どうも、木村(@kimu3_slime)です。
数学における仮定、結論とは何か、1次方程式を具体例として、簡単に紹介します。
仮定、結論とは
数学の文章を読むときには、仮定と結論を意識することが大事です。
しかし、中学や高校の授業では、あまりこの言葉を聞かなかった気がします。そのことを気にしなくても良い問題だったからでしょう。
例えば、
\(2x=1\)を解け
という問題に、どう答えるでしょうか。「\(x= \frac{1}{2}\)」と答えればそれで十分とすることが多いでしょう。確かにそれは解です。
さて、少しこの問題を一般化してみます。
\(ax=b\)を解け
こちらはどうでしょうか。さきほどと同じようにして、「\(x= \frac{b}{a}\)」と答えてみましょう。
この回答には、良くない点があります。どこだかわかりますか?
\(ax =b\)から\(x= \frac{b}{a}\)を導くには、等式の両辺を\(a\)で割る操作をしています。それが使えるためには、\(a \neq 0\)という仮定(前提)が必要なのです。
つまり、「もし\(a \neq 0\)ならば、\(x= \frac{b}{a}\)が解」は正しいです。前半の「もし\(a \neq 0\)ならば」を仮定、「\(x= \frac{b}{a}\)が解」を結論と呼びます。
続いて、別の仮定、\(a=0\)のケースを考えてみましょう。方程式は\(0x =b\)となります。この方程式の解は、どう求めれば良いか思いつきますか?
例えば、\(b=1\)のときは、方程式は\(0x =1\)となります。\(x\)をどんな数に置き換えても、\(0x = 0\)なので、\(0 =1\)は成り立ちません。よって、解は存在しません。\(b \neq 0\)のとき、同様の議論ができます。
続いて、\(b= 0\)と仮定しましょう。このときは\(0x =0\)です。\(x\)が何であっても成り立ちます。このとき、すべての数\(x\)が解です。
このとき、「数」という言葉は若干あいまいです。それは方程式の変数\(x\)が、どんな数なのか明示されていなかったからです。変数を\(x\)と書くときは、\(x\)は実数として解釈されることが多いでしょう。このように、明示的に述べられない仮定を暗黙の仮定と呼びます。
変数\(x\)を実数とする方程式と仮定するならば、\(a=0,b=0\)のとき、すべての実数\(x\)が解です。解釈を変えて、もし\(x\)を複素数とする方程式と仮定するならば、すべての複素数\(x\)が解となります。
以上の結果をまとめてみましょう。
\(ax=b\)を解け。
回答例:
\(x\)を実数と解釈する(暗黙の仮定を、明示的に述べた)。
もし\(a \neq 0\)ならば、\(x= \frac{b}{a}\)が解である。
\(a =0\)かつ\(b \neq 0\)ならば、解は存在しない。
\(a =0\)かつ\(b = 0\)ならば、すべての実数\(x\)が解である。
「~とする」「~ならば」「~のとき」「~のケース」といった言葉で、数学の証明には仮定が宣言されています。仮定に応じて、結論があるわけです。
こんな面倒な回答は求めてない、ということならば、仮定を少しつけるだけで正確になります。
\(ax =b\)を解け(\(a \neq 0\))。
これならば\( a \neq 0\)という仮定があるので、\(x= \frac{b}{a}\)と解くことができます。
ちなみに、「\(ax =b\)から\(x = \frac{b}{a}\)」という推論では、等しい数を0でない数で割っても等しいという、等式の性質「\(a=b\)かつ\(c \neq 0\)ならば、\(\frac{a}{c}= \frac{b}{c}\)」を使っています。
この等式の性質は、今回の証明の中では証明されておらず、あらかじめ正しいものとして仮定して議論しています。このように、数学の議論の出発点となる基本的な仮定は、公理と呼ばれるものです。
途中で用いた、「すべての\(x\)に対して\(0x=0\)」や「\(0 \neq 1\)」といった当たり前の性質も、数に関する公理(詳しく言えば、体の公理)のひとつです。
数学の試験の回答において、すべて公理や原理から証明を求められることは、そうそうないでしょう。「ピタゴラスの定理より」「判別式の性質より」といったように、ある程度の事実は認めて(無条件に正しいと仮定して)議論します。
何かを仮定して議論すると、「その仮定が正しいか」を気にせずに、「正しいとしたらどんな結論が導けるか」というその先の話ができるので、便利です。
数学における仮定、結論とは何か、1次方程式を具体例として紹介してきました。
数学を専門としないと仮定や結論という言葉は耳慣れないかもしれませんが、数学の教科書や証明の至る所で使われている考え方です。
「何を仮定として、何を結論として導こうとしているのか」を見抜く習慣をつけると、数学的な考え方が身につきやすくなるでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
日本評論社 (2008-12-10T00:00:00.000Z)
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