どうも、木村(@kimu3_slime)です。
「与えられたベクトルの組は線形独立かどうか判定せよ」といった問題は、部分空間の基底や次元を求める上で重要です。
今回は、線形独立・従属の判定法として、行列のランクとの関係を紹介したいと思います。
線形独立性とランクの関係
\(a_1,a_2,\dots,a_m\)というベクトルの組が線形独立かどうか判定したいとしましょう。
\(a_1,a_2,\dots,a_m \in \mathbb{R} ^n\)、行列を\(A:=(a_1,\dots, a_m)\)とします。
行列\(A\)のランク\(\mathrm{rank}A\)は、\(A\)の線形独立な列ベクトルの最大数に等しい。(行についても同様)
おおざっぱな理屈はこうです。まず、行列の基本変形によって、ベクトルの線形独立性は変化しません。そのため、行列のランクは、その像の次元に等しい。それが線形独立なベクトルの最大数です。詳しくは、齋藤「線型代数入門」4章を参照。
具体例
次のベクトルの組は線形独立でしょうか?
\[ \begin{aligned} a_1,a_2,a_3 =\begin{pmatrix} 1\\ 2 \\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix} 2\\ 1 \\2\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 2\\ 1 \\1\end{pmatrix}\end{aligned} \]
それを判定するために、ベクトルを並べた行列を作り、基本変形しましょう。
\[ \begin{aligned} &\begin{pmatrix} 1&2&2 \\ 2&1&1 \\ 1&2&1 \end{pmatrix} \\& \sim\begin{pmatrix} 1&2&2 \\ 0&-3&-3 \\ 0&0&-1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]
となるので、ランクは3で、線形独立であることがわかりました。
もうひとつやってみましょう。
\[ \begin{aligned} b_1,b_2,b_3,b_4 =\begin{pmatrix} 2\\ 0 \\-3 \\-4\end{pmatrix},\begin{pmatrix} 0\\ 3 \\1 \\ 2\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1\\ 2 \\1 \\ 0 \end{pmatrix} , \begin{pmatrix} 0\\ -1 \\-4 \\ -2 \end{pmatrix}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned} &\begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&3&2 & -1 \\ -3&1&1&-4 \\ -4 &2& 0 &-2\end{pmatrix} \\& \sim\begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&3&2 & -1 \\ 0&1&\frac{5}{2}&-4\\ 0 &2& 2 &-2\end{pmatrix} \\& \sim\begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&1&\frac{2}{3} & -\frac{1}{3} \\ 0&1&\frac{5}{2}&- 4\\ 0 &1& 1 &-1\end{pmatrix}\\& \sim\begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&1&\frac{2}{3} & -\frac{1}{3}\\ 0&0&\frac{11}{6}&- \frac{11}{3} \\ 0 &0& \frac{1}{3} &-\frac{2}{3}\end{pmatrix} \\& \sim\begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&-\frac{1}{3}&\frac{2}{3} & 1 \\ 0&0&1&- 2\\ 0 &0& 0 &0\end{pmatrix}\end{aligned} \]
と基本変形できるので、ランクは3で、線形独立ではありません(線形従属)。
さらに基本変形すると、\(b_4\)を他の3つのベクトルで表せます。
\[ \begin{aligned} & \begin{pmatrix} 2&0&1&0 \\ 0&-\frac{1}{3}&\frac{2}{3} & 1 \\ 0&0&1&-2 \\ 0 &0& 0 &0\end{pmatrix} \\ & \sim \begin{pmatrix} 1&0&\frac{1}{2}&0 \\ 0&1&-2 & -3 \\ 0&0&1&-2 \\ 0 &0& 0 &0\end{pmatrix} \\ & \sim \begin{pmatrix} 1&0&0&1 \\ 0&1&0 & 1 \\ 0&0&1&- 2\\ 0 &0& 0 &0\end{pmatrix}\end{aligned} \]
\(b_4 = 1b_1 +1 b_2 -2 b_3\)です(確かめてみてください)。
以上、ベクトルの組が線形独立かどうか判定する方法として、行列のランクとの関係を紹介してきました。
ベクトルの組が生成する部分空間の基底を探したり、次元を求めたりするときもこの方法は使えます。
パッと見で線形独立性を判定できるような問題ならば、この方法を使わなくても良いです。しかし、ちょっと複雑な問題ならば、行列として基本変形して判定した方が楽でしょう。標準形にすると、ベクトル同士の依存関係がわかりやすいです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
共立出版 (1982-07-09T00:00:01Z)
¥788 (中古品)
世界標準MIT教科書 ストラング:線形代数イントロダクション
近代科学社 (2015-12-22T00:00:01Z)
¥14,721 (コレクター商品)
東京大学出版会 (2019-03-08T00:00:00.000Z)
¥1,870
こちらもおすすめ
実数空間、線形結合、線形部分空間、次元とは何か:2次元を例に
線形方程式の解き方:ガウスの消去法と基本変形・ランク、LU分解