部分集合族(集合系)、べき集合とは何か:具体例と性質

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

僕が大学の数学の学びはじめでよくわからなかった概念のひとつに、部分集合族というものがあります。開集合系やら\(\sigma\)-加法族やらで登場する。

今回は、部分集合族(集合系)、べき集合とは何かについて、簡単な例や性質を紹介します。

 

部分集合族、べき集合とは何か

簡単な例と定義

ごく簡単な例として、\(X=\{1,2\}\)という有限集合を全体集合として考えましょう。

ひとつ集合\(X\)が決まれば、それに対する部分集合を考えることができます。例えば、\(\{1\}\)や\(\{2\}\)といった1点集合、\(X=\{1,2\}\)という全体集合、空集合\(\varnothing\)は部分集合です。

これらの部分集合を集めた集合を考えましょう。例えば、\(\mathcal{A} :=\{\{1\},\{1,2\}\}\)、\(\mathcal{B}:=\{\phi ,X\}\)といったように。

このように、ある集合\(X\)の部分集合からなる集合、部分集合を要素として含む集合\(A\)を\(X\)の部分集合族(family of subsets)と呼びます。

\(\mathcal{A} ,\mathcal{B}\)は部分集合族です。部分集合族を考えるときは、その要素である集合を大文字で\(A\)といったように表すことが多いので、\(\mathcal {A},\mathcal{B}\)、\(\mathscr{A},\mathscr{B}\)、\(\mathfrak{A},\mathfrak{B}\)のような花文字(筆記体)、ドイツ文字を用いることが多いでしょう。この文字の標準的な読み方はわかりませんが、筆記体のA、花文字A、カリグラフィックA、スクリプトA、フラクトゥールAなどと呼ぶでしょうか。

 

特に、集合\(X\)の部分集合すべてを集めた集合を、\(X\)のべき集合(冪集合 power set)と呼びます。

\[\mathcal{P}(X) := \{ A \mid A \subset X\}\]

べき集合は、\(\mathfrak{P}(X),2^{X}\)と表すこともあります(後に見るように、その要素の個数は2のべき乗となる)。

\(X=\{1,2\}\)ならば、\(\mathcal {P}(X) = \{\varnothing ,\{1\},\{2\},X\}\)と具体的に表せます。その要素の個数は4つですね。

 

べき集合という用語を使うと、部分集合に関する概念を「上から眺める」ことができます。

\(A \subset X \)(\(A\)が\(X\)の部分集合であること)は、\(A \in \mathcal{P}(X)\)(\(A\)がべき集合\(\mathcal{P}(X)\)の要素であること)と同値です。

また、\(\mathcal {A}\)が\(X\)の部分集合族であるとは、\(\mathcal {A} \subset \mathcal{P}(X)\)(\(\mathcal {A} \)がべき集合\(\mathcal{P}(X)\)の部分集合であること)と言い換えられます。

 

集合族を考えるときは、多重の入れ子になった集合を考えています。\(\mathcal{A} :=\{\{1\},\{1,2\}\}\)において、\(A:=\{1\}\)や\(B:=\{1,2\}\)は集合\(\mathcal{A}\)の要素です。一方、\(1,2\)は集合\(B\)の要素です。また、\(A\)のみを要素として含む一点集合\(\{A\}\)は、\(\mathcal{A} \)の部分集合です。

  • 正しい
    • \(A \in \mathcal{A}\),\(B \in \mathcal{A}\)
    • \(1 \in B\),\(2 \in B\)
    • \(\{A\} \subset \mathcal{A}\)
  • (ありがちな)間違い
    • \(A \subset \mathcal{A}\),\(B \subset \mathcal{A}\) (?A,Bは集合だから、部分集合?)
    • \(1 \in \mathcal{A}\),\(2 \in \mathcal{A}\) (?1,2は中身に書いてあるから含んでいる?)

集合と要素というのは相対的な言葉なので、「要素」「部分集合」という言葉を聞いたら、何の要素なのか、何の部分集合なのかを意識しましょう。

 

数学では、しばしば集合が持つ性質を調べたいことがあります。例えば、平面の点の集まり=部分集合は何らかの図形を表すと捉えられますが、その集合が開いているか:開集合かどうか、という性質を考えましょう。このとき、\(A\)が開集合であるという性質は、集合族の観点からは次のように言い換えられます。\(\mathcal{O}\)を開集合全体のなす集合(部分集合族)とすると、\(A \in \mathcal{O}\)であると。

「集合\(A\)は部分集合であって、何らかの性質を満たす」ことは、\(A \in \mathcal{A}\)と表せます。「全体集合とその部分集合」という視点と「部分集合族とその要素(部分集合)」という視点の行き来は、慣れるまで難しいかもしれませんが、とても便利です。

参考:ユークリッド空間の開集合、閉集合、開球、近傍とは何か?ユークリッド空間における開集合、閉集合の性質:実数の区間を例に

 

