集合の要素、部分集合、等しいことの証明の書き方

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、集合に関する証明、要素、部分集合、等しいことの証明の書き方を紹介します。

 

要素であることの証明

集合に関する証明の基本は、与えられた要素がある集合に属しているか属していないかを判定することです。

 

\(E=\{x \mid x は偶数\}\)という集合を考えましょう。これは偶数の集合です。

\(14,21,2021,212\)といった整数は\(E\)に属するか、属さないか判定してみます。ここで整数が偶数であることの定義を思い出すと、ある整数\(k\)により\(x=2k\)と表せることでした。

\(14 = 2\cdot 7\)、\(212 =2\cdot 106\)なので、\(14\)と\(212\)は偶数です。よって、\(14 \in E\)であり、\(212 \in E\)です。

一方で、\(21= 2\cdot 10 +1\)、\(2021 = 2\cdot 1010+1 \)です。つまり、あらゆる整数\(k\)に対して、\(21 \neq 2k\)、\(2021 \neq 2k\)となります(あまりの一意性:除法の原理)。「ある」の否定は「すべての」なので、ある整数\(k\)により\(x=2k\)と表せないことがわかりました。よって、\(21 \not \in E\)、\(2021 \not \in E\)です。

 

今回くらいの簡単な例ならば、単に「\(14\)は偶数なので、\(21\)は奇数なので~」といって結論づけても納得してもらえるかもしれません。しかし証明を求められる場では、簡単なことでも説明したほうが良いでしょう。

一般に、\(x\)に関する条件を\(P(x)\)として、\(X= \{x \mid P(x)\}\)という集合を考えます。さきほどの例では、「\(P(x)\)=\(x\)は偶数」でした。\(a\)が\(X\)に属していること\(a \in X\)を証明するには、\(P(a)\)が正しいことを示せば良いです。逆に、属していないこと\(a\not \in X\)を証明するには、\(P(a)\)が成り立たないことを示しましょう。

集合の書き方はいくつかあるので、どんな条件なのか正確に読み取ることは大事です。例えば偶数の集合は、\(E=\{x \in \mathbb{Z} \mid k \in \mathbb{Z},x=2k\}\)や\(E =\{2k \mid k \in \mathbb{Z}\}\)と表されることもあります。\(\mathbb{Z}\)は整数の集合です。どちらも同じく、「\(x\)は整数であり、\(x=2k\)を満たす整数\(k\)が存在する」という意味の省略であることに気をつけましょう。

僕としては、\(E =\{2k \mid k \in \mathbb{Z}\}\)のような記法(置換型記法)は、いつでもスタンダードな形\(\{x \mid P(x)\}\)(内包的表記)に直して集合を考えるのが、集合論を学び始めのうちは良いのでは、と思っています。スタンダードでない書き方も便利なので数学ではよく使われますが、内包的記法の亜種であることを知っていると意味が取りやすいです(僕は学びはじめの頃、しばらくこの辺の記法がよくわからず、疑問を抱いていました)。

 

部分集合であることの証明

では、部分集合の話に進みましょう。

\(A,B\)を集合として、\(A\)が\(B\)の部分集合(subset)である\(A\subset B\)とは、「すべての\(x\)について、\(x\in A\)ならば\(x \in B\)である」ことと定義します。

\(A\)の要素は必ず\(B\)の要素でもある、ということですね。よくベン図で包含関係は説明されますが、ベン図はあくまでイメージであり、証明には使えないことに気をつけましょう。\(A\)全体が含まれているイメージは、「任意に選んだ\(A\)の要素が絶対に\(B\)に属している」こととして定義されたわけです。証明をするときには、論理・定義にのっとって考えましょう

 

\(M_4 = \{4k \mid k \in \mathbb{Z}\}\)とします。\(E\)と\(M_4\)にはどんな関係があるでしょうか。

\(M_4\)は\(E\)の部分集合であること\(M_4 \subset E\)を証明しましょう。

まず、\(x \in M_4\)と仮定します。すると\(M_4\)の定義より、\(x=4k\)となる整数\(k\)が存在します。\(4k= 2\cdot 2k\)なので、\(x\)は偶数です。よって、\(x\in E\)であり、\(M_4 \subset E\)が示せました。

 

逆のケースを考えると、\(E\)は\(M_4\)の部分集合ではありません\(E \not \subset M_4\)。

\(A\)が\(B\)の部分集合でないとは、「すべての」の否定は「存在する」であったことを思い出せば、ある\(x\)で「\(x \in A\)ならば\(x\in B\)」を満たさないものが存在することです。ならばの否定の意味を思い出すと、\(x \in A\)ではあるが\(x\not \in B\)である\(x\)が存在すること、と言い換えられます。

