線形微分方程式はなぜ指数関数e^{λt}と仮定して解いて良いか

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

常微分方程式のうち、線形微分方程式を解くときには、解を\(u(t)= e^{\lambda t}\)と仮定して解くことが多いです。

なぜそのように仮定して良いのでしょうか。他に解の可能性はないのでしょうか。この記事ではその疑問に答えます。

 

線形微分方程式とは

まず基本的な知識として、

\[\frac{du}{dt} = ku(t)\]

の解は、\(u(t)= C e^{kt}\)と指数関数で表されることを確認しておきましょう。微分しても変わらない関数として、指数関数があります。\(\exp (x) := e^x\)が微分方程式を解くときによく登場すること自体には、不思議はありませんよね。

参考:微分方程式の解でなぜ指数関数(exp・ネイピア数)が現れるか

確かに、\(u(t)= C e^{kt}\)はこの方程式の解ですが、それがすべての解であるとどうして言えるのでしょうか?

以降、方程式の解を\(u(t)\)と表しますが、\(y(x)\)や\(x(t)\)といった文字で読み替えても全く同じです。

 

もう少し一般的な常微分方程式、2階の線形微分方程式について考えましょう。関数\(u(t)\)について、それは

\[\frac{d^2 u}{dt^2} + a(t) \frac{d u}{dt}+b(t) u=0\]

と表されます。係数として登場する関数\(a(t),b(t)\)は連続と仮定します。(今回は簡単のため、0次の項に何も登場しない同次方程式について考えています。)

例えば簡単な運動方程式は、このクラスに分類される方程式です。物体の落下やバネによる運動など。また、熱伝導方程式という偏微分方程式の簡単なケースを解くときにも登場し、重要なクラスと言えます。

\(a(t),b(t)\)が定数のときの具体的な解き方としては、\(u(t)= e^{\lambda t }\)と置いて得られる特性方程式\(\lambda ^2 + a\lambda +b =0\)を利用すれば良いです。

詳しくは:2階線形常微分方程式を学ぶ意味:熱方程式への応用を例に

確かにこの手順で解けはするのですが、どうしてそれで良いのか、もう少し線形方程式に関する理解を深めていきましょう。

 

線形性

そもそもこの方程式がなぜ線形であると呼ばれるかというと、

\(u_1(t),u_2(t)\)を方程式の解とすると、(\(C_1,C_2\)を任意に与えられた定数として)その線形結合\(C_1 u_1(t)+ C_2 u_2(t)\)も解になる

という性質があるからです。これを解の重ね合わせの原理(principle of superposition)と言い、それが成り立つ微分方程式を線形微分方程式(linear differential equation)と呼びます。

確かめてみましょう。\(u_1(t),u_2(t)\)を方程式の解とします。このとき、それらの線形結合\(C_1 u_1(t)+ C_2 u_2(t)\)が解となることを示しましょう。

\[\begin{eqnarray}&& \frac{d^2}{dt^2} (C_1 u_1(t)+ C_2 u_2(t))\\ &&+ a \frac{d }{dt}(C_1 u_1(t)+ C_2 u_2(t)) \\&& +b (C_1 u_1(t)+ C_2 u_2(t)) \\ &=&C_1 \frac{d^2}{dt^2}  u_1+C_2 \frac{d^2}{dt^2}  u_2 \\  &&+ a C_1\frac{d }{dt}u_1+aC_2 \frac{d }{dt} u_2 \\ &&+b C_1 u_1+b C_2 u_2\\ &=& C_1( \frac{d^2}{dt^2}  u_1+a \frac{d }{dt}u_1 +b  u_1) \\ &&+C_2( \frac{d^2}{dt^2}  u_2+a \frac{d }{dt}u_2 +b  u_2) \\ &=&0 \end{eqnarray}\]

と確かに方程式を満たすことがわかりました。関数の和やスカラー倍の微分は、個別に計算できる(線形性がある)ことに注意しましょう。

参考:連続関数、可積分関数のなす線形空間、微分と積分の線形性とは

 

