なぜe(オイラー数)を学ぶ? 指数関数、対数関数の微分を単純化

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

高校数学では、指数関数や対数関数を学ぶときに、\(e\)(オイラー数、ネイピア数)と呼ばれる数を学びます。

なぜそんな数が登場するのでしょうか。今回は、指数関数、対数関数の微分を単純化するときに、\(e\)が自然に登場することを紹介します。

 

いくつかの指数関数、対数関数を比較する

標準的な指数関数、対数関数は、

\(f_e(x) = e^{x},g_e (x)= \log_e x\)

と表されます。なぜその底として、\(e\)を用いるのでしょうか? \(2\)や\(10\)ではダメなのでしょうか。

\(f_2(x):= 2^{x}, g_2(x) :=\log_2 x\)

\(f_{10}(x):= 10^{x}, g_{10}(x) :=\log_{10} x\)

と定義します。

 

\(e\)が頻繁に用いられるのは、その微分が簡単に表されるからです。比較してみましょう。

\[\frac{d}{dx}f_e(x) = e^{x}, \frac{d}{dx}g_e (x)= \frac{1}{x}\]

\[\frac{d}{dx}f_2(x)=\log _e 2 \cdot 2^{x}, g_2(x) =\frac{1}{(\log_e 2) x}\]

\[\frac{d}{dx}f_{10}(x)= \log _e 10 \cdot 10^{x}, \frac{d}{dx}g_{10}(x) =\frac{1}{(\log_e 10) x}\]

\(e\)を使わない指数関数・対数関数では、余計な係数が登場しています。関数を多項式の和として表すテイラー展開では、これが顕著に。

\[ e^{x}= 1+x+{x^2\over 2!}+{x^3\over 3!}+\cdots\]

\[\log _e (1+x) =x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\cdots\]

\[ 2^{x}= 1+(\log_e 2)x+(\log_e 2)^2{x^2\over 2!}+(\log_e 2)^3{x^3\over 3!}+\cdots\]

\[\log _2 (1+x) =\frac{1}{(\log_e 2)}x-\frac{1}{(\log_e 2)^2}\dfrac{x^2}{2}+\frac{1}{(\log_e 2)^3}\dfrac{x^3}{3}-\cdots\]

微分の計算は、積分の計算でも使うものです。これらの式を見れば、\(2,10\)などを底にするよりも、\(e\)の方が議論が単純になるのがわかるでしょう。

 

eが微分を単純にするのはなぜか

\(e\)という数は唐突なものではなく、指数関数の微分をシンプルにする数として自然に発見されます。

 

\(a\)を適当な正の数として、\(f_a (x) = a^x\)と定義します。その微分を定義によって計算してみましょう。

\(\frac{a^{x+h}-a^x}{h}\)を考えるわけですが、指数関数の性質を用いてくくりだせば\(a^x \frac{a^h-1}{h}\)です。

つまり、もし\( \frac{a^h-1}{h}\to 1 \quad (h\to 0)\)ならば、微分の計算は単純に\((f_a)’ = f_a\)なります。

これを満たすような\(a\)が見つかれば良いわけです。\(a^h-1 =h\)を整理すれば、\(a^h=1+h\),\(a=(1+h)^{\frac{1}{h}}\)。つまり、これは\(e\)の定義\(e:=\lim _{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}\)にほかなりません。これは\(e= \lim_ {n\to \infty} (1+\frac{1}{n})^{n}\)と言い換えても同じです。(この極限は、上に有界な単調増加列であるため存在が保証されます。)

別の言い方をすれば、\(\lim_{h\to 0} \frac{a^h-1}{h}= 1 \)を満たす\(a\)(が存在するので、それ)をオイラー数\(e\)と呼びます。同値な言い換えが出てきても戸惑わないように。

(微分方程式\(f^{\prime}(x)=f(x)\)を満たす関数として指数関数を定義することもできます。)

 

対数関数でも同様の議論により、\(e\)が発見できます。\(g_a= \log_a x\)としましょう。

\(\begin{align*} \frac{d}{dx}g_a(x)&= \lim_{h \to 0} \frac{\log_a (x+h)-\log_a x}{h} \\ &= \lim_{h \to 0} \frac{1}{h} \log_a \frac{x+h}{x} \\ &= \lim_{h \to 0} \frac{1}{x} \cdot \frac{x}{h} \log _a\left( 1+\frac{h}{x} \right) \\ \end{align*}\)

ここで\( \frac{x}{h} \log _a\left( 1+\frac{h}{x} \right)  =1\quad (h\to 0)\)となる\(a\)があれば、対数関数の微分は単純です。

\(\log _a a=1\)なので、\(( 1+\frac{h}{x} )^{ \frac{x}{h}}=a\)。\(t:=\frac{h}{x}\)とおけば、\(h\to 0\)のとき\(t\to 0\)であり、\((1+t)^{\frac{1}{t}}=a\)。これはさきほども見た、\(e\)の定義\(e:=\lim _{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}\)でした。

 

以上、なぜe(オイラー数)を学ぶかについて、指数関数・対数関数の微分の計算を単純にするから、ということを紹介してきました。

数学を学んでいて、極限の話でいきなり\(e\)が登場してきて疑問に思うのはもっともです。\(2.718\dots\)に収束すると言われても、なんでそんな極限を考えるのかわかりません。指数関数や対数関数の微分に取り組んでみて、それを単純な形で表そうとすれば、\(e\)は自然と見つかります。三角関数でラジアン(弧度法)を導入するのも、同様の理由です。

参考:ラジアン(弧度法)を学ぶのはなぜ? 三角関数の微分を単純化

指数関数や対数関数の話をする前に、先に\(e\)を極限として定義することは天下り式の議論ですが、論理的には順当なのでよく採用されます。ただ、どうして\(e\)が都合が良いとされているのかは、指数関数や対数関数の微分の計算を知っておくと、飲み込みやすいでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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