べき集合の性質

べき集合の性質には、どんなものがあるでしょうか。

「\(A \subset X \)と\(A \in \mathcal{P}(X)\)が同値」は基本的ですね。これがべき集合の定義です。

べき集合について考えようとすると、空集合と全体集合が必ず含まれることに気づくでしょう。集合\(X\)を全体集合とするとき、空集合\(\varnothing\)は常に部分集合ですし(見逃さないように!)、全体集合\(X\)それ自身も部分集合です。したがって、\(\varnothing \in \mathcal{P}(X)\)、\(X  \in \mathcal{P}(X)\)となります。

 

ほかに気づくのは、\(X\)が有限集合のときの、べき集合\(\mathcal{P}(X)\)の要素の個数です。

\(X= \varnothing\)のときは、\(\mathcal {P}(X)=\{\varnothing\}\)で要素数は1個。\(X= \{1\}\)のときは、\(\mathcal {P}(X)=\{\varnothing,X\}\)で要素数は2個。\(X\)が2点集合のときは、さきほど見たように要素数は4個になりました。

\(X\)の要素の個数を\(\mathrm{card}{X}\)と表すと、\(\mathrm{card}{\mathcal{P}(X)} =2^{\mathrm{card}{X}}\)が成り立ちます。

直観的に言えば、部分集合をひとつ決めることは\(X\)の各要素\(k\)それぞれが含むか含まないか決めるということで、それぞれ2パターンなので\(2^{\mathrm{card}{X}}\)だけある、ということです。

\(\mathrm{card}{X}=n\)に関する帰納法で証明しましょう。\(n=0\)のときは\(2^{0}=1\)となって正しいです。\(n=k\)のとき正しい、\(\mathrm{card}{\mathcal{P}(\{1,\dots,k\})} =2^k\)と仮定します。\(X=\{1,2,\dots,k,k+1\}\)のケースを考えましょう。\(X\)の任意の部分集合は、\(k+1\)を含むか含まないかに分かれます。\(k+1\)を含まない\(X\)の部分集合の個数は、仮定より\(2^k\)です。\(k+1\)を含む部分集合は、\(\{k+1\}\cup \mathcal{P}(\{1,\dots,k\})\)と表せます。したがって、\(k+1\)を含む部分集合の個数は、結局\(\{1,\dots,k\}\)の部分集合を数える問題になり、\(2^k\)個あります。以上を合計して、\(\mathrm{card}{\mathcal{P}(\{1,\dots,k,k+1\})} =2\cdot2^k= 2^{k+1}\)がわかりました。

 

\(X\)が有限集合とは限らない、無限のケースを含んだ一般の集合としましょう。要素は濃度として一般化されます。このとき、

\[\mathrm{card}(X) < \mathrm{card} (\mathcal{P}(X))\]

が成り立ちます。証明は松坂「集合・位相入門」2章を参照。

べき集合を考えると、その濃度は元の濃度より真に大きくなる、という主張です。例えば、自然数の集合\(\mathbb{N}\)は可算集合ですが、その部分集合全体\(\mathrm{card} (\mathcal{P}(\mathbb{N}))\)は非可算集合であることがわかりますね(特に、実数の濃度に等しいことが知られている)。ある集合の部分集合というものは、いかに多いものかがうかがえます。

参考:無限集合の濃度とは? 写像の全単射、可算無限、カントールの対角線論法

 

良い性質を持った部分集合族

集合族という概念は、さらにその集合族に良い条件を課して使うことが多いです。そのとき集合系という呼び方をすることがあります。(集合族と呼ぶか集合系と呼ぶかは慣習の問題であり、数学的な意味の違いはないと見て良いでしょう。)

ここでは、位相空間論における開集合系、測度論における\(\sigma\)-加法族という性質を簡単に述べ、触ってみましょう。

\(X\)を集合、\(\mathcal{O} \subset \mathcal{P}(X)\)とする。

  • 空集合、全体:\(\varnothing \in \mathcal{O}\)、\(X \in \mathcal{O}\)
  • 有限個の共通部分について閉じている:\(O_1,O_2 \in \mathcal{O}\)ならば、\(O_1 \cap O_2 \in \mathcal{O}\)
  • 一般の和について閉じている:任意の集合族を添字付けて\((O_\lambda)_{\lambda \in \Lambda}\)と表すとき、\(\bigcup_{\lambda \in \Lambda} O_\lambda \in \mathcal{O}\)

これらの条件を満たすとき、\(\mathcal{O}\)を\(X\)の開集合系(open sets , または位相 topology)と呼ぶ。

参考:集合族の扱い方(和集合・共通部分):実数の区間を例に

\(X=\{1,2\}\)として考えてみます。\(\mathcal{A}:=\{\varnothing, X\}\)は開集合系です。確かめてみましょう。まず、空集合と全体を含んでいます。また、共通部分は\(\varnothing \cap X = \varnothing \in \mathcal{A}\)です。和集合は、\(\varnothing \cup X = X \in \mathcal{A}\)です。以上によって\(\mathcal {A}\)が開集合系の定義を満たすことがわかりました。(一般に、\(X\)がどんな集合であっても、\(\{\varnothing, X\}\)は開集合系の定義を満たす。これを密着位相という。)

