ロンスキアンによる線形独立性の判定、証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、ロンスキアンによる線形独立性の判定と、その証明を紹介します。

 

ロンスキアンとは

2階の線形微分方程式

\[\frac{d^2 u}{dt^2} + a (t)\frac{d u}{dt}+b(t) u=0\]

について考えましょう。これを満たす線形独立な関数は、基本解と呼ばれます。

2階の線形微分方程式では、基本解はちょうど2つ存在し、すべての解はその線形結合で表せます。つまり、一般解を探すためには、線形独立な2つの解を見つければ良いわけです。

参考:線形微分方程式はなぜ指数関数e^{λt}と仮定して解いて良いか

 

では、何らかの方法で見つけた関数が線形独立かどうか、どうやって確かめれば良いでしょうか。

それを判定する方法のひとつが、ロンスキアン(Wronskian)、ロンスキー行列式と呼ばれる行列式です。

\[W(u_1,u_2 )(t):= \det \begin{pmatrix} u_1& u_2\\ \frac{du_1}{dt}&\frac{du_2}{dt} \end{pmatrix}\]

ロンスキアンを使うと、線形独立性をロンスキアンが0でないかどうかによって判別できます。

\(u_1,u_2\)を線形微分方程式の解としましょう。\(u_1,u_2\)が区間\(I\)において線形独立であることは、すべての\(t \in I\)に対し\(W(u_1,u_2) (t)\neq 0\)が成り立つことと同値であることが知られています。

 

この性質を使って、\(u_1=e^{\lambda t},u_2=t e^{\lambda t}\)(\(\lambda\)は実数)が線形独立であることを示しましょう。

行列式の性質(多重線形性)に注意して計算すると、

\[\begin{eqnarray} W(u_1,u_2 )(t)&=& \det \begin{pmatrix} e^{\lambda t}& te^{\lambda t}\\ \lambda e^{\lambda t}&e^{\lambda t}+\lambda te^{\lambda t} \end{pmatrix} \\ &=& e^{2 \lambda t}\det \begin{pmatrix} 1& t\\ \lambda &1+\lambda t \end{pmatrix} \\ &=&e^{2 \lambda t}(1+\lambda t- \lambda t) \\ &=& e^{2\lambda t} \\ &\neq &0 \end{eqnarray}\]

なので、線形独立性がわかりました。

 

ロンスキアンは\(n\)階の線形微分方程式

\[\frac{d^n u}{dt^n} + \cdots +a_1 (t)\frac{d u}{dt}+a_0(t) u=0\]

に対しても、次のように定義され、同じ性質が成り立ちます。

\[W(u_1,\dots,u_n)(t):= \det \begin{pmatrix} u_1& \dots &u_n\\ \frac{d u_1}{dt}&\cdots& \frac{d u_n}{dt}  \\ \vdots && \vdots \\ \frac{d^{n-1} u_1}{dt^{n-1}}&\cdots& \frac{d^{n-1} u_n}{dt^{n-1}}\end{pmatrix}\]

 

ロンスキアンの性質の証明

では、ロンスキアンの性質を証明しましょう。

\(u_1,\dots,u_n\)を区間\(I\)における線形微分方程式の解とする。このとき、

  1. \(u_1,\dots,u_n\)が\(I\)において線形独立
  2. すべての\(t \in I\)に対し、\(W(u_1,\dots,u_n)(t) \neq 0\)

は同値である。

 

対偶として、1の否定:線形従属ならば、2の否定:ある点\(t\in I\)で\(W(u_1,\dots,u_n)(t) =0\) を示します。

線形従属と仮定すると、\(C_1 u_1+\cdots+ C_n u_n=0\)を満たすすべては0でない数\(C_1,\dots, C_n\)が存在します。この等式を繰り返し微分すると、\(C_1 \frac{du_1}{dt} +\cdots + C_n \frac{du_n}{dt}=0\)、…、\(C_1 \frac{d^{n-1}u_1}{dt^{n-1}} +\cdots + C_n \frac{d^{n-1}u_n}{dt^{n-1}}=0\)という等式が得られます。

