ラプラス変換の微分とは:証明と応用

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、ラプラス変換の微分について紹介します。微分のラプラス変換とは別物であることに注意。

 

ラプラス変換

\[ \begin{aligned}L(f)(s) = \int_0 ^\infty e^{-st}f(t)dt\end{aligned} \]

を変換後の変数\(s\)について微分しましょう。その結果は、

\[ \begin{aligned} \frac{dL(f)}{ds} = -L(tf(t))\end{aligned} \]

となります。

 

証明しましょう。微分と積分の順序交換を用います。すると、

\[ \begin{aligned} \frac{dL(f)}{ds} &= \frac{d}{ds} (\int_0 ^\infty e^{-st}f(t)dt) \\ &= \int _0 ^\infty \frac{\partial }{\partial s}(e^{-st}f(t))dt \\ &= \int_0 ^\infty -t e^{-st}f(t)dt \\ &= L(tf(t))\end{aligned} \]

と得られました。

 

微分と積分の順序交換(パラメータつき積分の微分)について紹介しておきます。

\[ \begin{aligned}F(s): = \int_I f_s(t) dt\end{aligned} \]

と表される積分の微分について考えましょう。\(f_s\)は絶対可積分(ルベーグ可積分、\(L^1\))と仮定します。

被積分関数が偏微分可能で、かつ\(J\subset I\)において

\[ \begin{aligned}\sup _{s \in J} |\frac{\partial f_s}{\partial s}(t)| \leq g(t)\end{aligned} \]

を満たす可積分関数\(g\)が存在するとします。このとき、\(F\)は\(s \in J\)において微分可能で、

\[ \begin{aligned}\frac{dF}{ds}(s) = \int _I \frac{\partial f_s}{\partial s}(t)dt\end{aligned} \]

が成り立ちます。

証明については、吉田「ルベーグ積分入門 使うための理論と演習」を参照してください。

 

今回の状況ならば、\(f_s (t) := e^{-st}f(t)\)です。ラプラス変換が存在するよう、\(f\)は絶対可積分と仮定します。

そして、偏微分\(\frac{\partial }{\partial s}(e^{-st}f(t))\)は存在します。さらにその上限

\[ \begin{aligned} \sup _{s \in J} |-t e^{-st}f(t)| &= |tf(t)| \end{aligned} \]

となり、\(tf(t)\)は(\(J\)として有界な区間を考えることで)絶対可積分です。よって、積分と微分の順序交換が正当化されました。

 

ラプラス変換の2回微分、一般の微分は、同様にして

\[ \begin{aligned} \frac{d^2L(f)}{ds^2} = L(t^2f(t))\end{aligned} \]

\[ \begin{aligned} \frac{d^n L(f)}{ds^n} =(-1)^n L(t^nf(t))\end{aligned} \]

となります。

 

ラプラス変換の微分は、変数係数の微分方程式を解くために応用できます。

\(t \frac{dx}{dt}(t)\)のラプラス変換をしてみましょう。今回の結果と、微分のラプラス変換を使うと、

\[ \begin{aligned} L(t\frac{dx}{dt}(t)) &= -\frac{d}{ds}(L(\frac{dx}{dt})) \\&= -\frac{d}{ds}(sL(x) -x(0)) \\ &= -L(x)-s\frac{dL(x)}{ds}\end{aligned} \]

となります。2階微分\(t \frac{d^2 x}{dt}\)も同様にして、

\[ \begin{aligned} L(t\frac{d^2x}{dt^2}(t)) &=- \frac{d}{ds}(L(\frac{d^2x}{dt^2})) \\&= -\frac{d}{ds}(s^2L(x) -sx(0)-\frac{dx}{dt}(0)) \\ &= -2sL(x)-s^2\frac{dL(x)}{ds}+y(0)\end{aligned} \]

となります。

例えばラゲールの微分方程式を解くためにこれは使えます。別記事で紹介予定。

 

以上、ラプラス変換の微分とは何か、その証明と応用を紹介してきました。

結果としては\(-tf(t)\)のラプラス変換に対応し、それは変数係数の微分方程式を解くために応用できます。やはりラプラス変換は微分について都合が良い性質を持っていますね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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