対数はなぜ生まれたか? 計算術としての側面

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

高校数学では対数、もとい対数関数を学びます。対数は何の役に立つのでしょうか?

酸塩基の強さ=pH、地震の規模=マグニチュード、音の強さ=デシベルに対数は使われています。また、微積分では\(\frac{1}{x}\)の積分としても登場します。

今回は「小数と対数の発見」を読み、対数がどのように見いだされていったかを、かんたんに紹介します。

 

計算術としての対数

対数という考え方は、ネイピア数\(e\)でも有名なジョン・ネイピアによって発見されたと言われています。彼はその結果を、1614年「驚くべき対数法則の記述(Mirifici Logarithmorum Canonis Descriptio)」にて発表しました。

突然ですが、質問です。例えば、\(\sqrt[3]{11},5^{100} \sin 45^{\circ} \cdot \sin 60^{\circ}\)の値をできるだけ細かく求めてください。それも電卓やコンピュータを使わずに。と言われたら、すごく大変ですよね。

天文学や測量において、大きなべきやルートを含む数、三角関数を含む計算は必要とされますが、細かく値を求めようとすれば、手計算が大変になります。そこで便利なのが対数です。ネイピアは、次の序文から本をはじめています。

大きな数の掛け算、割り算、開平、開立ほど、数学の実務において厄介で、計算者を悩ませ、躓かせるものはない。それらはうんざりするほど時間を食うだけでなく、いくつものつまらないミスを引きおこしがちである。そういう次第であるから、私は、これらの障害を取り除くことができる確実で便利な技法がないだろうかと、考え始めたのであり、この目的で多くの事情を考え抜いた挙句に、ついにある巧妙にして単純な規則に思いいたったのであるが、それについて、以下に述べる所存である。

引用:小数と対数の発見 p.128

ネイピアがそこで残した定義は、直線の伸び縮みによる比を使ったもので、現在とは微妙に異なるものですが、見出した性質はほぼ同じです。

\[\log (a\times b)= \log a + \log b , \log (\frac{a}{b})= \log a – \log b , \log a^ r =r \log a \]

この性質を使えば、掛け算、割り算、べき乗・ルートといった難しい計算が、足し算と引き算という簡単な計算に分解されます。最終的に値を求めるには、\(\log\)の値を予め計算しておく、すなわち対数表を使えば十分です。

 

惑星の運動の計算への応用

対数の計算は、実際に天文学へと応用されていきました。ネイピアの功績を、おそらく早い時期に見出し利用したのが、天文学者のヨハネス・ケプラーです。彼はティコ・ブラーエの観測記録から、ケプラーの法則を発見したことで有名ですね。

その第3法則は、「惑星公転周期\(T\)の2乗は、軌道長半径\(R)の3乗に比例する」というもの。

参考:ケプラーの法則を微積分を使って導出・証明してみよう

ケプラーは著書『宇宙の神秘』にて、ネイピアの対数を利用して、火星と地球の軌道半径の比を求めました。

惑星〔火星と地球〕 の周期687 と 365 \frac{1}{4} の立方根が見出され, その立方根が2乗されたならば, これらの 2乗における比は, 軌道の半径の比に正確に等しい. これらの計算は, クラヴィウスの 『実用幾何学』 に付されている立方の表によるか, あるいはスコットランドの男爵ネイピアの対数によってより容易に (longe facilius), 以下のように容易に実行される.

引用: 小数と対数の発見 小数と対数の発見 p.185-186

ケプラーの第3法則によると、\(\frac{R_M}{R_E}= (\frac{T_M}{T_E})^{\frac{2}{3}}\)を求める必要があります。これは対数を取れば、 \( \frac{2}{3}( \log T_M – \log T_E )\)と簡単になります。あとは対数表によって計算すれば良いだけ。常用対数表ならば例えば、\(\log 687 =\log (6.87\times  10^2)\)とできますね。

結果として、地球の軌道半径に対して火星の軌道半径は、1.5236倍となるようです。Wikipediaの現在の情報を使って、地球火星の軌道長半径(遠日点距離)の比を自分で計算してみると、1.61倍となりました。若干の違いはありますが、ケプラーの法則でおおよそ予測できていたことがわかりますね。

 

天文学や金利など、多くの数の掛け算やべき乗は生活の中で必要とされますが、その計算は非常にめんどくさいです。それを簡単にしてくれたのが対数というツールでした。今でこそ対数表に頼った計算は必要なくなったかもしれませんが、それでも対数を使って積を和に分解するという発想は有効です。それこそ対数微分法と呼ばれる方法もあるくらいですし。

今回の話を通して、対数がどうして生まれたか、何の役に立つものなのか、感じ取ってもらえたら嬉しいです。引用は「小数と対数の発見」をもとにしています。Kindle Unlimitedで読み放題なので、ぜひチェックしてみてくあさい。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

小数と対数の発見

小数と対数の発見

posted with AmaQuick at 2020.11.12
山本 義隆(著)
日本評論社 (2018-07-30T00:00:00.000Z)
5つ星のうち4.5
¥2,926

こちらもおすすめ

小数の発見の数学史:天文学との関係

ケプラーの法則を微積分を使って導出・証明してみよう

「数学をつくった人びと」レビュー:数千年受け継がれてきた数学

厳密さ・証明が現代数学で要求されるのはなぜ? 近代数学の歴史をたどる

「ゲーデルの不完全性定理」を誤解しないために、数学の歴史的流れを解説