解の存在と一意性

線形微分方程式の一般的な性質・定理として、初期値問題の解の存在と一意性(existence and uniqueness of initial value problem)が保証されています。どのような初期値\(C_0,C_1\)に対しても、

\[\frac{d^2 u}{dt^2} + a (t)\frac{d u}{dt}+b(t) u=0\]

\[u(0)=C_0,\frac{du}{dt}(0)=C_1\]

を満たす解が、ただひとつ存在します。

 

(今回は、2階で同次の線形方程式に限定して考えています。しかし、解の存在と一意性は、\(n\)階の変数係数、非同次の線形方程式についても成り立つものです。)

一般には、非線形な微分方程式では解の一意性が成り立たないこともあります。ですが、線形方程式ではそういう心配はしなくて良いのです。詳しくは、柳田・栄「常微分方程式論」や「Differential Equations and Boundary Value Problems」を参照。

ここでは、解の存在と一意性を一般論として認めて進んでいきましょう。

 

関数の線形独立性

解の存在と一意性があること」と線形代数学の考え方が、指数関数\(e^{\lambda t}\)として得られる解が方程式の「すべての」解を捉えることを保証してくれます。

 

すべての解を捉えるために、まず関数の線形独立性という考え方を導入します。

2階の微分方程式ならば、解\(u\)は2回微分可能であると仮定して考えています。

\[C^2(\mathbb{R}) = \{u:\mathbb{R}\to\mathbb{R} \mid u は 2 回微分可能で、\frac{d^2 u}{dt^2}は連続\}\]

という関数のなす集合(関数のなす線形空間=関数空間)を考えましょう。

参考:連続関数、可積分関数のなす線形空間、微分と積分の線形性とは

2つの関数\(u_1, u_2 \in C^2 (\mathbb{R})\)が線形独立であるとは、すべての\(C_1,C_2\)、\(t\)に対して\(C_1u_1(t) +C_2 u_2(t) =0\)が成り立つならば、\(C_1=C_2=0\)が成り立つことです。

その否定として、ある定数\(C_1,C_2  \neq 0\)によって、すべての\(t\)について\(C_1 u_1(t)+C_2 u_2 (t) =0\)と表せるとき、それらの関数を線形従属と呼びます。

例えば、\(u_1(t)=e^t,u_2 (t) =3 e^t\)は線形従属です。\(1 u_1 (t) +(\frac{-1}{3}) u_2 (t) =0\)が常に成り立ちますね。これらは線形微分方程式の解として、本質的に異なるものでなく、一方が一方の定数倍として表されるものです。

別の例として、\(u_1(t)=e^t,u_2 (t) = e^{2t}\)は線形独立です。\(C_1e^t +C_2 e^{2t}=0\)と仮定しましょう。\(t=0,1\)のときの等式として、\(C_1+C_2=0\)、\(C_1 e+ C_2 e^2 =0\)が得られます。前者を後者に代入すれば、\(C_1 e -C_1 e^2 =0\)で、\(C_1(e-e^2 )=0\)。\(e- e^2 \neq 0\)なので、\(C_1 =0\)が得られ、\(C_2 =0\)にもなります。よって線形独立ですね。

他にも、\(e^t , t e^t\)や、\(\sin t , \cos t \)といった関数たちも線形独立であることが簡単に確かめられます。

詳しくは述べませんが、ロンスキー行列式(ロンスキアン)\(W(u_1,u_2 )(t):= \det  \begin{pmatrix} u_1& u_2\\ \frac{du_1}{dt}&\frac{du_2}{dt} \end{pmatrix}\)と呼ばれる行列式は、線形微分方程式の解が線形独立かどうか確かめるのに役立つことが知られています。

 

基本解と解空間の次元

線形微分方程式

\[\frac{d^2 u}{dt^2} + a (t) \frac{d u}{dt}+b (t) u=0\]

を満たす線形独立な解を、基本解(fundamental solution)と呼びます。

この微分方程式のすべての解(一般解)は、必ず基本解の線形結合として表されます。だから、\(e^{\lambda t}\)の形の(基本)解を見つけられたら、一般的な解が得られたことになるわけです。

 

