¥4,910
朝倉書店 (2002-01-01T00:00:01Z)
¥2,215 (中古品)
こちらもおすすめ
空気抵抗があるときの落下運動、終端速度とは:運動方程式を解く