\(\mathcal{B}:=\mathcal{P}(X)\)と置いても、これも開集合系の定義を満たします。空集合と全体を含んでいることは確かめました。どんな部分集合\(O_1,O_2\)の共通部分\(O_1 \cap O_2\)を考えても、それは\(X\)の部分集合なので、\(\mathcal{B}=\mathcal{P}(X)\)に属すため、共通部分について閉じています。和集合についても同様です。(一般に、\(X\)がどんな集合であっても、\(\mathcal{P}(X)\)は開集合系の定義を満たす。これを離散位相という。)

開集合系の定義を満たさないような集合族を考えてみましょう。2点集合だとつまらない例しかないので、\(X=\{1,2,3\}\)とします。\(\mathcal{C}:=\{\varnothing,\{1\},\{1,2\},\{2,3\},X\}\)は開集合系ではありません。なぜなら、\(\{1,2\},\{2,3\} \in \mathcal{C}\)ですが、\( \{1,2\}\cap\{2,3\}=\{2\} \not \in \mathcal{C}\)となり、共通部分について閉じていないので。

 

もう一方の概念、\(\sigma\)-加法族とは次のようなものです。

\(X\)を集合、\(\mathcal{F} \subset \mathcal{P}(X)\)とする。

  • 空集合:\(\varnothing \in \mathcal{F}\)
  • 補集合について閉じている:\(F \in \mathcal{F}\)ならば、\(F^c:= X\setminus F  \in \mathcal{F}\)
  • 可算個の和について閉じている:\((F_n)_{n \in \mathbb{N}}\)ならば、\(\bigcup_{n \in \mathbb{N}} F_n \in \mathcal{F}\)

これらの条件を満たすとき、\(\mathcal{F}\)を\(X\)の\(\sigma\)-加法族(sigma algebra)と呼ぶ。\(\mathcal{F}\)の要素を可測集合という。

\(X=\{1,2,3\}\)として考えてみます。\(\mathcal{A}:=\{\varnothing, X\}\)や\(\mathcal{B}:=\mathcal{P}(X)\)は\(\sigma\)-加法族の定義を満たします(確かめてみてください)。

\(\mathcal{C}:=\{\varnothing,\{1\},\{1,2\},\{2,3\},X\}\)は、\(\sigma\)-加法族の定義を満たしません。なぜなら、\(X \setminus \{1,2\} =\{3\}\not \in \mathcal{C}\)で、補集合について閉じていないからです。(\(\mathcal{C}\)は開集合の定義も満たさなかった)

\(\mathcal{D}:=\{\varnothing,\{1\},X\}\)を考えると、\(\sigma\)-加法族の定義を満たしません。なぜなら、\(X \setminus \{1\} =\{2,3\}\not \in \mathcal{D}\)なので。一方で、開集合の定義は満たします。\(\{1\}\)と\(\varnothing, X\)の和集合、共通部分を考えると、結果はどれも\(\varnothing, X\)になるので。

有限集合の例では、開集合系と\(\sigma\)-加法族の概念は結構似ているように見えますね(\(\sigma\)-加法族ならば開集合系になる、逆は一般には成り立たない)。本質的に違いが出てくるのは無限集合を考えるときですが、集合族の話から離れるので、ここでは保留しておくことにします。

 

無限個の部分集合族の例

扱った例が有限個の部分集合族ばかりだったので、無限個となるような例を最後に紹介します。

実数\(\mathbb{R}\)における開集合全体からなる集合を、\(\mathcal{O}(\mathbb{R})\)と表すことにしましょう。つまり、\(O \in \mathcal{O}(\mathbb{R})\)とは、任意の\(a \in O\)に対して\(B(a,r) :=\{x \in \mathbb{R} \mid |x-a|<r\}\)となるような\(r>0\)が存在することです。

参考:ユークリッド空間の開集合、閉集合、開球、近傍とは何か?

\(\mathcal{O}(\mathbb{R})\)は無限集合(有限集合でない)です。

例えば、\(B(0,1),B(1,1),B(2,1),\dots\)という開球の列を考えましょう。これらは開集合です。そして無限に作れますね。\(B(a,1)\)という開球を考えて、中心\(a\)を動かせば、少なくとも実数と同じだけ多いことはわかります。

中心となる点を固定したとしても、無限にたくさんの開集合があります。中心を\(0\)として、\(B(0,r)\)で半径\(r\)を動かせば良いのです。

ある点\(a\)を含む開集合を含むような集合\(N\)を\(a\)の近傍と呼び、\(a\)の近傍全体からなる集合\(\mathcal{N}(a)\)を\(a\)の近傍系と呼びます。

実数\(\mathbb{R}\)において(普通の)開集合を考えるとき、\(B(0,r)\)を考えれば、原点\(0\)の近傍系は無限集合であることがわかります。中心がどこであっても同じですね。

 

以上、部分集合族、べき集合族とは何か、具体例や性質を紹介してきました。

大学数学を学び進めると、一定の条件を満たす部分集合からなる集合:部分集合族を扱うことになります。具体例を通して部分集合族を使った視点に慣れ、適切なイメージを持ちながら操作できるようになってみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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