どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、距離空間における極限の一意性の証明を紹介します。
距離空間において、極限はもし存在するならば、それはただひとつしかありません。
\((X,d)\)を距離空間、\((x_n)\)を\(X\)の点列としましょう。\(\lim_{n\to \infty}x_n =a\)と\(\lim_{n\to \infty}x_n=b\)を満たす\(a,b \in X\)が存在するならば、\(a=b\)です。
これを証明していきましょう。
\(\varepsilon >0\)とします。\(\lim_{n\to \infty}x_n =a\)という極限の定義から、「\(n \geq N_1\)ならば\(d(x_n,a)<\frac{\varepsilon}{2} \)」を満たす\(N_1\)が存在します。
同様に、\(\lim_{n\to \infty}x_n =b\)から、「\(n \geq N_2\)ならば\(d(x_n,b)<\frac{\varepsilon}{2} \)」を満たす\(N_1\)が存在します。
\(N:=\max\{N_1,N_2\}\)とすると、\( n \geq N\)のとき、距離の三角不等式、対称性から
\[\begin{aligned} & d(a,b)\\ &=d(a,x_n)+d(x_n,b) \\&< \frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{2} \\&= \varepsilon \end{aligned}\]
となります。この不等式の結果は、最終的に\(n\)に依存していないことに注意しましょう。
一般に、任意の\(\varepsilon\)に対し\(d(a,b)<\varepsilon\)ならば、\(a=b\)です。なぜならば、\(m \in \mathbb{N}\)に対し\(\varepsilon = \frac{1}{m}\)とすれば、\(0 \leq d(a,b)\leq \frac{1}{m}\)となります。したがって、\(m \to \infty\)で\(\frac{1}{m}\to 0\)なので、はさみうちの原理から\(d(a,b)=0\)です。
よって、距離の正定値性から\(a=b\)であること、極限の一意性が示せました。
ちなみに、関数の極限についても同様です。
以上、距離空間における極限の一意性を紹介してきました。
より一般には、ハウスドルフ空間における極限の一意性が知られています。
コンパクト対称作用素が作用素ノルムを固有値として持つことの証明などでは、ある点列の極限が2つの対象に収束することから、目的とする等式\(a=b\)を導いていますね。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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