どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「はじめよう位相空間」「解いてみよう位相空間」を紹介します。
どんな本か
「はじめよう位相空間」は、説明のていねいな位相空間論の教科書です。
位相空間論は、大学数学の基礎となるものですが、抽象的で、多くの学習者がつまづくきっかけになりやすい。著者いわく、「この本は数学専攻の学生のための位相の教科書としては不十分である」が、それだけやさしく書こうとした本であることが感じられます。
著者のホームページ、位相空間・質問箱のこれまでの 質問 と 回答は、本書や位相空間の勉強に関する質問の多くに回答があります。それだけ初学者への配慮、教育的な注意が払われているのを感じます。
一般的な位相空間論の本では、まず位相や距離空間を定義して……と始まりますが、この本では導入でトポロジー(位相幾何学)の話がされています。ゴムのような連続的な変形は、数学的には連続写像を使って表現する……連続性や位相がどんなものかイメージするのに良い題材だと思います。
本書を読むための前提知識として、(簡単な)集合論・記号論理が必要です。ただし、集合と論理、写像について復習する項目もあるので、本書だけで足りるかもしれません。
「解いてみよう位相空間」は、「はじめよう位相空間」に対応する姉妹書、演習書です。対応した各単元について、問題と解説が詳しくのっています。
特に僕が評価しているのは、「数学を正しくわかりやすく書くための3つのヒント」という文章。
- 目標を示そう
- 「道しるべ」をつけよう
- ピリオド(または句点)で終えよう。
短い文章ですが、数学的な文章、証明の書き方の良い指針となる考え方が述べられています。論理記号に関する問題も入っていて、「論理と集合から始める数学の基礎」の実践例として接続が良いと思います。
下に書いたノートのように、集合論や位相空間論の簡単な問題で論証の方法を身に着けていくことで、僕は大学数学の教科書全般を読み解けるようになっていきました。
集合論や位相空間論は、証明の書き方を身につける良いトレーニングになるので、ぜひ実践してもらいたいです。
目次
- ユークリッド幾何学とトポロジー
- ユークリッド空間とその図形
- 図形の変形と写像
- 図形を破らない変形と連続写像
- 位相同型写像といろいろな距離
- 距離空間
- 距離空間の間の連続写像と位相同型写像
- 距離空間の開集合と閉集合
- 距離空間の開集合系
- 位相空間
- コンパクト性と最大値・最小値の定理
- 連結性と中間値の定理
- ユークリッド幾何学とトポロジー
- ユークリッド空間とその図形
- 図形の変形と写像、点列の収束
- 図形を破らない変形と写像の連続性
- 図形の間の位相同型写像とR^n上の距離関数
- 距離空間と点列の収束
- 距離空間の間の連続写像と位相同型写像
- 距離空間の開集合と閉集合
- 距離空間の開集合、閉集合と開集合系
- 位相空間
- コンパクト空間
- 連結空間
- 数学を正しくわかりやすく書くための3つのヒント
気になる点
1章がトポロジーから入るのは面白いですが、これはあくまでお話であり、数学的に厳密さの話とは別物となっています。面白いけど、なんだか難しそうという印象を受けます。演習書の方でも、「解ける必要はない」と補足されてはいるが、不安になる人もいるでしょう。
問題によって難易度がだいぶ違います。論理記号や写像の話は非常にやさしいのに、その前に集合族の知識が問われる話題があります。チャレンジングな問題に★がつくなどの工夫があると、より親切だと思いました。そんなことは自分で考えて読みなさい、という話かもしれませんが(笑)。
「はじめよう位相空間」「解いてみよう位相空間」はKindleの読み放題サービスKindle Unlimitedに登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。松坂「集合・位相入門」や「論理と集合から始める数学の基礎」と並んで、地に足をつけて数学を学び始めるのに良い本だと思います。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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