特に、2階線形微分方程式では、すべての解は2つの基本解の線形結合として表せます。

なぜでしょうか。解の存在と一意性を利用します。

\[\frac{d^2 u_1}{dt^2} + a (t) \frac{d u_1}{dt}+b (t) u_1=0\]

\[u_1(0)=1,\frac{du_1}{dt}(0)=0\]

\[\frac{d^2 u_2}{dt^2} + a (t)\frac{d u_2}{dt}+b (t) u_2=0\]

\[u_2(0)=0,\frac{du_2}{dt}(0)=1\]

を満たす解\(u_1,u_2\)が存在します。

これらの解が線形独立であることを確かめましょう。仮に、\(C_1 u_1 (t)+C_2 u_2 (t)=0\)となったとします。\(t\)で微分すれば、\(C_1 \frac{du_1}{dt} (t)+C_2 \frac{du_2}{dt} (t)=0\)です。それぞれの式で\(t=0\)のときを考えると、初期条件を満たすことから\(C_1 \cdot 1 +C_2 \cdot 0 =0\)、\(C_1 \cdot 0 +C_2 \cdot 1 =0\)が得られ、線形独立であることがわかりました。

つまり、\(u_1,u_2\)という基本解が常に存在します。

さらに、\(u(t)\)を

\[\frac{d^2 u}{dt^2} + a (t)\frac{d u}{dt}+b (t) u=0\]

\[u(0)=C_0,\frac{du}{dt}(0)=C_1\]

を満たす一般的な解としましょう。これは基本解の線形結合として表せます。

\(v(t) := C_0 u_1 (t) + C_1 u_2 (t)\)と置くと、\(v(0) =C_0 u_1 (0) + C_1 u_2 (0) =C_0 \)で、\(\frac{dv}{dt} (0) =C_0 \frac{du_1}{dt} (0) + C_1 \frac{du_2}{dt} (0) =C_2 \)です。つまり、\(u,v\)は同じ初期値問題の解です。よって、線形方程式の解の一意性から、\(u(t) = v(t)=C_0 u_1 (t) + C_1 u_2 (t)\)と表されます。

 

2階線形微分方程式の一般解は、2つの基本解の線形結合で表される。この事実は、基本解は解空間の基底である、と言いかえられます。

\(S \)を線形微分方程式\(\frac{d^2 u}{dt^2} + a (t) \frac{d u}{dt}+b (t) u=0\)の解のなす集合としましょう。この方程式は線形であることは確かめましたが、それは\(S\)が線形空間であることを意味します。

参考:抽象ベクトル空間・線形空間の具体例R^N:順序対と直積集合

特に、\(S \subset C^2 (\mathbb{R})\)であり、\(S\)は\(C^2 (\mathbb{R})\)の部分空間です。線形微分方程式の解の集合がなす線形空間\(S\)は、微分方程式の解空間(solution space)と呼ばれます。

さきほど得た基本解\(u_1,u_2\)は、\(u_1 ,u_2 \in S\)であり、\(S\)の基底となっています。\(u_1,u_2\)が\(S\)の基底であるとは、線形独立であり、任意の\(u \in S\)を\(u=C_1u_1+C_2 u_2\)と表せることでした。

参考:実数空間、線形結合、線形部分空間、次元とは何か:2次元を例に

線形空間において、基底の個数はその空間の次元と呼ばれます。つまり、2階線形微分方程式の解空間\(S\)は、2次元であることがわかりました。一般解には必ず2つの任意定数\(C_1,C_2\)が現れていますが、そうした自由度を表しているのが解空間の次元です。

(一般に、\(n\)階の線形微分方程式の解空間は\(n\)次元となります。)

 

以上、線形微分方程式を解くときに\(e^{\lambda t}\)といった指数関数をなぜ使うのか、それで十分なのはなぜか紹介してきました。

その理解には、線形微分方程式の解の存在と一意性や、基本解といった線形代数的な考え方が役立ちます。

理論的には、2階線形微分方程式には必ず2つの基本解があり、一般解は必ずそれらの線形結合で表されることを見ました。特に定数係数の線形微分方程式では、\(e^{\lambda t}\)の形の解を考えることで、(特性方程式によって)2つの基本解が見つかります。解空間は2次元であり、2つの線形独立な解さえ見つけられれば、それらで一般の解が必ず表せるわけですね。

今回の話が、微分方程式をただ解くだけでなく、どうしてきちんと解けているかについて、納得する材料となれば嬉しいです。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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