漸化式と微分方程式は似ている:簡単な例で解説

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

高校数学では、数列を定める方程式:漸化式について学びますが、漸化式は、微分方程式というものとよく似ています。

数列の知識を前提に、漸化式と微分方程式が似ているとはどういうことか、簡単な例を通じて紹介しましょう。

 

漸化式と微分方程式の類似

等差数列と1次関数

さて、最も簡単な漸化式とはなんでしょうか。

\(a_n =3\)のような常に数列の値が一定であるような漸化式は、既に一般項が求められていて、簡単すぎるので除外しましょう。

次に簡単なのは、\(a_{n+1}- a_{n}=3\)のような、隣り合う項の差が一定であるような漸化式です。

この方程式を満たす数列をなんと呼ぶのでしょうか。差が常に等しい……そう、等差数列です。常に一定である差\(d=3\)は、公差と呼ばれるのでした。

漸化式\(a_{n+1}- a_{n}=3\)を\(a_1 = 0\)という初期条件で解くと、\( a_{n}= 3n -3\)となります(解になっていることを確かめてみてください)。

 

さて、数列ではなく関数についても、これと似た方程式を考えることができます。微分すると常に3という値を取る関数は何か、すなわち

\[\frac{df}{dx}(x) =3\]

を満たす関数\(f(x)\)はなんでしょうか。微分すると常に一定の値(3)を取る。

初期条件を\(f(1)=0\)としたときの解は、\(f(x) =3x -3\)です。これは\(f(1)= 0\)を満たしますし、微分すれば\(\frac{df}{dx}(x) =3\)を満たします。

微分を含む関数に関する方程式を、微分方程式(differential equations)と呼びます。1回微分すると定数になるような微分方程式の解は、1次関数(線形関数)です。

 

等差数列と1次関数は似ている、という話を以前しました。

参考:数列と関数は似ている:等差・等比数列と一次・指数関数

今回の話は、それを定める式、漸化式\(a_{n+1}- a_{n}=3\)と微分方程式\(\frac{df}{dx}(x) =3\)も似ているということです。その答え(解)も、等差数列が1次関数に対応するようになっていました。

漸化式の\(a_{n+1}- a_{n}\)は差分と呼ばれ、漸化式は差分方程式(difference equationsとも呼ばれます。漸化式(差分方程式)と微分方程式は、親戚のようなものなわけです。

 

等比数列と指数関数

もうひとつ漸化式の簡単な例を挙げるとすれば、

\[a_{n+1} = 5a_n\]

のようなものでしょう。初期条件を\(a_1 =10\)とすれば、\(a_n =2 \cdot 5^n\)が解です(確かめてみてください)。

漸化式を変形すると、\(\frac{a_{n+1}}{a_n}=5\)となり、隣り合う項の比は一定です。このような数列は等比数列と呼ばれ、一定の比\(r = 5\)は公比と呼ばれるのでした。

 

再び、この漸化式と似ている微分方程式を考えてみましょう。それは

\[\frac{df}{dx}(x) =  (\log_e 5) f(x)\]

です。ちょっとした調整の係数は、自然対数です。初期条件を\(f(1) =10\)としたときの解は、\(f(x) = 2 \cdot 5^ x\)となります。

\(f(1)= 10\)を満たすのは良いでしょう。微分すると、\(\frac{df}{dx}= (\log _e 5) 2 \cdot 5 ^x =(\log_e 5) f(x)\)と満たしています(指数関数の微分)。

以上によって、\(a_{n+1}= 5a_n\)という等比数列が解となる漸化式と、\(\frac{df}{dx}(x) =  (\log_e 5) f(x)\)という指数関数が解となる微分方程式が似ていることがわかりました。

この漸化式・微分方程式は、倍々ゲームのように何かが増える現象を説明するために使われ、マルサスの法則とも呼ばれています。

参考:人類は必ず食糧問題に直面する? マルサスの法則と微分方程式

 

特性方程式という共通解法

さて、もう少し複雑な漸化式を扱うこともあるでしょう。

\[a_{n+1}-3 a_n = 2\]

これは等差数列の漸化式ではありませんし、等比数列でもありません。

これを解くには、うまく等比数列の漸化式に変形させます。つまり、

\[a_{n+1}- \lambda =3(a_n -\lambda) \]

を満たすような数\(\lambda\)を見つけられないでしょうか。

元の方程式と合わせて整理すると、\(\lambda -3 \lambda =2\)という方程式が得られ、\(\lambda =-1\)とすれば良いことがわかります。このような方程式は、特性方程式と呼ばれるものです。

\(b_n =a_n +1 \)とすれば、\(b_n =3 b_n\)となります。

例えば初期条件を\(a_1 =2\)のときに解けば、\(b_1=3\)であり、等比数列の漸化式から\(b_n =3^n\)となります。よって、\(a_n = 3^n -1\)と解が得られました。

今回は隣接2項間の漸化式を考えましたが、隣接3項間の漸化式でも同様にして解けます。

 

対応する微分方程式として、

\[\frac{d^2 f}{dx} + 2 \frac{df}{dx} +f =0\]

のような方程式を解くときにも、\(\lambda ^2 +2\lambda +1=0\)という特性方程式を使います。

参考:2階線形常微分方程式を学ぶ意味:熱方程式への応用を例に

これらの漸化式・微分方程式は、線形方程式と呼ばれるグループに分類されます。

高校数学では特性方程式について明示的に学ぶことはないようですが、そのアイデアは大学の線形代数学固有値・固有ベクトルの応用として学ぶことができるでしょう。

参考:漸化式(フィボナッチ数列)を線形代数(線形空間、固有ベクトル)で解く方法を解説

 

以上、漸化式と微分方程式は似ているという話を、簡単な例を通じて紹介してきました。

高校数学で漸化式の形とその解き方、どんな数列が出てくるかを知っていると、微分方程式を解くときにも予想がつけやすくなるでしょう。

フィボナッチ数列がウサギの繁殖の説明に使われるように、漸化式や微分方程式は数学的モデルを考えるのに役立ちます。方程式を解くのは難しいですが、簡単な例から少しずつ考えてみていってはいかがでしょうか。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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