数学における一般化とは:文字式を学ぶのはなぜか

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

中学数学では、文字と式の扱いを学ぶことになります。一体、なぜ具体的な数だけでなく、\(x,y\)といった記号の扱いを学ぶのでしょうか。

その理由のひとつとして、数学による物事を一般化するという考え方について紹介します。

 



例に共通する法則を取り出す

物事を一般化するとはどういうことでしょうか。

例えば、次のような問題をイメージしてください。家の近所に花壇があり、2個の花が咲いていました。1週間後、咲いている花は4個になりました。そのまた1週間後、6個の花が咲いていました。このとき、翌週は何本の花が咲いているでしょうか?

「1周間あたり2個ずつ咲く花が増えている。だから、咲いている花は8個だろう」、と考える人が多いのではないでしょうか。この考え方が、一般化と呼ばれるものです。今まで起こっていたことから「2個ずつ増える」という規則を取り出し、それをもとに「来週以降も2個ずつ増えるだろう」と考えていますね。

 

この法則は、数式で表すことができます。\(x\)週間後に咲いている花の個数を\(y\)とすると、\(y=2x+2\)ですね。中学数学の言葉で言えば、比例の関係にある、\(y\)は\(x\)の一次関数であるといったもの。文字記号や関数の考え方は、どんな風に一般化したのか、その規則を明確に表してくれます。

もし\(y=2x+2\)という想定が正しいとしたら、この式を使って途中の状況を予想することもできますね。例えば、\(x= \frac{1}{2}\)週のとき、週の真ん中では、\(y= 3\)個の花が咲いているかもしれません。

実際には、\(y=2x+2\)のペースでいつまでも花が咲き続けることはないでしょう。\(x=10000\)週後に、\(y= 20002\)個の花が咲いていたら怖いですね。

ただし、花が咲き始める時期の観察としてなら妥当そうです。「仮に1週で2本の調子で増えるなら、\(x\)週後には\(2x\)本増えるだろう」と推測する考え方は、どの時代どの場所でもよく使う便利なものです。

参考:「演繹的・帰納的」な推論の定義、違いを、具体例を交えて解説

 

記号を使った一般化

文字や記号を使うと、物事を一般化して考えるのが簡単になります。今度は数学の例を通して考えましょう。

例えば、「2回かけると1になる数は何か?」という文章を考えましょう。答えは、\(1\)と\(-1\)です。この問題は、文字を使えば「\(x ^2 =1 \)という方程式を解け」と簡単に表されます。

「ある数を2回かけて(平方して)、その数の2倍を足すと、8に等しかった。ある数は何か?」という問題は、読みづらいですね。そのある数を\(x\)と文字で表し、\(x^2 +2x =8\)を解け、と言われれば見やすいです。この方程式は\((x+4)(x-2) =0\)に変形されるので、ある数とは\(x=2,-4\)となることがわかります。

 

文字を使えば、この手の問題をたくさん考えることができます。

  1. \(x^2+ 2x -3=0\)
  2. \(x^2 +2x +1=0\)
  3. \(x^2+2x+2=0\)

3つの方程式は、解こうとしてみると性質が違っていることに気づくでしょう。最初の方程式には、\(x=1,-3\)という2つの解があります。2番目の方程式には、\(x=1\)という1つの解しかありません。3番目では、(実数の範囲で)解が存在しません。

これらの違いを考えるには、具体的な2次方程式を一般化してみると良いでしょう。つまり、係数を\(a,b,c\)と記号で表し、\(ax^2+bx+c=0\)という方程式を考えれば良いのです。

 

一般化された2次方程式は、平方完成によって解くことができ、

\[ \begin{aligned}x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\end{aligned} \]

と解が表されます。

参考:平方完成の由来と応用:なぜ平方「完成」と呼ばれるか

ルート部分の中身を\(D =b^2 -4ac\)とすると、

  1. \(D >0\)ならば、解は2つ
  2. \(D=0\)ならば、解は1つ(重解)
  3. \(D<0\)ならば、実数解は存在しない

となることが読み取れます。

具体的な2次方程式\(x^2+ 2x -3=0\)、\(x^2 +2x +1=0\)、\(x^2+2x+2=0\)で起こっていた解のようすの違いが、一般化することでよく説明されていますね。実は、\(D =b^2 -4ac\)という判別式と呼ばれる量が、解の個数に影響を与えていたのです。

学校の授業や教科書では、文字を使うことは当たり前、判別式もいきなり登場する、という学び方をすることがあるかもしれません。しかし、その結果は\(x^2+ 2x -3=0\)といった具体的な2次方程式と向き合って、そこで起こっていることをよく調べて得られたものです。

具体的な計算をいくつもしてみて、そこで気づいたことを一般化する、たくさんの場合に当てはまるような性質を見つけるのは、数学において大事な考え方です。

例えば、2のマイナス1乗や2分の1乗といった考え方は、通常のべき乗の計算を一般化することで得られるものです。

参考:マイナス乗、ゼロ乗とは:指数法則を知ろう2分の1乗、分数乗とは:指数法則を知ろう

 

以上、数学における一般化とはどういうものか、紹介してきました。

中学数学では、文字や式、記号を扱うようになり、暗号のようで難しく何の役に立つのかと思うかもしれません。文字や記号は、僕たちの観察や経験を一般化するために役立ちます。

世の中で起こっていることは個別具体に見れば規則性のないことも多いのですが、冒頭で考えた花の問題のように、何かしらの法則を見つけられる場合もあります。文字や記号(代数)を学ぶことで、数多くの物事に当てはまるような法則の扱い方を理解できるようになるでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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