どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、万有引力の位置エネルギー
\[ \begin{aligned}U= -G\frac{m_1 m_2}{r}\end{aligned} \]
を、微積分によって導出、証明します。
まず、状況設定を確認しましょう。質量\(m_1 ,m_2\)の物体があり、その間の距離が\(r\)であり、万有引力が働いているとします。その力は、
\[ \begin{aligned}F =-G \frac{m_1 m_2}{r^2}\end{aligned} \]
と表されます(逆二乗則)。マイナスは力の働く向きを表しています。\(G\)は万有引力定数(重力定数)と呼ばれる定数です。
その時刻が\(t_1\)から\(t_2\)と変化し、距離が\(r_1 \)から\(r_2\)まで変化するときの、\(m_1\)の物体がもつ万有引力によるエネルギー(重力ポテンシャル)を求めてみましょう。物体の距離\(r= r(t)\)は時間の関数です。
基本的な方針は、力学的エネルギー保存の法則と同様です。
運動方程式は
\[ \begin{aligned}ma =F\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}m \frac{d^2 r}{dt^2} = -G \frac{m_1 m_2}{r^2}\end{aligned} \]
となります。両辺に速度\(v= \frac{dr}{dt}\)をかけて、両辺を\(t\)について積分しましょう。
\[ \begin{aligned}\int_{t_1}^{t_2} m\frac{d^2 r}{dt^2}v dt = \int_{t_1}^{t_2}-G \frac{m_1 m_2}{r^2}v dt\end{aligned} \]
左辺が運動エネルギーで、\(\frac{1}{2}mv^2\)の形が出てきます。右辺が位置エネルギーです。
\(t= r(t)\)と変数変換すると、\(\frac{dr}{dt}= v\)であり、積分範囲は\(r(t_1)=r_1\)から\(r(t_2)=r_2\)に対応します。したがって、位置エネルギーは
\[ \begin{aligned} &\Delta U \\ &=\int_{t_1}^{t_2}-G \frac{m_1 m_2}{r^2}v dt \\&= \int_{r_1}^{r_2}-G \frac{m_1 m_2}{r^2} dr \\ &= [G \frac{m_1 m_2}{r}]_{r_1}^{r_2} \\ &=Gm_1m_2(\frac{1}{r_2}-\frac{1}{r_1})\ \end{aligned} \]
となります。\(\frac{d}{dr}(\frac{1}{r}) = -\frac{1}{r^2}\)です。
しばしば、一方の基準点\(r_2 \)は、無限遠点\(r_2 = \infty\)として選ばれます。このとき、積分は広義積分となり、位置エネルギーは
\[ \begin{aligned} & U \\ &= \lim _{r_2 \to \infty}\int_{r_1}^{r_2}-G \frac{m_1 m_2}{r^2} dr \\ &=\lim_{r_2 \to \infty}(Gm_1m_2(\frac{1}{r_2}-\frac{1}{r_1}))\\&= -G\frac{m_1m_2}{r_1}\ \end{aligned} \]
と求められました。
基準点を\(r_2 = \infty\)とするのは、万有引力が\(\lim_{r \to \infty}G\frac{m_1 m_2}{r^2}=0\)と消えるからです。バネの位置エネルギー\(\frac{1}{2}kx^2\)では、しばしば\(x=0\)を基準にします。それは\(F=kx =0\)となる釣り合いの位置だからです。同様に考えて、万有引力では一方の基準点を無限遠点とすることで、
\[ \begin{aligned}U(r) = -G\frac{m_1m_2}{r}\end{aligned} \]
とシンプルに表すことができます。
基準点では、きちんと\(U(\infty)=\lim_{r\to \infty} U(r)= 0\)となっています。位置エネルギーが0となる点を基準にするのが、さまざまな問題を相手にするときに計算が楽になって良いですね。
万有引力による位置エネルギーがなぜマイナスになるかといえば、基準点を無限遠方として選んでいるからです。別の選び方をすればプラスになりますが、普通は無限遠方とすることが多いでしょう。
2つの物体の距離が近くなるほど、位置エネルギーのマイナスの大きさは大きくなります。力学的エネルギー\(K+U\)保存の法則から、運動エネルギーが増加して、物体はより速くなるわけです。
導出は丁寧にやりましたが、過程を省略すれば次のように導出できます。位置エネルギーとは力の積分である
\[ \begin{aligned}U = \int_{r_1} ^{r_2} F(r) dr\end{aligned} \]
と知っていれば、逆二乗則と積分計算によって求められるでしょう。
以上、万有引力の位置エネルギーを微積分で導出、証明してきました。万有引力と位置エネルギーの式の形が似ている
\[ \begin{aligned}F= -G\frac{m_1 m_2}{r^2}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}U = -G\frac{m_1 m_2}{r}\end{aligned} \]
のは偶然ではありません。微積分を使って力とエネルギーの関係を理解すると、高校物理の公式は納得しやすいでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
Physics for Scientists and Engineers With Modern Physics: Technology Update
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