微分方程式の解の存在と一意性が成り立たない例

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

微分方程式の初期値問題を考えるときは、解が存在し、かつ条件を満たす解はひとつだけである(一意性)と当然思いたいです。解がなかったり、2つの解を持つような方程式は、応用しづらいでしょう。

しかし、すべての微分方程式において、解の存在と一意性が必ず保証されるわけではありません。今回は、それが破綻する簡単な例を紹介します。

 

解が存在しない例

\[\frac{dx}{dt}= \frac{1}{t},\quad x(0)=0\]

という微分方程式を考えましょう。

方程式を\(t\)について積分すると、\(x(t) = \log |t|+C\)となります。

\[x(t)= \begin{cases}0 & (t=0)\\ \log |t| +C& (t \neq 0)\end{cases}\]

は、\(C\)が何であっても連続関数でなく、したがって微分可能でもありません。つまり、この方程式には解(条件を満たす微分可能な関数)が存在しないことがわかりました。

ちなみに、初期条件\(x(0)=x_0 \)が何であっても、解は存在しません。

 

解の一意性がない例

\[\frac{dx}{dt}=\sqrt{x} ,\quad x(0)=0\]

という方程式を考えましょう。

この方程式には、2つの異なる解が存在します。\(x_1(t) =0\)、\(x_2(t)=\frac{1}{4} t^2\)としましょう。\(x_1\)は確かに解です。\(x_2(0)=0\)であり、\(\frac{dx_2}{dt}= \frac{1}{2}t\)、\(\sqrt{x_2(t)}= \frac{1}{2}{t}\)なので、これも解です。

\(x_1 \neq x_2\)という異なる2つの解が存在するので、一意性を持たないことがわかりました。

 

解と存在の一意性が保証される条件

一般的に表される微分方程式では、次のような条件があれば解の存在と一意性が保証されることが知られています。

\(f(x,t)\)が\(t\)について連続で、\(x\)について一様に(\(t\)に依存せず)リプシッツ連続であるとする。このとき、初期値問題

\[\frac{dx}{dt}= f(x,t) ,\quad x(0)=x_0\]

は、(時間について局所的に)唯一つの解を持つ。

最初に考えた例\(f(x,t)= \frac{1}{t}\)では、と\(t\)について連続でありませんでした。次に考えた例\(f(x,t)= \sqrt{x}\)では、\(x\)についてリプシッツ連続ではありませんでした。

また、たとえ解が存在し一意であったとしても、すべての\(t\)について定義された解とは限らない、発散・爆発する解を持つこともあります。

参考:燃焼反応(藤田方程式)における解の爆発現象とは?

 

以上、微分方程式の解の存在と一意性が成り立たない例を紹介してきました。

応用的には、解ける(解き方が知られていて、解がわかりやすい表示式を持つ)方程式を考えることが多いでしょう。しかし原理的には、すべての微分方程式が必ず解を持ったり、一意性を持つとは限らないのです。解の存在と一意性の議論をする基礎としても、今回のような例を知っておくと良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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