どうも、木村(@kimu3_slime)です。
中学からの数学では、方程式の解という言葉が登場します。しかし、それが何なのか、なんとなくは聞きますが、きちんとした説明を聞いた記憶が僕にはありません。
そこで、今回は方程式の解とは何かを簡単に述べ、その後、より詳しく、数式、等式とは何か、方程式と恒等式の違いなどを紹介したいと思います。
方程式の解とは?
例えば方程式\(2x =x+3\)について、「この方程式の解は\(3\)である」というような言い方をします。
平成28年度のよく引き合いに出される問題。この問題が優れていることは否定しない。しかし誤答した生徒が「方程式の解の意味を理解していない」という分析には疑問を呈したい。
誤答した生徒の多くは、少し長文になった問題文を読み取る持久力に欠けているからだと思う。 pic.twitter.com/PqsaK73gTS— mmm (@muto60) February 10, 2021
\(a\)を特定の数とします。\(x=a\)が方程式\(2x =x+3\)の解であるとは、\(x\)を\(a\)に置き換えた等式\(2a=a+3\)が成り立つことです。\(x\)に\(a\)をあてはめる、代入する、特定の値を定めるとも言い換えられるでしょう。\(a\)が解であることは、\(a\)は方程式を満たす、とも言います。
等式が成り立たないときは、\(x=a\)はその方程式の解ではないといいます。
\(x=3\)は\(2x=x+3\)の解です。なぜなら、\(x=3\)のとき左辺は\(2x=6\)、右辺は\(x+3=6\)で、両辺が等しい(等式が成り立つ)からです。\(x=6\)は解ではありません。左辺は\(2x=12\)、右辺は\(x+3=9\)で、両辺は等しくない\(12 \neq 9\)からです。
「\(6\)がこの方程式の解だと思う」誤答は、とりあえず計算して出てきた左辺の値や右辺の値を「答え」だと思うことにより生じているのかもしれませんね。問われているのは、\(x\)に何の数字をあてはめるとその等式が成り立つか、ということです。
教科書ではしばしば、「\(2x=x+3\)の両辺に\(-x\)を加えて、\(x=3\)が解である」という議論をします(移項)。これは解がわかりやすい形にするための等式の変形です。しかしこの変形を行わなくても、最初の形\(2x=x+3\)を満たす特定の値\(x=a\)のことを、解と呼ぶことにしています。
数学における「この方程式を解け、解を求めよ」という問題は、その方程式を満たすすべての解を求めよ、という問題であることに注意しましょう。
1次方程式の解は、(存在すれば)ただひとつであることが知られています。一方で、2次方程式の解は、一般には2つ存在します。例えば、\(x^2=1\)の(すべての)解は、\(x=1\)または\(x=-1\)です。
問題の答え、回答という意味で、「解」という概念を捉えてしまうと、混乱するでしょう。学校の算数・数学においては、答えは数字である(存在し、それがただひとつである)ような問題をよく考えます。
しかし、方程式の解は、いつでも存在する保証はありませんし、存在しても1つではない(2つ以上ある)ケースもあります。例えば、方程式\(0x=1\)の解は存在しません。どんな数\(x\)を考えても、常に\(0x=0\)で、等式は成り立たない\(0 \neq 1\)ので。これを「解なし」と呼んだりします(良い呼び方だとは思いませんが…)。「方程式の解が存在しない」ということは、「答えがない」のではなく、「解を持たない」というのが回答です。
等式・変数とは何か
方程式という言葉について正確に理解するには、まず等式や変数について知っておく必要があるでしょう。
等式(equality)とは、等号\(=\)を使って左辺と右辺の指すものが等しいと述べた文章のことです。あらゆる等式は、正しいか正しくないかが定まっています(命題)。数学において\(a=b\)と書くときは、「\(a=b\)が正しい」と主張しているのです。
例えば、\(1+2=3\)や\(0=1\)はどちらも等式です。前者は正しい(真である)等式で、後者は誤った(偽である)等式です。
(「a=bのように左辺と右辺が等しい式を等式といいます。」という説明が見られることがありますが、この言い方は微妙です。「等しい式」でなく「等しいと述べる式」という方が妥当でしょう。等しい式を等式と呼んだら、等式が「成り立つ」とはどういうことなのか、二重になってまぎらわしくなります。)
