どうも、木村(@kimu3_slime)です。
現在の大学数学に至るまでの人物に注目した歴史を知りたくて、「数学をつくった人びと」を読みました。
もともと評判が良かった本と聞いて読んでみたのですが、期待通り……期待以上に良い本でした。長いけど。
登場する数学者の名前を登場します。これら一人一人の人生のドラマ、生み出した数学の意義が語られているからすごい。数学的業績が著しく、かつ人間的魅力がある人々が選ばれています。
(上巻)ゼノン、エウグストス、アルキメデス、デカルト、フェルマー、パスカル、ニュートン、ライプニッツ、ベルヌーイ家、オイラー、ラグランジュ、ラプラス、モンジュ、フーリエ、ポンスレ、ガウス、コーシー、ロバチェフスキー
(下巻)アーベル、ヤコビ、ハミルトン、ガロア、ケイリー、シルベスター、ワイエルシュトラス、コワレフスカヤ、ブール、エルミート、クロネッカー、リーマン、クンマー、デデキント、ポアンカレ、カントール
数学的な内容の解説もあり、数式を含む部分もありますが、ほとんどが普通の文章。まさに読み物で、中学校-高校レベルの知識で楽しめます。(もちろん、大学で何かを学んで、これら数学者の名前を知っていた方がより楽しめますが…)
自分の数学的業績(先取権)にこだわる人もいれば(ニュートン、ライプニッツ、ラプラス)、穏やかな暮らしをする人(フェルマー、オイラー、ガウス)がいて。生きている間に仕事が評価される人とされない人がいたり。
1冊でこれだけ多くの数学者に言及し、かつ人間ドラマと数学的内容の両面を正確に描き、具体的な発言の引用から感じられる人となりや考え方を紹介する本は、他に見たことがありません。そういう意味では「重い」本ですが、それだけ充実した本と言えます。
数学の歴史を楽しく幅広く知りたい……そんな人の1冊目の本として「数学をつくった人びと」がおすすめです。
数学は人がつくったもの
とにかくこの本がよくかけているのは、序論、つまり前書きです。気に入っている部分を引用します。
偉大な数学者たちは、科学・哲学思想の発展において、科学者や哲学者に劣らない役割りを演じてきた。この役割りを、それぞれの時代の時代の支配的問題を背景に、大数学者の生涯を描き出すこと、これがこの本の目的である。重点は現代数学においた。つまり、いまも生きて何かを生みだしている、科学と数学にとってきわめて重大な、偉大でしかも単純な指導的数学思潮に重点を置いた。
引用:数学をつくった人びと p2
ポイントは、科学・哲学の思想と関連させて数学の思想を紹介しようとしていること、重点が現代数学にあることです。
普通、数学(科学)の歴史というと、人物の過去のみを探求する伝記になるか、その人物に関連する数学のみを紹介することになります。
どうしても、歴史の本を読んでいると、「でも、これって過去のことだよね…」と興味が薄れてくる瞬間があります。この本は現代数学が重点にあり、その観点から過去の数学者の業績・人となりを紹介するため、意義がないと感じることがありません。
僕は大学数学で扱うような現代の数学が、どのようにして出来上がったのか、どんな困難があってできあがってきたのかに興味があったので、ピッタリでした。
つくばplace labで"大学数学0限"的な話をした pic.twitter.com/0oabiZsJgM
— 木村すらいむ (@kimu3_slime) August 7, 2019
数学の歴史を調べてみると、発達してきた地域が違い、数学の用途や意義付けも違い、まさに人の営みなのだと感じます。
これから数学について人に紹介するときに、その内容だけでなく、属人的要素を含めて話ができるようになりたいと思いました。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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