どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、倍数同士の和が同じ倍数となることと、整数の合同(合同式、合同算術)について紹介します。
倍数同士の和は倍数であること
偶数(2の倍数)と偶数の和は偶数で、3の倍数と3の倍数の和は3の倍数で、5の倍数と5の倍数の和は5の倍数となります。
例えば、\(2+4=6=2\times3\)、\(6+9=15=3\times5\)、\(10+25=35=5\times7\)です。
一般に、偶数と偶数の和が偶数となることを証明しましょう。
与えられた2つの偶数をそれぞれ\(x,y\)と表します。\(x,y\)は偶数(2の倍数)なので、整数\(k,\ell\)によって\(x=2k,y=2\ell\)と表せます。したがって、その和は\(x+y=2k+2\ell =2(k+\ell)\)と表わせるので、2の倍数であることが示せました。
ありがちなのが、「2つの偶数を\(2k,2k\)と表して、\(2k+2k=4k\)だから偶数」という間違いです。これは同じ2つの偶数を足すと偶数になる、としか言っておらず、一般に異なる2つの偶数を足したときに何が起こるかを説明していません。
より一般の倍数、\(n\)を整数としてその和を考えます。\(n\)の倍数同士の和が\(n\)の倍数となることを示しましょう。
与えられた\(n\)の倍数を\(x,y\)とします。\(n\)の倍数なので、整数\(k,\ell\)によって\(x=nk,y=n\ell\)と表せます。したがって、その和は\(x+y=nk+n\ell =n(k+\ell)\)なので、\(n\)の倍数となることがわかりました。
同様にして、\(n\)の倍数同士の差もまた、\(n\)の倍数となることが示せます。
\(x=nk,y=n\ell\)と表すと、\(x-y=nk-n\ell =n(k-\ell)\)なので、差は\(n\)の倍数です。
偶数の見分け方、3の倍数の見分け方では、\(516=500+10+6\)といったように各桁に分けたりして、それぞれが倍数になっているかどうか分解して判定していました。これには、倍数同士の和・差がまた同じ倍数になるという性質を用いていたわけです。
倍数かどうか判定するために、差を用いることもできます。
例えば、与えられた7の倍数かどうか判定するには、簡単な方法がありません。しかし、倍数の和・差を使った判定をすることはできます。
\(1428\)は7の倍数でしょうか。まず、\(7\times 200 =1400\)なので、\(1400\)は7の倍数です。そこで元の数から引いてみると\(1428-1400=28\)ですが、\(28\)は7の倍数です。よって、\(1428\)は7の倍数同士(\(1400,28\))の和なので、7の倍数であるとわかりました。
整数\(x\)が\(n\)の倍数であるかどうか判定するには、適当な\(n\)倍を\(x\)から引いて、その余りが\(n\)の倍数であるかどうかチェックすれば良いわけです。
例えば素数であるかチェックするためには、\(11\)の倍数か、\(13\)の倍数かといった判定が求められますが、そこでも使える共通の方法です。
整数の合同とは
今回の結果は、整数の合同という観点から、より一般的に捉えることができます。
2つの数\(x,y\)の差\(x-y\)がある整数\(n\)の倍数であるとき、\(x,y\)は\(n\)を法として合同(congruent modulo \(n\))と呼び、\(x\equiv y\, (\mathrm{mod}\, n)\)と表します。これは合同算術、合同式、モジュラー算術、モッドとも呼ばれるものです。
例えば、\(4\equiv 8\, (\mathrm{mod}\, 2)\)です。なぜなら、\(8-4 =4=2\times 2\)なので。また、\(10\equiv 25\, (\mathrm{mod}\, 5) \)です。なぜなら、差は\(15=5\times 3\)なので。差が倍数となっている数はある意味では似ていると考え、\(\equiv\)という記号でつないでいます。
合同でないときは、\(\not \equiv\)を使います。\(2\not \equiv 9\, (\mathrm{mod}\, 2)\)です。その差は、\(9-2=7=2\times 3+1\)だから。何を法とするかによって、合同かどうかは変わることに注意しましょう。差は\(7\)なので、\(2 \equiv 9\, (\mathrm{mod}\, 7)\)です。
合同算術の用語を使えば、整数\(x\)が\(n\)の倍数であることは、\(x\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, n)\)と同値です。
\(x\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, 2)\)の定義を思い出せば、\(x-0 =x\)が2の倍数であること。2ではなく\(n\)にしても同様。\(x\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, n)\)とは、\(n\)で割り切れること、\(n\)で割った余りが0であること、とも言いかえられます。
さきほど「\(n\)の倍数同士の和が\(n\)の倍数となること」を示しました。これは整数の合同で言い換えれば、「\(x\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, n)\)、\(y\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, n)\) ならば、\(x+y\equiv 0 \, (\mathrm{mod}\, n)\)」を示したと言えます。
通常の等号\(=\)では\(x=0,y=0\)ならば\(x+y=0\)は当然成り立ちます(恒等式の性質)。それに似た性質が、整数の合同\(\equiv\)でも成り立っているのです。
より一般に、\(x\equiv a \, (\mathrm{mod}\, n)\)、\(y\equiv b \, (\mathrm{mod}\, n)\) ならば、\(x+y\equiv a+b \, (\mathrm{mod}\, n)\)となることも言えます。(\(a,b\)は整数。\(a=b=0\)がさっきのケース)
確かめてみましょう。仮定より、\(x-a =nk,y-b=n\ell\)を満たす整数\(k,\ell\)が存在します。両辺を足して整理すると、\((x+y)-(a+b)=n(k+\ell)\)となり、右辺は\(n\)の倍数です。よって、\(x+y\equiv a+b \, (\mathrm{mod}\, n)\)が成り立つと言えました。
実際にこの性質を使ってみましょう。\(1512\)が\(11\)の倍数かどうかチェックしたいとします。
まず\(11\times 100=1100\)を引くことで、\(1512 \equiv 412 \, (\mathrm{mod}\, 11)\)です。これは\(1512\equiv 1512 \, (\mathrm{mod}\, 11)\)、\(0\equiv -1100 \, (\mathrm{mod}\, 11)\)なので、さきほど示した性質より\(1512+0\equiv 1512-1100 \, (\mathrm{mod}\, n)\)が成り立つことによるものです。
同様にして、\(11\times 30=330\)を引くと、\(412 \equiv 82 \, (\mathrm{mod}\, 11)\)です。\(77\)を引いて、\(82 \equiv 5 \, (\mathrm{mod}\, 11)\)です。
一般に、\(x \equiv y \, (\mathrm{mod}\, n)\)、\(y\equiv z \, (\mathrm{mod}\, n)\)ならば\( x=z\, (\mathrm{mod}\, n)\)(推移律)が成り立ちます(確かめてみてください)。したがって、\(1512 \equiv 5 \, (\mathrm{mod}\, 11) \)です。よって、\(1512\)は\(11\)の倍数ではありません(倍数ならば11を法として0に合同)。
以上、倍数同士の和は同じ倍数となること、整数の合同算術 mod について紹介してきました。
合同算術の考え方は、数学者ガウスによるもので、同値関係や同値類、商集合や商群の考えにつながっていくものです。
倍数や割り切れる数同士の関係を考えることと、合同算術の考え方がつながっていることを感じてもらえたら嬉しいです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
(2012T)
¥5,437
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