これはロンスキアンの定義式

\[W(u_1,\dots,u_n)(t):= \det \begin{pmatrix} u_1& \dots &u_n\\ \frac{d u_1}{dt}&\cdots& \frac{d u_n}{dt}  \\ \vdots && \vdots \\ \frac{d^{n-1} u_1}{dt^{n-1}}&\cdots& \frac{d^{n-1} u_n}{dt^{n-1}}\end{pmatrix}\]

において、\(n\)個の数からなる列ベクトルが線形従属であることを意味します。

可逆な行列・行列式の性質から、行列の列ベクトルが線形従属であることは、その行列式が0となることと同値です。したがって、\(W(u_1,\dots,u_n)(t) =0\)が得られました。

 

逆に、2の否定:ある点\(t_0\in I\)で\(W(u_1,\dots,u_n)(t_0) =0\)ならば1の否定:\(u_1,\dots,u_n\)が線形従属を示しましょう。

\(W(u_1,\dots,u_n)(t_0) =0\)と仮定すると、再びさきほどの議論から、列ベクトルが線形従属です。つまり、

\[C_1 \frac{du_1}{dt} (t_0)+\cdots + C_n \frac{du_n}{dt}(t_0)=0\]

\[C_1 \frac{d^{n-1}u_1}{dt^{n-1}} (t_0)+\cdots + C_n \frac{d^{n-1}u_n}{dt^{n-1}} (t_0)=0\]

を満たすすべては0でない数\(C_1,\dots, C_n\)が存在します。

ここで\(u(t) :=C_1u_1(t)+\cdots+C_n u_n(t) \)と置くと、\(u\)は線形微分方程式の解\(u_1,\dots,u_n\)の線形結合なので、\(u\)も方程式の解です。そして、\(u(t_0)=0\)、…、\(\frac{d^{n-1}u}{dt^{n-1}}(t_0)=0\)を満たします。

一方で、\(v(t) =0\)を考えると、\(v\)も線形方程式の解で、同じ初期条件\(v(t_0)=0\)、…、\(\frac{d^{n-1}v}{dt^{n-1}}(t_0)=0\)を満たします。線形微分方程式の初期値問題は解の一意性を持つので、\(u(t)= v(t)\)です。

つまり、関数として\(C_1u_1+\cdots+C_n u_n=0\)が成り立つので、線形従属であることが示せました。

 

ロンスキアンによる線形独立性の判定は、関数が線形微分方程式の解となっていることがポイントです。

一般には、「線形独立ならばロンスキアン=0」は成り立ちますが、「ロンスキアン=0だからといって線形独立」であるとは限りません。線形微分方程式の解でなければ、ロンスキアンによる判定法は使えない(正しくない場合がある)のです。

\(u_1 (t)=t^2\)、\(u_2 (t)=t|t|\)を区間\(I=[-1,1]\)において考えましょう。

\[\frac{du_2}{dt}(t)= \begin{cases}2t & (t \geq 0 )\\-2t & (t<0)\end{cases}\]

なので、\( t \geq 0\)のときは

\[W(u_1,u_2 )(t)= \det \begin{pmatrix} t^2& t^2\\ 2t&2t \end{pmatrix}\\ =0\]

\(t<0\)のときも

\[W(u_1,u_2 )(t)= \det \begin{pmatrix} t^2& -t^2\\ 2t&-2t \end{pmatrix}\\ =0\]

となります。

しかし、\(u_1,u_2\)は線形独立です。\(C_1u_1+C_2 =0\)と仮定します。\(t=1\)のときを考えれば\(C_1+C_2=0\)で、\(t=-1\)のときを考えれば\(C_1 -C_2=0\)です。したがって、\(C_1 0\)、\(C_2=0\)が導かれました。

 

以上、ロンスキアンによる線形独立性の判定と、その証明を紹介してきました。

線形微分方程式において、線形独立な解、基本解は重要ですが、その判定方法としてロンスキアンと呼ばれる行列式が役立つことを知ってもらえたら嬉しいです。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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