これを確かめましょう。感覚的には、2の倍数であるが4の倍数でないものを探せば良いわけです。\(a =2\)とします。\(2 =2\cdot 1\)なので、\(a \in E\)です。一方で、\(2 =4\cdot(-1) +2\)なので、どんな整数\(k\)に対しても\(2\neq 4k\)です(除法の原理)。よって、\(a \not \in M_4\)です。以上により、\(E \not \subset M_4\)がわかりました。

 

\(A\)が\(B\)の部分集合であり、\(B\)が\(A\)の部分集合でないとき、\(A\)は\(B\)の真部分集合(proper subset)であるといい、\(A \subsetneqq B\)と書きます。

さきほどの議論は、\(M_4\)が\(E\)の真部分集合であること\(M_4 \subsetneqq E\)を示したわけです。

 

集合が等しいことの証明

要素や部分集合の定義がわかると、2つの集合が等しいことの定義もできるようになります。

\(A\)と\(B\)が(集合として)等しい\(A=B\)とは、\(A\subset B\)かつ\(B\subset A\)が成り立つことです。\(A\)と\(B\)は相等(equivalence)であるとも言います。

イコールの記号\(=\)を用いていますが、表していることは互いが互いの部分集合であることです。数の計算のようにイコールが示せるとは考えるよりは、\(A\subset B\)と\(B\subset A\)を両方示せば良い、と考えるのが基本方針となります。(これは数について\(a\leq b\)と\(a \geq b\)の両方の不等号を示すことで、\(a=b\)を導く論証と似ていますね)

 

\(O_{+}=\{2k+1 \mid k \in \mathbb{Z}\}\)、\(O_{-}=\{2k-1 \mid k \in \mathbb{Z}\}\)とします。これらの集合はどんな関係にあるでしょうか。

ありがちな誤解をまず紹介します。「\(O_{+}\)の要素は\(2k+1\)、\(O_{-}\)の要素は\(2k-1\)と表されて、\(2k+1 \neq 2k-1\)が成り立つ。よって\(O_{+} \neq O_{-}\)である。」これは間違いです。どちらも「ある整数\(k\)によって~と表される」と言っており、それが同一の整数\(k\)であるとは言っていないのです。

では、\(O_{+}=O_{-}\)であることを示しましょう。

まず、\(O_{+}\subset O_{-}\)を示します。\(x\in O_{+}\)と仮定します。定義より、\(x=2k+1\)となる整数\(k\)が存在します。\(\ell =k+1\)と置くと、\(\ell\)は整数であり、\(x= 2k+2-1=2\ell -1\)と表わせる。よって、\(x \in O_{-}\)がわかりました。

逆に、\(O_{-}\subset O_{+}\)を示します。\(y \in O_{-}\)と仮定します。定義より、\(y= 2m-1\)となる整数\(m\)が存在する。\(n= m-1\)と置くと、\(n\)は整数であり、\(y=2m-2+1=2n+1\)が成り立ちます。よって、\(y \in O_{+}\)がわかりました。

以上によって、集合が等しいことの定義から、\(O_{+}=O_{-}\)が成り立つことが示せました。

一般に表された要素が一見して別物\(2k+1\)、\(2k-1\)であっても、集合としては等しいことがあるわけです。見かけや変数に惑わされず、集合の要素が満たしている論理的な条件は何か、段階を踏んで考えましょう。

 

部分集合や集合が等しいことは、論理と対応したものになっています。

条件\(A(x)\)、\(B(x)\)により集合が\(A=\{x \mid A(x)\}\)、\(B= \{x \mid B(x)\}\)と表されているとしましょう。

\(A \subset B\)は、「(すべての\(x\)について)\(A(x)\)ならば\(B(x)\)であることを意味しています。\(A =B\)は、\(A\)ならば\(B\)かつ\(B\)ならば\(A\)、\(A\)と\(B\)は論理的に同値である(必要十分条件である)ことを意味したものです。

大学数学は集合論を基本的な言語として駆使しますが、その言語には論理的な関係が組み込まれています。基本的な論理と集合をマスターすることは、大学数学を精密に学ぶための第一歩と言えるでしょう。

 

以上、集合の要素、部分集合、等しいことに関する証明を紹介してきました。

集合の証明に関する議論は、集合の記法の意味を知っていることと、基本的な論理を身に着けていることが大事です。集合に関する証明は、線形代数をはじめとして、広く大学数学に使われるので、ぜひマスターしてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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