数学における良い定義の4条件とは:線分を例に

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、「Elementary Geometry for College Students」における、良い定義の4条件について紹介します。

 

数学で用いる言葉、専門用語(term)には定義が必ずあります。線分の定義、偶数の定義、ルートの定義、といったように。

僕たちは先人が築いた定義、教科書などでよく知られた定義を用いていますが、そもそも良い定義とはなんでしょうか。

 

Elementary Geometry for College Students」では、良い定義(good definition)は次の4つの条件を満たす、としています。

  • 定義される用語(term)に名前を与えている
  • 不必要な事実の証明なしに、定義される用語と他の用語の区別がつく
  • 用語をより大きな集合またはカテゴリー(category)に落とし込んでいる
  • 逆が言える(reversible)。必要十分条件として定義している。

 

「線分」の定義を通して、良い定義の条件について考えてみましょう。

線分とは、ある直線の一部分であり、端点と呼ばれる2つの点と、その間のすべての点からなっているもののことである。

 

  • 定義される用語(term)に名前を与えている
  • 不必要な事実の証明なしに、定義される用語と他の用語の区別がつく

について。「線分とは」と最初にはっきり書かれていますね。定義するには定義する対象を表す名前がなくては、議論が始まりません。

区別についてですが、線分は直線の一部分のことであり、これは直線や点とは別物ですね。紛らわしくない言葉づかいをしましょう、ということかと思います。

 

  • 用語をより大きな集合またはカテゴリー(category)に落とし込んでいる

当たり前のことのようですが、確かに数学の定義はこのようになされていますね。

線分は、直線という大きなカテゴリーの一部分として定義されています。

(ちなみに、ユークリッド幾何学において、直線や点は未定義語です。「未定義語」と呼ばれますが、それは語彙として指定されたもので、それによって「定義された用語」を定義しているわけです。)

偶数は整数の一部分ですし、ルートは平方根の一種(正の平方根)で、平方根は実数の一種です。

 

  • 逆が言える(reversible)。必要十分条件として定義している。

線分のケースで具体的に言えば、「ある直線の一部分であり、端点と呼ばれる2つの点と、その間のすべての点からなっているもの」のことは、線分と言えるように定義しています。

「AはBである。しかし、BはAとは限らない」という文章は、定義としては困ってしまうわけです。

例えば、「みかんとは黄色い食べ物のことである」は良くない定義ですね。黄色い食べ物はみかんとは限らないので。定義は必要十分条件の形で与える必要があります。

 

以上、数学における良い定義の4条件とは何か、紹介してきました。

形式的な話ではありませんが、数学における定義の文章はどのように作られているのか、改めて考えてみたことがなかったので、面白いですね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 



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