等号の左辺や右辺に登場する文字列は、数式(mathematical expression)と呼ばれるものです。例えば、\(0\)や\(1\)といった数字は数式ですし、数を加減乗除の記号でつないだ\(1+2\)も数式です。数式の構成パーツは、項(term)と呼ばれています。
中学校以降の数学では、等式を構成する数式のパーツとして、具体的な数だけでなく、\(x,y\)のような数学記号・文字式(mathematical symbol)が登場します。
この記号は、特定の数を表していない、変わりうる数を表すものとして、変数(variable)と呼ばれます。
例えば、\(2x=1\)という等式を考えましょう。これは\(x\)が何を指すのか(\(x\)の値が何であるのか)決まっていなければ、正しいとも間違っているとも言えません。\(x=0\)ならば\(2x=1\)は正しくないですし、\(x=\frac{1}{2}\)ならば\(2x=1\)は正しいです。\(x\)を特定の数で置き換えることを、代入(substitution)と呼びます。
\(x\)が何を指すか決まっていない、変化しうる状態であっても、\(2x\)という数式や\(2x=1\)という等式を考えることはできます。変数という考え方を導入することで、不特定多数の、一般的な形をした等式について考えられます。
ひとつの記号(変数)には、ひとつの値(何らかの数)が定まっているもの、と考えています。\(x=1\)かつ\(x=2\)ということはありえません(\(x=1\)とすれば、等式\(x=2\)は誤り)。変数の記号には、\(x,y\)といった記号がよく使われますが、何の記号を使っているかは本質ではありません。\(2x\)のことを、\(2\square \)と書こうが、\(2(エックス)\)と書こうが、(伝われば)意味は同じになります。
(\(2x\)や\(x^2+1\)のように、変数を使って表される数式は、多項式 polynomialと呼ばれます)
方程式と恒等式の違い
変数を等式は、おおざっぱに方程式と恒等式に分類されます。
等式を方程式(equation)と呼ぶときは、その等式を成り立たせる特定の変数の値は何か(それは存在するか、いくつあるか)という問題を考えています。
例えば、\(2x=1\)を方程式として見るときは、\(2x=1\)を成り立たせる\(x\)の値は何か、と考えているわけです。
方程式と見た目は似ているのが、恒等式(identity)です。
例えば、\(2(3x+1)=6x+2\)という等式は、\(x\)がなんであろうが成り立ちます。すべての\(x\)について成り立つ等式を、恒常的に等しい式、恒等式と呼ぶわけです。
方程式か恒等式か、等式の形だけからは見分けることができません。例えば\(2(3x+1)=6x+2\)を方程式として見ることはできて(普通はそうしませんが)、そのときすべての\(x\)がこの方程式の解となります。
\(x^2-1=(x+1)(x-1)\)という因数分解は、すべての\(x\)について成り立つ等式であり、恒等式です。\(x^2-1=0\)を方程式として見るならば、その解は\(x=1\)または\(x=-1\)です。
方程式のときは等式を成り立たせるある限定された数\(x\)たちのことを考え、恒等式のときはすべての数\(x\)について成り立つ等式を考えている、という違いがあります。
方程式とは何かという説明で、「式の中にある値を代入すると成り立つ等式を方程式という」という書き方を見かけますが、これは微妙です。
方程式には、いつでも解があるとは限りません。先ほど考えた方程式\(0x =1\)がそうです。また2つの方程式を合わせた\(2x=1,3x=1\)にも解が存在しません。
確かに、学校の数学や簡単な問題では、解が存在する方程式だけを扱うことが多いでしょう。だからといって、「どんな数を代入しても成り立たない等式」を方程式の定義から排除してしまうと、いわゆる「解なし」の意味がわからなくなってしまうでしょう。
以上、方程式の解とは何かを簡単に述べ、その後、等式、変数、方程式、恒等式といった用語を詳しく解説しました。
中学の数学では、記号や用語が登場して、混乱しがちです。今回述べたような、用語が何を意味しているか(定義)を確認して、自分の言葉として数学を扱えるようになってみてください。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
日本評論社 (2008-12-10T00:00:00.000Z)
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