「ベクトルが面白いほどわかる」本レビュー・使い方

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

大学数学に興味があるけれど、高校の数学、ベクトルに苦手意識がある。勉強し直してみたい。

今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「坂田アキラの ベクトルが面白いほどわかる本 」を紹介します。

 



どんな本か

ベクトルが面白いほどわかる本」は、高校数学のベクトルを学びたい人向けの参考書です。28の単元(テーマ)があり、それぞれに例や解説、問題の解き方が載っています。

著者はN予備校などの予備校講師。YouTubeを見ればわかりますが、クセは強いです。

引用:No.47

文中にも!!の強調表示が多様されていたり、謎のキャラが入っていたりしますが、解説はきちんとしています。色味のない参考書よりも強弱があるので、とっつきやすいかもしれません。

ベクトルに関する問題が広くカバーされていますが、難易度はバラバラです。問題ごとに「基礎の基礎」「基礎」「標準」「ちょいムズ」「モロ難」と、難易度の目安が示されています。苦手意識のある人は、基礎の内容だけ最初に読んでみるのが良いでしょう。

例年、センター試験の数学II・数学Bではベクトルは頻出の分野。2019年度も出題されています。本書の問題が理解できれば、困ることはないでしょう。

 

目次

  1. 平面上のベクトルのお話
  2. ベクトルの演算のお話
  3. くだらない計算問題たち
  4. ベクトルの並行条件
  5. ”ベクトルの一次独立”について
  6. ベクトルの成分のお話
  7. ベクトルの成分表示がらみの応用問題!!
  8. 内分&外分&重心のお話
  9. 平面上のベクトルに慣れよう!!
  10. OP=(1-t)OA+tOB のお話ー前編ー
  11. OP=(1-t)OA+tOB のお話ー後編ー
  12. αPA+βPB+γPC=0シリーズ
  13. 位置ベクトルの意味
  14. ベクトルの内積とは何ぞや!?
  15. 垂直といえば内積が0!!
  16. ベクトルの成分と内積の関係
  17. ベクトルの終点の存在範囲ー前編ー
  18. ベクトルの終点の存在範囲ー後編ー
  19. 空間ベクトルもコツは同じ
  20. 同一平面上にない3つのベクトルが集まれば
  21. 空間の座標と空間のベクトル
  22. 空間ベクトルにも内積のお話はあります!!
  23. 同一平面上にあるための条件とは…??
  24. 平面に垂直な直線とは…!?
  25. 直線のベクトル方程式
  26. 円と球のベクトル方程式
  27. 球面の方程式のお話
  28. 空間における直線のふるまい

 

使い方

ここからは、必ずしも受験勉強を目的とせず、高校の範囲のベクトルを復習したい方向けの、僕なりのこの本の読み方を提示してみます。

正直、高校時代ベクトルの分野は苦手でした。今思うに、次の2つが原因でした。

  1. 2種のベクトルの定義(有向線分としてのベクトルと、座標としてのベクトルの話題)が入り混じっている
  2. ベクトルの一般的な性質の話と、その幾何学的な問題への応用とが混ざっている

結局大学に入ってから学ぶ線形代数学では、ベクトルはまず位置ベクトル、座標としてとらえます。そこから有向線分としてのベクトルの性質も導けます。自分の場合、「ベクトルとは大きさと向きを持ったものである」と最初に言われて、それがずっと理解を妨げていました。

参考:線形代数学「ベクトル」を高校数学レベルで解説

本書でまず位置ベクトルについて学べるのは

  • 6,7 ベクトルの成分のお話
  • 13 位置ベクトルの意味
  • 21 空間の座標と空間のベクトル

です。ついで重要なのが、ベクトルの内積を理解することです。ベクトル\(a=(a_1,a_2),b=(b_1,b_2)\)の内積は、

\[ \begin{aligned}a\cdot b = a_1b_1 + a_2 b_2\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}a\cdot b =|a| |b| \cos \theta \end{aligned} \]

と2種類の計算方法があります(\(\theta\)は2つのベクトルがなす角)。これはめちゃくちゃ大事な性質。両者が一致する理由も本書にかかれているので、ぜひ追ってみてください。

  • 16 ベクトルの成分と内積の関係
  • 14 ベクトルの内積とは何ぞや!?
  • 15 垂直といえば内積が0!!
  • 22 空間ベクトルにも内積のお話はあります!!

まずここまでに挙げた内容を理解するのが、ベクトルの基本だと思います。そこから先は、必要そうな問題の書かれたテーマに取り組んでみてください。

(内積の話には、三角比・三角関数が登場しています。本書でも軽く紹介はされていますが、不安があれば別の本で復習しましょう。)

参考:高校数学のやり直しに「基本から身につける数学1・Aの計算力」レビュー

高校数学のベクトルという分野をまとめましょう。まず、点や直線をベクトル(数の組)として表す。ベクトルの間で内積と呼ばれる量が成分計算できますが、それが0になるとき、2つのベクトルは直交するという幾何学的な性質が導けます。さらにそこから、三角形の面積を求めたり、立体においてある面の垂線の方程式を求めたりできるわけです。

 

大学の数学、線形代数学を学びたいならば、上で抜粋したテーマだけ知っていれば十分かと思います。

ストラング「線形代数イントロダクション」は高校レベルのベクトル(2次元)から解説された良い教科書です。1章では、ベクトルと内積についての話があり、高校と全く同レベルです。高校数学では扱われたり扱われなかったりする行列、ベクトルや行列を何のために学ぶのかという問いは、きっと解消されるでしょう。

参考:なぜ線形代数を学ぶ? Googleのページランクに使われている固有値・固有ベクトルの考え方

 

僕は「坂田アキラの ベクトルが面白いほどわかる本 」を、Kindleの読み放題サービスKindle Unlimitedで読みました。登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。ベクトルの要点を掴み、問題を解けるようになりましょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

世界標準MIT教科書 ストラング:線形代数イントロダクション
ギルバート ストラング(著), 松崎 公紀(翻訳), 新妻 弘(翻訳)
近代科学社 (2015-12-22T00:00:01Z)
5つ星のうち4.5
¥8,800

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