おもりバネダンパ系:減衰振動の運動方程式、微分方程式の解き方

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、おもりバネダンパ系:減衰振動の運動方程式、微分方程式の解き方を紹介します。

 



おもりバネダンパ系とは

おもりバネダンパ系(mass-spring-damper system)とは、おもりのついたバネに、さらにダンパ(減衰器 damper)が加わった仕組みのことです。

ダンパの一種であるダッシュポットは次の図のような形で、油などの液体によって外部からの衝撃を吸収します。

画像引用:A simplified diagram of a Dashpot – Egmason

ドアが音を立てずにしまるようにする装置:ドアクローザーにも、ダンパは使われているようですね。

参考:ダッシュポット – αGEL

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ダンパは物体の速度に応じて逆向きの力\(F= -c \frac{dx}{dt}\)を起こします。\(c>0\)は減衰係数(damping constant)と呼ばれる定数です。これは空気抵抗と同じ形ですね(粘性抵抗)。

では、おもりバネダンパ系の運動方程式を立ててみましょう。おもりバネ系にダンパの力が加わるので、

\[ \begin{aligned}m\frac{d^2 x}{dt^2} = -kx -c\frac{dx}{dt}\end{aligned} \]

となります。

 

微分方程式の解き方

では、この運動方程式を微分方程式として解いてみましょう。これは2階線形微分方程式なので、その解き方を適用します。

参考:2階線形常微分方程式の解き方、学ぶ意味:熱方程式への応用を例に線形微分方程式はなぜ指数関数e^{λt}と仮定して解いて良いか

微分方程式を整理すると

\[ \begin{aligned}\frac{d^2 x}{dt^2} +\frac{c}{m} \frac{dx}{dt} +\frac{k}{m}x =0\end{aligned} \]

で、対応する特性方程式は

\[ \begin{aligned}\lambda ^2 +\frac{c}{m} \lambda +\frac{k}{m} =0\end{aligned} \]

です。これを解くと

\[ \begin{aligned} \lambda &= \frac{-\frac{c}{m} \pm \sqrt{(\frac{c}{m} )^2 – 4 \frac{k}{m}}}{2}  \\ &= \frac{-c\pm \sqrt{c^2-4mk}}{2m} \end{aligned} \]

となります。これは\(c^2-4mk\)の符号によって、解のようすが変わってきますね。それぞれのケースを考えていきましょう。

 

過減衰

\(c^2 -4mk>0\)のときを考えます。特性方程式が2つの異なる実数解を持つので、微分方程式の解は

\[ \begin{aligned}x(t)=C_1 e^{(\frac{-c+ \sqrt{c^2-4mk}}{2m} ) t}+C_2 e^{(\frac{-c- \sqrt{c^2-4mk}}{2m} ) t}\end{aligned} \]

となります。指数部分はどちらも負なので、\(\lim_{t \to \infty} x(t)=0\)ですね。

このケースでは減衰が強く、振動は起こりません。この現象を、過減衰(overdamping)と呼びます。

 

臨界減衰

\(c^2 -4mk=0\)のときを考えます。特性方程式が重解を持つので、微分方程式の解は

\[ \begin{aligned}x(t) =(C_1 +C_2 t) e^{-\frac{c}{2m}t}\end{aligned} \]

となります。指数部分は負であり、\(t\)がかかるの部分は指数に負けるので、\(\lim_{t \to \infty} x(t)=0\)ですね。

全体としては過減衰のケースと似た挙動です。これを臨界減衰(critical damping)と呼びます。

初期位置が正、初速度が負のときは、\((C_1 +C_2 t)=0\)となる時刻が存在し、そこでは\(x(t)=0\)となります。

 

不足減衰:減衰振動

\(c^2 -4mk<0\)のときを考えると、特性方程式は共役な複素数解を持ちます。実部は\(\frac{-c}{2m}\)、虚部は\(\frac{\sqrt{4mk-c^2}}{2m}\)なので、微分方程式の解は

\[ \begin{aligned}x(t) =e^{-\frac{c}{2m}t }(C_1 \cos(\frac{\sqrt{4mk-c^2}}{2m} t)+C_2 \sin(\frac{\sqrt{4mk-c^2}}{2m}))\end{aligned} \]

となりました。

\(\omega_c :=\frac{\sqrt{4mk-c^2}}{2m}\)と置き(角周波数)、三角関数を合成すると、

\[ \begin{aligned}x(t) = C_3 e^{-\frac{c}{2m}t} \cos (\omega_c t – C_4)\end{aligned} \]

と表せます(\(C_3 =C_1^2+C_2^2\)、\( \tan C_4 = \frac{C_2}{C_1} \))。

 

コサインの大きさは最大で1なので、全体としては指数関数によって抑えられています。

\[ \begin{aligned}|x(t)| \leq C_3 e^{ -\frac{c}{2m}t}\end{aligned} \]

これは不足減衰(underdamping)と呼ばれるケースで、これが減衰振動(damped oscillation)を表していますね。

振動の周期\(T_c\)は、\( \omega_c T_c =2\pi\)より、\(T_c = \frac{2\pi}{\omega _c}= \frac{4\pi m}{\sqrt{4mk-c^2}}\)です。

\(c\)を小さくすると、おもりバネ系の周期\(T _0= 2\pi \sqrt{ \frac{m}{k}} \)に近づいていきますね。\(c\)を大きくすると(\(\sqrt{4mk}\)に近づけると)、周期は限りなく大きくなっていき、臨界減衰、過減衰のケースに近づいていきますね。

 

以上、おもりバネダンパ系:減衰振動の運動方程式、微分方程式の解き方を紹介してきました。

減衰係数が大きすぎないケースでは、減衰振動が見られることがわかりましたね。2階線形微分方程式の応用としても、おもりバネダンパ系、減衰振動を知っておくと良いでしょう。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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