数学にセンスは必要?「数学に感動する頭をつくる」レビュー

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

数学が得意な人は、どんな能力が必要なのでしょうか。センスや才能が必要なのでしょうか?

今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「数学に感動する頭をつくる」を紹介します。

 

どんな本か

数学に感動する頭をつくる」は、数学が得意な人とそうでない人の違いに関するコラムが書かれた本です。数学を学んでいる人や、数学を教える人が、数学に関する能力とは何か考えるきっかけになると思います。

著者は駿台の塾講師で、国際数学オリンピックに挑戦する子どもたちを教える中で、できる生徒の数学的能力について考えてきました。結論としては、数学ができる生徒は

頭の中に数や図形や状態を思い浮かべそれらを頭の中で操ることができる「イメージ能力」

「構造化された記憶」を自分の世界として持ち、その世界の中で絶えず自問自答し、問題を拡張する工夫を凝らし、未知のものをあれこれと言い換えては自分の世界に取り込もうとする「位置づけの能力」

が発達している、と指摘しています。この能力がないと、数学の面白さがわかるところまでたどり着かない、と。

 

目次

  • 1 「数感」とは何か
  • 2 数学の教育について(初級編)
  • 3 さまざまな能力の開発方法

 

計算力は基礎として重要

まず基本的な計算力が重要、というのは自分が持っていた仮説でしたが、これが著者の経験からしてもそうだということに驚きました。具体的には、数学ができる生徒は、公文式の教育を受けていた子が多かったと。(相関はあるが因果はどうなんだ、って気はしますが)

僕も小学6年~中学2年くらいの頃、公文式で数学を学びました。例えば\(16  \times 17\)のような2桁の計算をドリル式に大量にこなすため、計算に苦を感じなくなります。例えば\(20\)くらいまでの数の2乗なんかは覚えているので、中学の2乗の計算は困りません。計算力や暗算力は、公文式でなくとも、そろばん塾でもなんでも良いでしょう。

数学の計算だけしていても、思考力は育まれないのでは……という説も一般には知られています。しかし、小学生や中学生が数学に取り組むにあたり、まず計算力を身に着けておくのは必須ではないでしょうか。結局計算が余裕でできなければ、数の処理を頭の中で行う習慣が身につきませんし、応用的なことを考える余裕はできません。

数に親しみ、数というものの感覚をほとんど暗記するように身につけたほうがよいことは間違いがない。この能力はおそらく小学校の低学年頃に(個人差はありそうだが)ピークを迎える。したがって、その頃までにこの能力を開発し、利用して数の世界に親しませる公文式という方式には相当な効果がある。

引用:数学に感動する頭をつくる No.1191

思い出せば僕は、幼稚園生時代に、知育教材を通して九九を好んで学んでいました。なので小学校の算数は簡単でした。周囲の生徒より理解が進んでいるということは、小学校や中学校の算数・数学で、より進んだ内容に時間がかけられることにつながったのでしょう。

一方で、文章題や証明問題に取り組む力は磨かれなかったので、公文式や計算問題ではない、別の勉強の仕方が必要だったと思っています。

この本では、小学校くらいの時期の暗記力を軽んじてはいけない、もしその時期を逃してしまったら……あきらめなさい、と残酷な結論を書いています。僕なんかは大人からでもやり直せるよ、と甘い希望にすがりたくなりますが、なかなか難しいことなのでしょうか。

 

頭の中に自分の数学を作る

勉強とは、わからないことをわかるようにすることである、とある勉強法の本には書かれていました。

参考:「勉強のやり方」を見直せば、中学数学は楽しめる 本レビュー

では、数学がわかるとはどういうことなのでしょうか。これにはいろんな定義や段階があるとは思います。公式が覚えられれば、問題が解ければ、わかったことになるのでしょうか。数学が苦手な人は、数学がわかることがどういうことがわからなくなってしまいそうです。

この本では、頭の中に自分の数学の世界を立ち上げ、目の前の問題や知識と結びつけられる状態が、わかる状態であるとされています。

実は数学を学ぶとは自分の中に一つの数学の世界を立ち上げることである。この数学世界の立ち上げは、時期にすればおよそ中学生の頃から起こり始める。

小学校の頃までは夢中でやっていた計算や規則性の理解や、文章題といった断片がだんだんと整理され始め、自分の中で理屈を持った一つの塊にならなければならない。

この世界の中には次々といろいろな異質物が入ってくる。そのときにその異質物を自分の世界に位置づけ、そうしてだんだんと広がっていく新しい世界を新たな異質物に備えて、ぴかぴかに磨いておかないと、新しい認識は生まれない。

引用:数学に感動する頭をつくる No.1648

自分がこういう認識で中学生、高校生の頃に数学を学んでいたかは、怪しいものがあります。受験勉強のときに、数学にはおよそこういう分野があり、この問題はこの分野の知識で解ける…といった理解はしていました。大学に入って、数学の歴史が気になって調べたりして、より広い視点を持つようになっていきました。これは自分なりの数学観、数学の世界の構築につながっています。

自分の中に知識の体系を作ることは、もはや数学に限らずあらゆる勉強をする人には必要だと思います。しかし、それは中学生や高校生の中で、得意な人や苦手な人がいるでしょう。知識の断片ばかり溜まっていって、勉強が苦になっている人は多いのではないでしょうか。

この能力は、歴史を知るだけでなく、自分が理解している(つもりの)ことを人に説明することでも磨かれます。自分も数学の専門に入り始めてからは、ゼミで人に発表したり、また脳内で説明しようとしたりする中で認識を深めていきました。人への説明を通して学ぶテクニック、ぜひ試してみてください。

参考:数学の学びを深めるために必要なのは、「わからない」と言える力

 

気になる点

この本、良いことは書かれているとは思うのですが、章立てが悪く、断片的なコラムの寄せ集めという印象で、メインの主張が何か、それの根拠は何なのかわかりにくいです。まえがきも雑談から始まって、何が目的の本なのかも伝わりにくい。

例えばあとがきで、「算数の根幹をなすのは論理的な能力ではなく想像力である」と世間の常識とは異なる考え方に到達している、ここで詳しく述べる紙幅はない、といったようなことを書いています。あれこれの思いつきを文章にした感じなんですかね……。

また、塾講師特有の、上から目線を感じる部分があります。クセが強い。例えば特効薬のようにマニュアル式の勉強法にすがる人を馬鹿にする。自分の勉強法が正しいと主張するのは良いですが、煽ることで自分についてくると考えているのでしょうか。

また、No.468には、(数学の)能力開発をする科学的な方法などあるわけがないと述べられています。これは人間の発達に関する科学、すなわち心理学や教育学のアプローチを否定するものです。科学的方法がないとまで断言するのは、かなり人文系の学問の理解度を疑います。

現時点では、そうした科学的なアプローチが実際的な応用にたどり着くのが難しいのには、僕も同意します。なので、この本では私見を述べるにとどまる……と謙虚に言ってくれたら良いのですが。

 

僕は「数学に感動する頭をつくる」を、Kindleの読み放題サービスKindle Unlimitedで読みました。登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。数学の学び方、数学の得意な人とそうでない人について考える良いきっかけになりますよ。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

数学に感動する頭をつくる (ディスカヴァー携書)
栗田哲也(著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2011-08-15T00:00:00.000Z)
5つ星のうち4.4
¥990

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