因数分解で2次方程式がなぜ解けるか:積が0となる数の性質

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中学校の数学では、2次方程式を因数分解によって解くことを学びます。

なぜ、因数分解をすると解が見つかるのでしょうか。今回は、それを支える基本的な数の性質、積が0となる数の性質を紹介します。

 



因数分解ですべての解を見つける

例えば、\(x^2 -5x +4=0\)という2次方程式を解きたいとします。

因数分解をすると、\((x-1)(x-4)=0\)が成り立つ。

よって、解は\(x=1\)または\(x=4\)である。

と回答することを学ぶでしょう。

 

論理的に詳しく考えると、ちょっとしたツッコミどころがあります。

確かに、\(x=1\)または\(x=4\)が、方程式の解であることはわかります。それは因数分解された式\((x-1)(x-4)=0\)において、一方が0になるからです。

しかし、この検証で言えることは、\(x=1,4\)が解であることにすぎません。他の解がないとどうして言えるのでしょうか?

「2次方程式の解は2つしかない」という事実を認めればそれまでですが、どうしてそう言えるのでしょうか。

それは、\((x-1)(x-4)=0\)が成り立つならば、必然的に\(x=1\)または\(x=4\)でなければならない、と言えるからです。

 

積が0になる数の性質

因数分解をして解を得ているときは、実は数の基本的な性質を使っています。

積が0になる数の性質(zero product property)

\(a,b\)を任意の数とする。

もし\(ab =0\)ならば、\(a=0\)または\(b=0\)が成り立つ。

対偶を使って言い換えると、\(a\neq 0\)かつ\(b\neq 0\)ならば、\(ab \neq 0\)である。

かけた結果が0になるような2つの数\(a,b\)は、少なくとも一方が0でなければならない、という性質ですね。

 

この性質を使って、2次方程式\(x^2 -5x +4=0\)を因数分解で解いてみましょう。

\(x\)を何らかの数として、\(x^2 -5x +4=0\)を満たすものとする。

因数分解をすると、\((x-1)(x-4)=0\)が成り立つ。

\(a = x-1\)、\(b= x-4\)と置くと、\(ab=0\)である。

ここで積が0になる数の性質を用いると、\(a=0\)または\(b=0\)となる。

すなわち、\(x-1=0\)または\(x-4=0\)である。

よって、\(x=1\)または\(x=4\)でなければならないことがわかった。

 

少し発展的な話をしましょう。

「積が0になる数はどちらか一方は0である」という性質は当たり前のようですが、例えば行列というものをを考えると成り立たないです。例えば、

\[ \begin{aligned}A= \begin{pmatrix} 0&1\\0&1\end{pmatrix}\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned}B=\begin{pmatrix} 1&1 \\0&0 \end{pmatrix}\end{aligned} \]

とすると、\(A \neq O, B \neq O\)ですが、

\[ \begin{aligned}AB =\begin{pmatrix} 0&0 \\0&0 \end{pmatrix}=O\end{aligned} \]

となっています。つまり、「\(AB =O\)ならば、\(A= O\)または\(B=O \)」という推測は成り立たないのです。

 

抽象代数学では、数や行列のように足し算や掛け算ができるようなものの集まりを、(かん)と呼びます。そして、

\[ \begin{aligned}ab = 0 , a \neq 0 , b \neq 0 \end{aligned} \]

を満たす環の要素\(a,b\)を零因子(zero factor)と呼びます。零因子を全くもたない環は、整域(integral domain)と呼ばれるものです。

通常の数、整数や実数、複素数においては、零因子は存在しません。だから、因数分解\((x- \alpha )(x- \beta )=0\)から、解\(x = \alpha , \beta\)を得るような議論ができます。

一方で、行列においては、さきほど見たように零因子が存在しています。\((X-A)(X- B)=O\)という因数分解(因行列分解?笑)ができたとしても、\(X =A, B\)とは結論できないのです。

 

以上、因数分解によって2次方程式がきちんと解ける理由を、掛けてゼロになる数の性質から紹介してきました。

\(ab = 0\)ならば\(a  = 0\)または\(b=0\)は、当たり前の性質のようですが、行列を考えると絶対的な法則ではありません。因数分解をして方程式を解くときに、この数の性質を使っていると意識すると、解ける理屈がより納得しやすいかと思います。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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