超越数、代数的数とは何か?

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、数論の入門的な話題として、超越数、代数的数について、高校数学レベルの知識を前提として紹介します。

 

代数的数、超越数とは何か

数にはさまざまなクラス分けがあります。自然数\(\mathbb{N}\)、整数\(\mathbb{Z}\)、有理数\(\mathbb{Q}\)、実数\(\mathbb{R}\)、複素数\(\mathbb{C}\)と。

有理数は、2つの整数の比(分数)としてシンプルに表せます。今回注目したいのは、有理数でない数、無理数の世界です。

無理数といえば何を思い浮かべるでしょうか。\(\sqrt{2},\sqrt{3}\)のようなルートで表される数は、無理数であることを証明つきで学ぶと思います。また、円周率\(\pi\)、ネイピア数(自然対数の底)\(e\)も無理数であることが知られています。

 

いきなりですが、\(\sqrt{2},\sqrt{3}\)は代数的数で、\(\pi\)や\(e\)は代数的数ではない=超越数です。

代数的数(algebraic number)は、1次方程式や2次方程式といった何らかの代数方程式の解(多項式の根)として表される(複素)数のことです。(代数方程式は、非自明な\(n\)次方程式(\(n \geq 1\))を指すもので、\(0=0\)という自明な方程式は含みません。)

\(x^2-2=0,x^2-3=0\)の解だから、\(\sqrt{2},\sqrt{3}\)は代数的数です。有理数はすべて代数的数となります。\(x^{10}-5=0\)の解\(\sqrt[10]{5}\)も代数的数です。\(x^2+1=0\)の解\(i\)、つまり虚数単位も代数的数です。

ただしここでいう代数方程式の係数は、すべて有理数\(\mathbb{Q}\)であることに注意しましょう。もし複素数の係数まで定義に含めてしまったら、\(a\in \mathbb{C},x-a=0\)で、すべての複素数が代数的数になってしまいます。

高校数学では、2次方程式\(ax^2+bx+c=0\)について、解が複素数\(\mathbb{C}\)の範囲ならば、必ず2個の解が見つかる話を学びます(解の公式)。

より一般に、\(n\)次方程式\(a_n x^n + \cdots+ a_1 x + a_0 =0\)には、\(n\)個の解が必ず存在することが知られています。これは代数学の基本定理として知られるものです。つまり、代数的数はすべて複素数でもあります。

 

代数的数の集合は\(\overline{\mathbb{Q}}\)と書かれます。今まで述べてきてきたことから、\(\mathbb{Q}\subset \overline{\mathbb{Q}} \subset \mathbb{C}\)という包含関係が成り立ちます。そして、代数的数でない複素数を超越数(transcendental number)と呼ぶわけです。

代数的数の集合は、四則演算について閉じている(体)となります。一方で、超越数は体ではありません(超越数を\(c\)とすれば、\(c-c=0\)となるので)。\(\overline{\mathbb{Q}}\)は整数論の大きな土台となる対象と言えるでしょう。

(一般に、体\(K\)の係数を持つ代数的方程式の解が\(K\)内にあるとき、\(K\)を代数的閉体と言います。代数学の基本定理より、\(\mathbb{C}\)は代数的閉体です。しかし\(\mathbb{Q},\mathbb{R}\))は代数的閉体ではありません。そして代数的数のなす体\(\overline{\mathbb{Q}}\)は、その定義から、\(\mathbb{Q}\)を含む最小の代数的閉体となっています。)

 

e,πの超越性

代数的数は、無数に存在します。しかしながら、複素数全体から見れば、それほど「多く」はありません。\(\overline{\mathbb{Q}}\)の濃度は可算無限であり、超越数の集合の濃度は非可算であることが知られています。

参考:無限集合の多さ(濃度)はどのくらい? 可算無限、カントールの対角線論法とは

与えられた複素数が、代数的数なのか、超越数なのか判別するにはどうしたら良いのでしょうか? 簡単な例ならば先程見たように、具体的に方程式を見つけて代数的数であることを示すことができます。超越数の場合にはどうすればいいのでしょうか。超越性の判定について、一般的な条件は知られていません。

ただし、具体的な数、\(e,\pi\)などについては、超越数であることが知られています(エルミート、リンデマンによって)。

\(e\)は超越数である。

複素数\(\alpha \neq 0 \)に対して、\(\alpha,e^\alpha\)のどちらかは超越数である。

\(\pi\)は超越数である。

代数的数\(\beta \neq 0 ,1\)に対し、\(\log \beta\)は超越数である。

引用:現代整数論の風景—素数からゼータ関数まで pp.39-41

 

\(e\)は超越数であることの証明を、さわりだけ紹介しましょう。

\(e\)が代数的数であると仮定すると、そこから矛盾が導かれることを示せば良いわけです。

そこで、\(e\)を\(a_n x^n +\cdots a_1 x+ a_0 =0\)の解と仮定しましょう。

\(e^x\)の微分が\(e^x\)そのものであるという性質を使ってうまく計算すると、次の不等式が導けます。\(p\)を素数、\(C,D\)を正の定数として、\((p-1)! \leq C D^{p-1}\)。

一方で、一般に、べき乗より階乗の方が早く増加します \(\lim_{n\to \infty }\dfrac{D^n}{n!}=0\)。つまり、大きな\(p\)を取ることで、\((p-1)! > C D^{p-1}\)が成り立ちます。この二つの不等式は矛盾するので、\(e\)は超越数です。

つまり、代数的数であると仮定すると\((p-1)! \leq C D^{p-1}\)という形の不等式が導けてしまうのがおかしいわけです。それを導くために、次の積分と多項式を利用しています。

\[I(t) = e^ t \int _0 ^t e^{-x} f(x)dx=-f(t)+e^t f(0)+e^t \int_0 ^t e^{-x} f'(x)dx\]

\[f(x) = x^{p-1}(x-1)^p(x-2)^p\cdots (x-n)^p\]

この\(I\)を使った量\(J\)を調べることによって、\((p-1)! \leq |J|\leq C D^{p-1}\)と評価できます。

詳しくは、「現代整数論の風景—素数からゼータ関数まで」をご覧ください。

 

今回は、代数的数、また超越数を紹介してきました。\(e,\pi\)の超越性は、1800-1900年代に知られたものです。超越数には謎が多く、\(e+\pi ,e-\pi\)が超越数かどうかという、一見すると単純に見える数の判定問題も現在解決していないようです。

この記事は「現代整数論の風景—素数からゼータ関数まで」を参考にしています。記事執筆時点では、Kindle Unlimitedで読み放題なので、ぜひチェックしてみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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