マイナスかけるマイナスはなぜプラスになるのか:分配法則から

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中学校の数学で、マイナスの数かけるマイナスの数イコールプラスの数

\[ \begin{aligned}(-3)\times(-2) =6\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}(-1)\times(-1) =1\end{aligned} \]

を習うと思います。なぜこれが成り立つのではしょうか? 数直線を使った感覚的な説明もありますが、今回は、分配法則を使ってこれを証明してみます。

 



マイナスかけるマイナス=プラスの理由

マイナスの数、分配法則

まず、マイナスの数の定義と性質を確認しましょう。

自然数(正の整数)に対して、分配法則が成り立つことから出発します。

\[ \begin{aligned}a\times (b +c) = a\times b +a \times c\end{aligned} \]

これは掛け算の定義から示せる性質です。\(a\)を\(b+c\)回足したものは、\(a\)を\(b\)回足し、その後\(a\)を\(c\)回足したものに等しい。

マイナスの数、負の数は、正の数\(a\)から次のように定義されます。

\[ \begin{aligned}a+ b= 0\end{aligned} \]

を満たすような\(b\)を、負の数と呼び、\(b= -a\)と書くことにします。もし、\(a,b\)ともに正の数ならば、足してゼロになることはありえません。逆に、足してゼロになるような数\(b\)が存在することにして、数の範囲を広げたと言えます。

さらに整数の計算については、足し算・掛け算で結合法則、交換法則が成り立ち、\(a \times 1= a\)、分配法則

\[ \begin{aligned}a\times (b +c) = a\times b +a \times c\end{aligned} \]

が成り立つものとします。こういう性質を持つものを、整数と呼ぶわけです。

 

マイナスかけるマイナス=プラスの証明

では、マイナス×マイナス=プラスを証明しましょう。

1の掛け算の法則\((-1)\times1=-1\)と分配法則を使えば

\[\begin{aligned} (-1)\times(-1) – 1 &=(-1)\times(-1) + (-1)\times1\\ &=(-1)\times(-1 + 1)\\ &= 0 \end{aligned} \]

なので、両辺に\(1\)を足して

\[ \begin{aligned}(-1)\times(-1) =1\end{aligned} \]

が示せました。

 

より一般の数に進みましょう。

まず、すべての整数\(a\)に対して\((-1)\times a = (-a)\)が成り立ちます。なぜなら、分配法則を使えば、

\[\begin{aligned} a+ (-1)\times a& = 1 \times a+ (-1)\times a \\ &=  \{1+(-1)\}\times a \\&=0 \end{aligned} \]

なので、\(-a\)の定義から、\((-1)\times a = (-a)\)です。

そして、\((-1)\times(-1) =1\)に整数\(a,b\)を両辺にかけてみます。左辺は

\[ \begin{aligned}(-1)\times(-1) \times a \times b \\ = (-1)\times a \times(-1) \times b \\=(-a)\times (-b) \end{aligned} \]

と変形できるので、

\[ \begin{aligned}(-a)\times(-b) =a \times b\end{aligned} \]

が言えました。

今回は整数における法則を証明しましたが、有理数や実数でも分配法則は共通であり、同様にして示せます。

 

数の計算ルールにおいて重要なのは、負の数の定義式\(a+(-a)=0\)と、分配法則\((a+b)\times c= a\times b +a \times c\)です。分配法則は、逆に見れば共通の因数をくくりだす法則とも言えます。これらの性質を出発点として、「マイナス」という数を考えているわけです。

これらがわかっていれば、マイナス×マイナスがプラスになるのも、当然と思えるのではないでしょうか。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

こちらもおすすめ

なぜ分数の割り算はひっくり返してかける? 分数の定義と逆数について