どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「数理物理学の風景」を軽く読んだので、紹介します。
どんな本か
「数理物理学の風景」は、数理物理学の世界の雰囲気を伝えようとする本です。
まえがきでは、これは専門書でも教科書でもなく、一般向けに書いたとされています。理工系の大学生・大学院生、また数学や物理のファン向けであると。
僕は大学(学部・修士)で数学を学んでいましたが、一般向けとしてはかなり難しいと感じました(笑)。数学に関する内容は大丈夫なのですが、物理、例えば量子力学の話はほぼ全くついていけませんでした。物理の学部か、数学の学部、どちらかの素養は最低限必要でしょう。そのうえで、どちらも身につけた先に何があるか、その雰囲気を感じられる本だと思います。
目次
数理物理とはなにか
予備知識が少なく、読み物として楽しめたのは6章「数理物理学」です。
数理物理学(mathematical physics)とはなんでしょうか。人によってさまざまな定義があるようです。
まず、物理数学とは違います。そちらは、物理の勉強で使う数学を、学部レベルで紹介したものと言えるでしょう。こちらのイメージで本を手にとったのですが、まるでレベルが違いました。
だが、物理学の理論あるいは理論物理学にあっては、物理現象と直接に関わる数学的部分にのみ興味が集中する傾向があり、物理現象を支配する数理の根源的・普遍的構造を探求する観点が欠落しがちである。この点を補い、むしろ、そこに積極的な意味・意義を見いだそうとするのが数理物理学である。すなわち、数理物理学の目的は、物理学的思考に加えて、数学的思考を駆使することによって、通常の物理学の方法では明らかにされない、あるいは隠されたままにとどまる、物理現象の普遍的な数学的構造や理念、すなわち、世界のより深い層で物理現象を支え、その根底を築く数学的イデアを探求することにある。
引用:数理物理学の風景 p.114-115
僕なりにかついまむと、数理物理学は、まず物理学です。物理現象を探求しようとします。しかし物理現象の探求にあたって、数学的な思考を活用することで、その物理現象を支える根本的な仕組みや原理を明らかにしようとする学問、それが数理物理学ということでしょう。
まあそう言われても具体的ではなくピンと来なかったのですが、例としてニュートン力学に対する解析力学が挙げられていました。
ニュートンの運動方程式は、何らかの座標系(例えば直交座標)を使って表示されるものですが、運動という現象そのものは座標系によりません。運動方程式を導く座標系によらない原理は何か……それはラグランジュが発見したラグランジュ方程式、そして変分原理に帰着されます。ある汎関数の変分がゼロ(\(\delta S(q)=0\))となるような一般化座標を使った関数\(q\)は、ラグランジュ方程式を満たすと。変分原理は、力学にとどまらず、光学や電磁力学、量子力学に活用されるようです。
数理物理学をきちんと学ぶためには、以下の内容を事前に学んでおいたほうが良いと提示されていました。
現代数理物理学の道に入るためには, まず, 準備として, 物理学の基礎科目 (古典力学,熱力学,古典電磁気学,波動論,相対性理論,量子力学,古典統計力 学,量子統計力学,物性物理,原子核物理,素粒子論など) と数学の基礎科目(微 分積分学,線形代数学,集合と位相,古典解析学(古典的ベクトル解析を含む), 複素解析学,常微分方程式論,偏微分方程式論, ルベーグ積分論,関数解析学な ど) を少なくとも入門的レベルで習得し, 同時に, 古典的な物理数学(たとえば, [55, 128, 129, 165]) にも取り組んでおくのが望ましい.
引用:数理物理学の風景 (p.121)
僕としては、物理学は古典力学、熱力学、古典電磁気学、波動論……にほんのちょっと触れただけです。この本を読むには、物理の知識が足りないなと思い知らされました。ただ、こんな分野もあるのだなとガイドブック的には使えると思います。
僕は「数理物理学の風景」を、Kindleの読み放題サービスKindle Unlimitedで読みました。登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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