級数に関する不等式、比較判定法とは、その証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、級数に関する不等式の示し方、比較判定法の証明を紹介します。

 

数列の各項が\(|a_n| \leq |b_n|\)を満たし、かつ級数\(\sum_{n=1}^\infty|b_n|\)が収束するならば、大小関係は保たれ

\[\sum_{n=1}^\infty |a_n| \leq \sum _{n=1}^\infty |b_n|\]

が成り立ちます。

これを級数の比較判定法(comparison test)と呼びます。

 

この方法は、級数が収束するかどうかを判定するときに、当たり前のように使われます。ある級数が絶対収束することを示したいなら、別の「収束する」級数で上から評価すれば良いわけです。典型的には、等比級数(幾何級数)や負のべき乗が利用されます。

べき級数の収束半径を求めるときに、レシオテストやルートテストといった方法がありますが、その原理ともなっています。

参考:べき級数の収束発散が円盤によって分かれること:収束半径の性質負のべき乗の無限級数Σ1/n^pの収束・発散の判定方法複素べき級数、収束半径とは:指数・三角関数を例に

 

 

では、証明していきましょう。

各項について成り立つ不等式は、極限を取っても成り立つことを利用しましょう。

数列\((a_n),(b_n)\)が、すべての\(n \in \mathbb{N}\)に対して\(a_n \leq b_n\)を満たし、極限値を持つ\(\lim_{n\to \infty}a_n=a\)、\(\lim_{n\to \infty}b_n=b\)とする。

このとき、\(a \leq b\)が成り立つ。

これを利用するために、\(S_N := \sum_{n=1}^N |a_n|\)、\(T_N:= \sum_{n=1}^N |b_n|\)と置きましょう。それぞれ絶対値の和なので、非負であることに注意。

\(|a_n|\leq |b_n|\)が常に成り立つことから、有限部分和については\(S_N \leq T_N\)が成り立ちます。また仮定より、\(\lim_{N\to \infty}T_N \)は存在します。

\(T_N\)は非負なので、\(S_N \leq T_N \leq \lim _{N\to \infty}T_N\)が成り立ちます。したがって、\(S_N\)は上に有界な単調増加な数列です。それは実数の公理より、収束します。よって、上で紹介した定理が利用できて、

\[\lim_{N\to \infty}S_N \leq\lim_{N\to \infty}T_N \]

\[\sum_{n=1}^\infty |a_n| \leq \sum _{n=1}^\infty |b_n|\]

が成り立つことがわかりました。

単に

\[\sum_{n=1}^N |a_n| \leq \sum_{n=1}^N |b_n| \]

が成り立つから、極限を取って成り立つ、といえば簡単ですが、それは形式的な議論です。実際は、両辺の極限値が存在する、収束することが示せなければ、極限を取った議論をすることはできません。

 

比較判定法は、発散バージョンも成り立ちます。

数列の各項が\(|a_n| \leq |b_n|\)を満たし、かつ級数\(\sum_{n=1}^\infty|a_n|\)が発散するならば、\(\sum_{n=1 }^\infty |b_n|\)も発散する。

同様に議論して、

\[S_N \leq T_N\]

が成り立ちます。およそ左辺が発散するので、右辺が発散するわけです。

詳しく述べましょう。\(\lim_{N\to \infty}T_N= \infty\)とは、任意の\(R\)に対し「\(N \geq N_1\)ならば\(T_N >R\)」を満たす\(N_1 \in \mathbb{N}\)が存在することを示しましょう。

\(R\)を任意のものとします。このとき、\(\lim_{N\to \infty}S_N= \infty\)から、「\(N \geq N_1\)ならば\(S_N >R\)」を満たす\(N_1 \in \mathbb{N}\)が存在します。\(N \geq N_1\)のとき、\(T_N \geq S_N >R\)も成り立っています。よって、発散することが示せました。

 

以上で述べた結果は、絶対収束に関するものでした。この結果は正項級数に一般化されます。

数列の各項が\(0 \leq a_n \leq b_n\)を満たし、かつ級数\(\sum_{n=1}^\infty b_n\)が収束するならば、大小関係は保たれ

\[\sum_{n=1}^\infty a_n \leq \sum _{n=1}^\infty b_n\]

が成り立ちます。

発散についても同様。

正の項という仮定があると、級数は和の数を増やせば単調に値が増える:単調性を持ちます。その単調性を使えば、絶対値のケースと全く同じ議論です。

 

以上、級数に関する不等式、比較判定法とは何か、その証明を紹介してきました。

基本的には、不等式は極限を取っても保たれる(ただし等号が成り立つ可能性がある)というアイデアです。級数の収束を示すために不等式を作るという考え方は基本的なので、ぜひ使えるようになりましょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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