どうも、木村(@kimu3_slime)です。
算数に苦手意識はありますか? 小学校での算数への印象は、中学校以降の数学、また理系科目の勉強に影響していきます。できれば、嫌いにはなりたくない。
今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」を紹介します。
どんな本か
「10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」は、算数が苦手になりやすいポイントとその解決法が書かれた本です。理系……とありますが、中身は算数です。
子どもが算数が好きならば、理系という進路を選択肢に残せて将来良いですよ、という保護者向けの本でもあります。どちらかというと保護者向けなのですが、これは算数の学び直しの本として中学高校生、学び直しの大人も使えると思います。
「10億件の学習データが」とありますが、これは著者の運営するサービス「RISU算数」から得たものです。タブレット端末で、講師の個別指導があります。
目次
内容の半分(2,3章)が具体的な算数の問題を交えた話、もう半分(1,4章)が算数を学ぶメリットや学習法に関する話です。
- 1 算数について、私達が知らない残念な真実
- 2 ここでのつまづきは致命的! 「なぜ解けないの!?」と、ママが首をひねる5つの問題
- 3「苦手なのは、文章理解」というのは実は大ウソ! 文章題の真実
- 4 シリコンバレーでも採用! 理系を自由に選択できる子どもに育てるために
自分はバカだ、と思わされないように
算数に限った話ではないのですが、印象に残ったのが親の子に対する態度の話です。
もう一つ、熱心な親御さんほど陥りがちなパターンを紹介します。
「自分の子どもは算数(勉強)ができない」
と言う親御さんです。
親御さん同士、あるいは先生との話の中で、
「うちの子は本当に勉強が苦手で……」
「うちの子はできが悪くて……」
などと口にしてしまってはいませんか? 親御さんの意図が謙遜であれ本心であれ、子どもは言葉の通りに受け取ります。そのため、半ば自己暗示的に「自分は苦手だ」「できない」「バカなんだ」と思い込んでしまうのです。そして無意識のうちに、その思い込みが現実となるように行動してしまうのです。
引用:理系が得意な子の育て方 No.699
子どもの頃、知人の親がこうした言い方をしているのを見て、眉をひそめた覚えがあります。先生や、学習している本人も、できればこうやって意識を下げたくないものです。
僕が高校生のときも、勉強はそこそこ頑張っているものの、「俺はバカだからさ」と言って、成績が伸び悩んでいる子がいました。だんだんと自信を失ってしまうものなのかもしれませんが、自分のことを信じられなければ、できるようになるのは難しいでしょう。
本「数学に感動する頭をつくる」でも、数学の不得意は遺伝しない、と書かれています。それだけよくある話なのでしょう。
参考:数学にセンスは必要?「数学に感動する頭をつくる」レビュー
心理学において、自己効力感(self-efficacy)という言葉があります。自分ができると思っているほど、実際にその行動ができる可能性が高いというもの。自己効力感を育むには様々な要因がありますが、ひとつに周囲から言葉ではげまされること、言語的説得があります。
苦手なこと探しをすれば、あれもできない、これもできないと気分は下がっていってしまいます。自分にはできるようになったことがある、あれもこれもできる、好きなことや得意なことを振り返ることが、苦手意識を減らすのに役立つでしょう。
宿題に無理に取り組まない
教育熱心な方には怒られるかも知れませんが、僕は宿題アンチです(笑)。正確に言えば、大量の宿題をこなす作業は、勉強を嫌いにする割に得意にはしないと思っています。
この本を読んで驚いたのは、宿題の量と学力には何も関係がない、という研究があることです。
まず、宿題と学力に対する国際比較調査と、その追跡調査を目的に行われた統計調査を紹介しましょう。
レテンドルとベーカーの研究チームは、1994年と1999年の2回にわたって40~50カ国の小学4年生、中学2年生、高校3年生を対象に行われた調査を分析しました。その結果、明らかになったのは、
「宿題の量と学力には、相関関係がない」
ということでした。つまり、宿題の量と子どもの学力には、関係はなかった、というわけです。
引用:理系が得意な子の育て方 No.480-481
参考:Where’s Daddy?、National Differences, Global Similarities: World Culture and the Future of Schooling
ほかに「ハリス・クーパーの研究によると、幼稚園小学校の子どもの宿題には悪影響しかない」といったことが書かれていますが、これは鵜呑みにしないほうが良さそうです。
参考:Duke Study: Homework Helps Students Succeed in School, As Long as There Isn’t Too Much、小中学生の「宿題」は成績向上に効果無しのデマ記事に見る英語教育の重要度
ただし、この本の宿題に関するアドバイスは良いと思いました。宿題を一人でやらせず、保護者が宿題を見てあげるようにすること。
宿題をきっかけに、勉強そのものが嫌いになっていくパターンはよくあります。もし保護者にとっても宿題がめんどくさいことならば、なおさら子どもに言っても聞いてもらえませんね。これは学習者の立場としてもそうで、一人でやる勉強ってしんどいときがあります。保護者や友達と一緒に取り組んでみると良いでしょう。
学年をまたいで復習する
この本では、算数のカリキュラムの問題点も指摘されています。
積み重ね型の学びであるにもかかわらず、同じような分野の内容が細かく学年ごとにわかれていて、復習するのが難しいことです。
著者は、学年をまたいででもわからないところまで戻ることを提唱しています。例えば5年生の小数の計算が苦手ならば、2年生の位取りを復習するといったように。
引用:理系が得意な子の育て方 No.1301
このサイトでも大学数学のロードマップを示していますが、算数にはどんな分野があり、自分がつまづいているのはどこか、どこまで戻る必要があるか把握するのは大事です。
気になる点
この本は、算数ができるとキャリアが広がり年収が増えて、論理的説明力はどこでも活かせるし、子どもが好きなことができますよ、といった話が紹介されています。
だから算数ができたほうが良い、というロジックです。投資として子どもの教育をする保護者の目線で、それでRISU算数を利用してもらいたいのでしょう。それ自体は間違っていませんし、できるに越したことはないと思います。
ただ、すごくビジネスライク、功利的な印象を受けます。学習者の視点ーーその子は算数ができるようになりたいのか? その子は将来お金を稼ぎたいのか、好きなことをしたいのか?ーーは薄いです。おきまりのコースの生き方が絶対でなくなってきた話はしていますが、結局「数学は役に立つ」がほとんど。
数学、学問を楽しむことに、役に立つ・立たないといった現世的視点は必ずしも必要ありません。子どもは親や他者のためだけに、生きて学ぶわけではないと思っています。もちろん、算数が得意になればある程度は楽しいと思いますが、役に立つ以外の視点を持てると嬉しいですね。
参考:「数学は何の役に立つのか」「じゃあ学問は役に立つためにあるのか?」
僕は「10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」を、Kindleの読み放題サービスKindle Unlimitedで読みました。登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。算数が苦手だった人や、苦手意識を持っている人に教える人におすすめです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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