どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、ラプラス変換の第一シフト定理(s推移法則)とは何か、その証明と応用例を紹介します。
その主張は、次の通りです。
第一シフト定理(first shifting theorem)、s推移法則、移動法則(s-shifting)
\(f(t)\)をラプラス変換を持つ関数、\(c\)を実数とする。このとき、
\[ \begin{aligned}L(f)(s-c)=L(e^{ct}f(t))\end{aligned} \]
が成り立つ。
変換後の変数を\(s \mapsto s-c\)とシフト(推移)させることは、\(e^{ct}\)をかけることに対応している、という内容です。
証明しましょう。ラプラス変換の定義を思い出すと、
\[ \begin{aligned}L(f)(s):=\int _0 ^\infty e^{-st}f(t)dt\end{aligned} \]
です。ここで\(s\)を\(s-c\)に置き換えれば、
\[ \begin{aligned} L(f)(s-c)&=\int _0 ^\infty e^{-(s-c)t}f(t)dt
\\ &=\int _0 ^\infty e^{-st}(e^{ct}f(t)dt)
\\ &= L(e^{ct}f(t))\end{aligned} \]
と結果が得られました。
簡単な応用を2つ紹介します。
ひとつは、\(f(t)\)のラプラス変換を知っているとき、\(e^{ct}f(t)\)の形のラプラス変換も求められることです。
例えば、\(L(\cos \omega t)=\frac{s}{s^2+\omega ^2}\)です。これと第一シフト定理を合わせれば、\(L(e^{ct}\cos \omega t)= \frac{s-c}{(s-c)^2+\omega ^2}\)と求められますね。
もうひとつは、\(s-c\)を使って表された関数の逆ラプラス変換を求める方法です。
\(L(H(t-a))=\frac{e^{-as}}{s}\)と知っているとき、\(\frac{e^{-as}}{s+2}\)の逆ラプラス変換を求めてください、という問いがあったとしましょう。ここで\(H\)は単位ステップ関数です。
逆変換したい関数は、\(s\)そのものではなく\(s+2\)を含んでいます。一方、基本的にはラプラス変換の公式は\(s\)を変数とするものです。
これを調整するために、第一シフト定理を使いましょう。\(c=-2\)とすれば
\[ \begin{aligned}L(f)(s+c)=L(e^{-2t}f(t))\end{aligned} \]
となります。これらを合わせれば、
\[ \begin{aligned} L(e^{-2t}H(t-a))(s)&=L(H(t-a))(s+2) \\ &=\frac{e^{-a(s+2)}}{s+2} \\ &= e^{-2a} \frac{e^{-as}}{s+2}\end{aligned} \]
なので、逆変換は
\[ \begin{aligned}L^{-1}(\frac{e^{-as}}{s+2}) =e^{2a}e^{-2t}H(t-a)\\= e^{-2(t-a)}H(t-a)\end{aligned} \]
と求められました。これは単位ステップ関数をインプットとする回路の微分方程式を解く中で登場します。
参考:単位ステップ関数とは、ラプラス変換と微分方程式への応用
以上、ラプラス変換の第一シフト定理(s推移法則)とは何か、その証明と応用を紹介してきました。
証明の中身は難しくありません。変換後の\(s\)は\(s-c\)にずらせる、それに伴って変換する関数は\(e^{ct}\)倍される、という結果を知っておくと、簡単にラプラス変換・逆ラプラス変換できる関数が増えるでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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